NTT東日本や群大病院ら ロボット×AI×ローカル5Gを活用して「医療インシデント削減」「次世代薬剤トレーサビリティ」実証実験

国立大学法人群馬大学、東日本電信電話株式会社(NTT東日本)、株式会社ユヤマ、ウルシステムズ株式会社、PHC株式会社は、群馬大学医学部附属病院にローカル5G環境を構築し、AI・薬剤自動認識装置を搭載した自律走行型ロボットによる、患者持参薬の確認および処方薬の配薬・服薬確認の実証実験を2023年1月30日から2023年3月17日におこない、報道関係者向けに説明会を実施した。

画像認識AI搭載ロボット「Temi」。軽量物搬送ができることに加え、病室に入れるサイズを勘案して、このロボットを採用した。

左:群馬大学医学部附属病院 システム統合センタ 副センター長 鳥飼幸太氏、右:NTT
東日本 ビジネスイノベーション本部 山本桂氏

インシデント全体の約4割にあたる「薬剤に関連する医療インシデント」を抑止するためにローカル5G×ロボット×AIを活用する。また、次世代薬剤トレーサビリティおよび医療従事者の働き方改革の実現をめざす

AIと連携した自律移動ロボット「Temi」が病棟を回り、服薬関連のチェックを行い、医療事故の抑止をおこなう。通信にはローカル5Gを活用する
目的
医療インシデント、特に薬剤に関連する医療インシデントを減らし、医療事故のリスクを低減
医療従事者の労働支援を通じた時間創出・働き方改革を実現
院内外の連携による地域における安心安全な先進的薬剤トレーサビリティを実現


医療事故の抑止にローカル5G×ロボット×AIを活用

ローカル5G環境下で、薬剤を識別するAIを搭載したロボットを病院内で走らせ、医療分野の課題解決をめざす。医療インシデント全体の約4割に「薬剤に関連する医療インシデント」が占めているとして、この課題解決にまずは取り組む。

群馬大学医学部 附属病院をフィールドとして、医療インシデントの原因となっている、薬剤の種類の増加に対応する「AI技術を用いた薬剤鑑別」のしくみや、医療従事者が行っていた業務の「ロボット」への代替により、医療インシデントの低減や看護師・薬剤師などの稼働を削減する実証実験を行なった。


病院にローカル 5G 環境を構築し、 AI ・薬剤自動認識装置を搭載した自律走行型ロボットによる、患者持参薬の確認 及び 処方薬の配薬・服薬確認 の実証を実施。
院内外の次世代薬剤トレーサビリティを通じ、 医療従事者の業務効率化 及び 安心安全な医療サービスの提供の実現を実証した。



過去の医療実証では「医師」から「患者」への遠隔医療により業務効率化をめざしたが、この実証では「ロボット」を介した「患者」への医療支援を目標とする医療分野では類を見ない先進的な取り組みとなっている。


■持参薬確認フロー(持参薬確認場所で、薬剤師が操作する例

持参薬確認フロー(持参薬確認場所で、薬剤師が操作する例)

■服薬後確認 飲み殻確認(病室で、患者が操作) 患者管理の薬剤が対象の例

服薬後確認 飲み殻確認(病室で、患者が操作) 患者管理の薬剤が対象の例




このシステムと実証実験の特長


最新ローカル5G技術である分散アンテナ技術を採用

人や特殊機器が多数行き交い、遮蔽物が多く、電波干渉の可能性が高い医療現場の環境に対応するため、最新のローカル5G技術である分散アンテナ技術を採用。カバレッジの広域化と干渉影響の低減が可能となる無線ネットワーク下で、医療機関内における効率的・効果的な課題解決を実証。

ローカル5Gの機器を説明する様子


複数台カメラによる撮影画像を、AIを用いてリアルタイム解析

ローカル5Gにより、ロボットの安定制御・走行やさまざまな種類の薬剤鑑別をおこなうために、上下2つのカメラから照明角度、露光時間を変えた複数枚の撮影画像をリアルタイムに解析サーバへ伝送し、AIで解析すると取り組みを行なった。

画像認識をおこなうAI搭載ロボット


地域の薬局と連携した薬剤トレーサビリティスキームの確立

退院後にも、病院とかかりつけ薬局の情報連携や、薬局における患者情報(既往歴やアレルギー歴)の参照、服薬確認といった、地域における一気通貫の薬剤トレーサビリティのしくみを構築。病院のDX化だけではなく、地域の関連施設間の情報連携により、住民が安心安全に地域に暮らせる地域包括ケアをめざす。

■薬剤情報聞き取りにおける労務負担の軽減


■トレーシングレポートによる労務負担の軽減





各者の役割

群馬大学
実証環境の提供、課題実証の統括・推進

NTT東日本
プロジェクト全体の統括・推進、ローカル5G/システム環境構築、技術実証の推進、ローカル5G免許申請

ユヤマ
薬剤識別システムの提供

ウルシステムズ
AI/画像認識ソリューションの開発・提供

PHC
薬局向け院内カルテ参照・トレーシングレポート送信システムの提供、病院・院外薬局との情報連携

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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