NTTのIOWN構想とは? 特徴と利点、技術開発ロードマップを解説「IOWNの取り組みと進捗に関する説明会」を報道陣向けに開催

日本電信電話(NTT)は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「ポスト 5G 情報通信システム基盤強化研究開発事業」の実施企業に採択されたことを発表した。
これにより、NTTは同社が推進する最先端の光技術「IOWN」の開発研究を加速し、共同提案者や「IOWN Global Forum」参加のパートナーとともに、IOWNの事業化に取り組んでいく考えだ。この発表に伴い、報道関係者向けにIOWN構想のロードマップをおさらいする説明会を開催した。


なお、NTTは従前より国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の「Beyond5G 研究開発促進事業」と「革新的情報通信技術(Beyond 5G / 6G)基金事業」にも参画しており、今回の採択によって、ネットワークと先端半導体双方の研究開発プログラムに採択されたことになる。その背景もあって、今回の説明会ではIOWNのコンピュータ構想とネットワーク構想の両面で詳しい解説が行われた。

NTT IOWN推進室長 荒金陽助氏


IOWN開発構想と基金事業

登壇したNTTの荒金室長は、革新的なIWON(アイオン)技術によりこれまでのインフラの限界を超え、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、多様性を受容できる豊かな社会を創るため、光を中心とした革新的技術を活用した高速大容量通信、膨大な計算リソース等を提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤である IOWN (Innovative Optical and Wireless Network)構想を打ち出し、その実現に向けて「オール光ネットワーク」(通信)と「光電融合デバイス」(ハードウェア)に関する研究開発に取り組むことが説明された。





IOWNの利点、そもそもIOWNとは何か?

IOWNは従来より高速で低遅延、低消費電力をうたう、NTTが推進している光通信技術。
利点は「電力効率100倍」を目指す「低消費電力」で、光ファイバケーブル、光(波長)スルー、光電融合素子等が要素技術として使われる。また、「大容量・高品質」では波長(光信号)のいわゆる多重化技術などを用いて、ファイバーあたり1000Tbpsの速度の「伝送容量125倍」を目指している。3つめの「低遅延」は波長単位で伝送し、待ち合わせ処理をなくし、データの圧縮をもちいずにそのまま伝送する方式を想定していて、それによって「エンドエンド遅延1/200倍」を目指している。




光電融合デバイスのロードマップ

IOWN構想を達成する段階的な「光電融合デバイス」(ハードウェア構想)のロードマップも公開した。下図の最も左、既に実装されているデータセンター間で使用されているトランシーバーを端に発し、光電融合デバイスを更に小型化/低消費電力化して、2025年度以降にボードに実装、2028年度以降にチップ側近に実装(チップレット)、2032年度以降にはチップ内に光を実装という構想を掲げている。すなわち、光がデバイス間通信の全般でカバーすることが目標となる。


荒金室長はコンピュータではCPUの側や中に光を持ち込むことで「これまでCPUが中心のCPUセントリックだったアーキテクチュアをデータ中心のアーキテクチュアに変えていくことがひとつのチャレンジです」と語った。

更に「現在、性能やスペックを向上したい、パフォーマンスを上げたいといった時にはサーバーを並列化して案が一般的に挙げられると思います(下の左図)。


一方で現時点で、例えば AI の学習や推論のパフォーマンスを向上するにはより高性能なGPUが活用されたり、メモリを増強/高速化したりが行われています。下図の右ように、CPUからだけではなく、各性能を光のインタフェースで接続することで、ハイパフォーマンスかつ電力効率の高いアーキテクチュアとそのインフラを実現していきたい」と続けた。



光で端から端まで繋ぐネットワーク

もうひとつは通信「IOWNオールフォトニクスネットワーク(APN)」。APNは既に2023年3月よりNTTはサービスを開始している。APNの特徴は、従来のネットワークが乗り換え(パケットのスイッチング)の繰り返しによって通信が実現していたが、APNでは端から端までの光通信を「直通」にすることで拠点間接続を高速化/低遅延化するもの。荒金室長は「従来は国道と一般道や乗り物を乗り継いで目的に運ばれていたイメージだが、APNは高速道路で目的地まで乗換なしに一本で行くイメージ」と表現した。



NTTが受託した事業

今回、NTTが受託したのはNEDOの「ポスト5G情報通信システム 基盤強化研究開発事業」となる。従来からのNICTの「Beyond 5G研究開発 促進事業(一般型)」と「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業」となる。

これによって、前述したように「IOWN Computer」(コンピュータ)と「IOWN オールフォトニクスネットワーク(APN)」(ネットワーク)の双方でIOWM構想の研究開発が加速できることとなる。




コンピュータと通信の両方でIOWN構想の開発を加速

具体的には「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」(コンピュータ)と「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業」(APN:通信)の双方で、課題をクリアしながら発展させていく。詳細は下記の図をそれぞれ参照して頂きたい。とても重要な項目が並んでいる。




IOWN Global Forumメンバー

なお、冒頭で前述した「IOWN Global Forumメンバー」は、現状ではの下記の通り138となっている。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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