東日本電信電話株式会社(NTT東日本)は、第78回日本消化器外科学会総会で、2023年7月13日(木)に実施予定の遠隔手術社会実証試験に参画し、遠隔手術支援を支える通信インフラの検証を行うことを発表した。
一般通信回線を用いて、東京と函館、約740km離れた場所で、メディカロイド製の手術支援ロボットで胃切除術の遠隔手術を行う。
「医療資源の地域格差」解消に遠隔診療や遠隔手術に期待
少子高齢化や医療資源の地域格差などの医療における様々な課題が顕在化しているが、その解決策にICTの活用が期待されている。医療資源の地域格差においてICT技術の活用が期待されているのはやはり遠隔診療、遠隔治療だ。
厚生労働省は2018年に「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を発出し、2019年の同指針の改定においては「遠隔手術支援(遠隔地の指導医が現地の術者に代わって部分的に手術操作を行う)」ことをオンライン診療に含めることが明記され、遠隔からの手術の可能性が開かれた。
また、日本外科学会において2022年6月22日「遠隔手術ガイドライン」が策定され、現在はその社会実装に向け、日本外科学会が他の関連学会と連携して、準備と実証研究を進めている。
遠隔手術支援とは?
遠隔手術支援が実現すれば、例えば、地方病院の手術支援ロボットと看護士によって、都心から医師がロボットを遠隔操作をすることで、患者はロボット支援手術などの先端的手術を、日本のあらゆる地域で受けることができる可能性が出てくる。
地域に住む患者は長距離移動に伴う体力的・経済的な負担を回避して、地元の病院で先端的な手術を受ける選択肢が生まれ、治療の選択肢が増え、負荷軽減も期待できるとかんがえられる。
同時に、最新技術の修練が可能な環境が整うことから、地域における若手外科医の育成法として有用であり、医師偏在の改善にも効果も期待されいいる。
遠隔手術に必要なレスポンスは低遅延と安定通信がポイント
このような背景の中、NTT東日本は、ロボットによる遠隔手術の社会実装化に向け、日本外科学会が推進する遠隔手術実証に「通信キャリア」として参画して実証にあたっての支援をしてきた。
この度、第78回日本消化器外科学会総会で実施予定の遠隔手術社会実証試験に参画し、東京-函館間(約740km)の遠距離ロボット胃切除術を高速な通信ネットワークで支え、その効果を検証する。
遠隔手術社会実証試験の概要
実施日2023年7月13日(木) 12:00~12:40
実施場所
遠隔拠点:函館アリーナ(北海道函館市)
手術拠点:MIL※3 東京(東京都新宿区)
※3 Medicaroid Intelligence Laboratory
実施内容
メディカロイド社の日本製手術支援ロボットhinotori™ サージカルロボットシステム(※4)を用い、函館アリーナに設置したサージョンコックピットとMIL東京へ設置したオペレーションユニットをNTT東日本が提供するギャランティ回線で接続し、遠隔での操作環境を構築。
函館アリーナの術者がサージョンコックピットを操作することで、MIL東京に設置されたオペレーションユニットの遠隔操作を行い、人工臓器モデルを用いた胃切除を実施。遠距離(約740km)におけるネットワーク遅延やパケットロス等について測定。
※4 メディカロイド製の手術支援ロボットで、2020 年 8 月に国産の内視鏡手術を支援するロボットとして製造販売承認を取得(承認番号:30200BZX00256000)。同年 12 月に 泌尿器科領域で 1 例目 の手術を実施。2022年10月には消化器外科および婦人科への適応について承認を取得。 日本全国で1900症例以上の手術を実施している(2023年7月12日時点)。
今後の展望
遠隔医療の社会実装には、低遅延・高セキュリティかつ汎用性のある通信ネットワークが不可欠。「地域の未来を支えるソーシャルイノベーション企業」としてNTT東日本は、地域住民が地域にいながら高度な医療を受けられ、安心して暮らしていける社会の実現に向け、これからも関係各位と連携し、遠隔医療の早期社会実装に向けて取り組んでいく考えだ。
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