NTT東日本や群馬大学らが協業「ローカル5G×ロボット×AI」で薬剤に関連する医療インシデント削減の実証実験を開始

昨今、少子高齢化や新型コロナウイルスの流行により、医師や看護師など医療現場における人手不足が深刻化している。また、医療の高度化と複雑化に伴い、診療行為の確認漏れや情報伝達不足などによる医療インシデントのリスクも増大しており、特に、薬剤に関連する医療インシデントは、医療インシデント全体の約4割を占め、最大のリスク要因と考えられている。

薬剤関連業務をはじめとした、医療分野における業務のICT化やDX推進が急務となっていることから、これらの課題解決のため、国立大学法人群馬大学、東日本電信電話株式会社(NTT東日本)、株式会社ユヤマ、ウルシステムズ株式会社、PHC株式会社は、群馬大学医学部附属病院にローカル5G環境を構築し、AI・薬剤自動認識装置を搭載した自立走行型ロボットによる、患者持参薬の確認および処方薬の配薬・服薬確認の実証実験を2023年1月30日から開始する。

なお、同実証実験は、総務省の「課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」の開発実証事業として採択されたものである。

※総務省「課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証等に係る令和4年度事業の提案の公募結果(開発実証事業)」採択案件名「ローカル5Gを活用した院内外の次世代薬剤トレーサビリティ及び医療従事者の業務改善の実現」





同実証実験の概要

同実験は、群馬大学医学部附属病院をフィールドとして、医療インシデントの原因となっている、薬剤の種類の増加に対応する「AI技術を用いた薬剤鑑別」の仕組みや、医療従事者が行っていた業務の「ロボット」への代替により、医療インシデントの低減や看護師・薬剤師などの稼働削減をめざすものだ。過去の医療実証では「医師」から「患者」への遠隔医療により業務効率化をめざしたが、同実証では「ロボット」を介した「患者」への医療支援を目標とする医療分野では類を見ない先進的な取り組みとなっている。

【実証のイメージ図】
実証期間 2023年1月30日~2023年3月17日
目的 ・医療インシデント、特に薬剤に関連する医療インシデントを減らし、医療事故のリスクを低減
・医療従事者の労働支援を通じた時間創出・働き方改革を実現
・院内外の連携による地域における安心安全な先進的薬剤トレーサビリティを実現



▼各者の役割

群馬大学 実証環境の提供、課題実証の統括・推進
NTT東日本 プロジェクト全体の統括・推進、ローカル5G/システム環境構築、技術実証の推進、ローカル5G免許申請
ユヤマ 薬剤識別システムの提供
ウルシステムズ AI/画像認識ソリューションの開発・提供
PHC 薬局向け院内カルテ参照・トレーシングレポート送信システムの提供、病院・院外薬局との情報連携




同実証実験の特長

同実験の主な特長は以下の3つとなる。


最新ローカル5G技術である分散アンテナ技術を採用

人や特殊機器が多数行き交い、遮蔽物が多く、電波干渉の可能性が高い医療現場の環境に対応するため、最新のローカル5G技術である分散アンテナ技術を採用。カバレッジの広域化と干渉影響の低減が可能となる無線ネットワーク下で、医療機関内における効率的・効果的な課題解決を実証する。


複数台カメラによる撮影画像を、AIを用いてリアルタイム解析

ローカル5Gにより、ロボットの安定制御・走行やさまざまな種類の薬剤鑑別をおこなうために、上下2つのカメラから照明角度、露光時間を変えた複数枚の撮影画像をリアルタイムに解析サーバへ伝送し、AIで解析すると取り組みを行う。


地域の薬局と連携した薬剤トレーサビリティスキームの確立

退院後にも、病院とかかりつけ薬局の情報連携や、薬局における患者情報(既往歴やアレルギー歴)の参照、服薬確認といった、地域における一気通貫の薬剤トレーサビリティの仕組みを構築。病院のDX化だけではなく、地域の関連施設間の情報連携により、住民が安心安全に地域に暮らせる地域包括ケアをめざす。



今後の展望

関係各者は、今後の展望として、院内外の次世代薬剤トレーサビリティを構築し、同様の課題を抱える大学病院や地域中核病院に活用してもらうことで、医療業界全体の業務効率化および安心安全な医療サービスの実現をめざすと述べている。

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ロボスタ編集部

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