ニュース IOWN オールフォトニクス・ネットワークティーチング遠隔操作サービスロボットロボット NTT東日本三菱電機株式会社

三菱電機とNTT東日本がIOWNの光専用超高速通信で産業用ロボットの遠隔研修の実現性を実証　低遅延性・ゆらぎゼロを活かす

2024年1月25日 By ロボスタ編集部

三菱電機とNTT東日本は、IOWNにおけるオール・フォトニクス・ネットワーク（通信ネットワークの全区間で光波長を専有する通信サービス：「APN」）を活用したユースケース創出に向けて、三菱電機の産業用ロボットとAPNプロトタイプ機を接続することで、産業用ロボットの遠隔研修の実現に向けた共同実証を行った。

APNの特徴である「低遅延性」「ゆらぎゼロ」を活かすことで、物理的に離れた環境を１つの環境のように統合することに加え、IOWN APN関連技術である「低遅延映像処理技術」を活用し、通常の対面研修と同様の操作性を実現。2024年1月24日より、本検証環境をNTT東日本が東京都調布市のNTTe-City Laboに開設した「IOWN Lab」で公開した。

ロボット技師の遠隔研修を実現する検証を実施

製造業界においては、新型コロナウイルス感染症拡大を契機とした製造現場のデジタル化やリモート化の拡大、少子高齢化にともなう労働力不足などの影響を受けて、ロボットエンジニアの需要が高まっている。

また、産業用ロボットについては、工場のライン立ち上げの際に研修を受講したロボットエンジニアによるティーチング(自動運転を学習させる設定)が必要となる。この研修は主に各ロボットメーカが運営しており、研修施設で実機を見ながら行うことが一般的となっているものの、産業用ロボットや講師が備わった研修施設を全国に設置することは人員確保の理由から難しく、研修施設が限られていることにより各会場への移動時間を要する、研修の予約が取りづらい等、受講者の負担につながっているという課題がある。
これらの課題に対して、三菱電機とNTT東日本は、APNの「低遅延・ゆらぎゼロ」の特徴と「低遅延映像処理技術」を活かし、課題解決の手段として遠隔研修の実現に向けた検証を実施した。

カメラから伝送される映像を入力順に分割配置して低遅延で表示

今回の実証では、ロボット制御用パソコンを設置した東京都調布市にあるNTTe-City Labo内の「IOWN Lab」とロボットアームやロボットコントローラー等を設置した東京都新宿区にあるNTT東日本初台本社ビルの拠点間を、1波長あたり100Gbpsの大容量かつネットワーク遅延の時間変動がない、遅延ゆらぎゼロの特徴を持つAPNで接続し、オフライン環境と変わらない操作性で産業用ロボットを遠隔でティーチングする実証を行った。

ティーチングポイントの正確な位置関係の把握には、複数視点での確認が必須であることから、ロボットアームが設置されているNTT東日本初台本社ビルにカメラを複数台設置して、IOWN Labに設置した１つのモニター画面にカメラから伝送される映像を入力順に分割配置し、低遅延で表示させる技術（低遅延映像処理技術）を活用した。

本実証では、離れた場所での操作においても、ロボットを立体的にとらえることができ、円滑なロボット操作を実現した。/br>

産業用ロボット遠隔操作実証の構成

左：ロボットアームとカメラ　/ 右：ロボット制御用パソコンと遠隔操作用モニタ

今後の展開

従来の通信技術では通信遅延によりロボットの操作にズレが生じるため遠隔研修として成立しませんでしたが、低遅延性が特徴のAPNを活用することで、オフライン（直接操作）と変わらない操作性を実現した。

NTT東日本と三菱電機は、本実証で得られた知見を活かし、産業用ロボットの遠隔研修に向けた他の課題抽出を進めるとしており、将来的には遠隔研修以外の活用例として「ティーチングトレーニングの遠隔ジム」等、ロボットエンジニア初心者がティーチングスキルを磨く場を提供する新たなビジネスモデルの検討を進める。

これらの取り組みにより、事業拡大と共にロボットエンジニアを目指す人々をサポートし、少子高齢化、人手不足等、日本の課題解決に貢献していくとしている。