アクセンチュア株式会社は新執行体制を発表し、生成AIビジネス含めた今後の注力領域に関する記者説明会を開催した。説明会の冒頭、同社の江川社長が登壇して、今後は更に「生成AI」に軸足を置くこと、社員に寄り添う「AIエージェント」(AIバディ)を開発し、既に同社ではほぼ社員全員が「AIエージェント」を活用していることを発表した。
同社は「生成AIはこれまでの技術に比べて、普及のスピード感がまったく異なり、今後も加速度的に普及していく」と強調。ビジネス環境が大きな変革期を迎えていることを肌で感じてのことだろう。
代表取締役副社長に立花良範氏と土居高廣氏が就任
新執行体制として、代表取締役副社長に立花良範氏と土居高廣氏が就任した。
AI導入と普及を急速に推進(立花氏)
立花氏は、同社でAIを含むデジタル関連サービスを立ち上げ、直近ではアクセンチュアジャパンのCOOを務めてきた。クライアントに提供するあらゆるサービスにAIが適切に組み込まれているかを監督しつつ、アクセンチュアでの業務全般でもAI導入を加速させる立場を担う。
クライアントへのIT導入を統括(土居氏)
土居氏は、アクセンチュアジャパンのテクノロジーの責任者を務めてきた。あらゆるサービスで生成AIをはじめとするテクノロジー導入を前提としてクライアントへのIT導入を統括していく。さらにIT業界全体の地位向上、IT人材がさらに輝ける環境づくりを加速するとしている。
アクセンチュア社内でAIエージェントの導入
同社社内では既に、ほぼ全員にAIエージェントの導入が始まっている。社員の活用状況は3段階に分けられる、としている。
1.業務に取り入れる:ほぼ全員
2.生成AIを使って新たな業務を生み出す:目下トレーニング中。徐々に成果を出す社員が出ている。
3.自ら生成AIを作る:一部(1~2割程度)に留まる。
アクセンチュアが目指す、社員ひとりひとりに「AIエージェント」がつき、適切なアドバイスや発想を提供するだけでなく、「AIエージェント」が社員の代わりとなって高精度のレベルで意見を交わし合うことで最適解を検討していく、といった次世代のビジネス環境が既に始まっていることを示唆している。
アクセンチュアのビジネスも大きく変化
江川社長は「私が社長に就任した頃、10年ぐらい前は、ビジネスコンサルティング分野では「経営戦略を練りたいから支援して欲しい」とか、テクノロジー分野では「ERP(Enterprise Resource Planning)を導入したい」といった相談が多かったのですが、5年ぐらい前からクライアントからのリクエストの内容が大きく変わってきました。「とにかく全社で一気呵成に改革したい」「改革にかかる時間をなるべく短くしたい」という声が高まっています。従来はビジネスコンサルティング、テクノロジーの開発・運用、オペレーションまで3年~5年程度かかるプロジェクトを、2年で完了したい、という希望が多くなっています」と語った。
また、「私達は全社で一気呵成で行う変革をトータル・エンタープライズ・インベンションと呼んでいますが、その中心に「生成AI」が活用されるようになっていて、生成AIがもたらすデジタルツイン・エンタープライズがポイントになっています」と続けた。
生成AIがもたらすデジタルツイン・エンタープライズとは
更に江川社長は生成AIエージェントによって、ビジネス環境が大きく変わる「エンタープライズ・デジタルツイン」について言及した。
「クライアント企業様もAIエージェントをそれぞれ持ち、営業のAIエージェントはお客様の企業のAIエージェントと交渉して、今月の発注数や金額をある程度決めます。おそらく人間が交渉して決めるのと、ほぼ同じレベルで決めることができます。それが決まったら、営業のAIエージェントは次に生産管理のAIエージェントに交渉内容を受け渡し、生産管理のAIエージェントがそれを元にどこの工場でいつまでにいくつ生産すればいいのかを検討します。生産計画が決まれば、購買のAIエージェントに受け渡され、購買のAIエージェントは社外のサプライヤーと交渉して部材の発注と入荷について検討し、営業から生産、部材の発注管理まで、AIエージェントやロボットだけで完結するようになります。そんなことは夢物語だと思われるかもしれませんが、今現在、既にほぼできる状態になっています。おそらく3年後ぐらいには、普及して、夢物語が当たり前の時代になるでしょう。我々はこれを「エンタープライズ・デジタルツイン」と呼んでいます」と語った(上図を参照)。
「生成AI」を活用、普及させるためのリスキリング体制も構築
アクセンチュアは、eラーニング「Learn Vantage」を開発・運営するUdacity(ユダシティ)社を2024年3月に買収。「アクセンチュア LearnVantage」を構築して、eラーニングによる「生成AI」の育成環境を整備していく。
「Learn Vantage」は195の国と地域で、2,100万人にサービス展開されていて、生成AIによって個人に最適化された研修プログラムを提供している。今後3年間で10億ドルを投資し、生成AI時代のリスキリングサービスを更に強化していく考えだ。
アクセンチュアの従業員数と国内拠点
アクセンチュアは全世界の従業員数が約774,000人。49カ国、200都市以上で展開している。グローバルの売上高は649億ドルに達する。日本に事業所を開設してから62年が経過している。
日本の従業員数は27,000人超。9年間で社員数は約5倍に増え、ビジネスは約6倍に成長している。女性社員は7倍に増え、外国籍の社員も6倍、中でもデータ&AI部署に所属している社員は40倍に増え、首都圏以外で勤務している従業員は32倍に増加している。
国内拠点も増え続けている。拠点数をただ増やしているのではなく、技術的に重点拠点として位置づけしていて、仙台は「データ」の重点拠点、先日開設した京都は「AI」の重点拠点として位置付けている。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。