
ロボット技術の進化が加速している。従来のロボットは、決められた動作を繰り返すものが主流だったが、最新の技術ではAIを活用し、仮想空間内で学習・進化することで、環境への適用を自律的に学習し、より柔軟な自律動作が可能になってきている。この進化は、今後のロボットの躍進や、産業への導入に大きな影響を与えると考えられている。
特に、AIを活用したロボティクスの進化やトレーニングにおいては、仮想空間におけるロボットの学習方法が重要となる。
古田所長は、「群知能」をもとに群ロボットを生物のように自律分散制御する「スワームロボティクス」を紹介。
4,096台のロボットが仮想空間内で学習し、小脳を模したニューラルネットワークを鍛えていく様子を動画で示した。これにより、ロボットは仮想空間内において、環境に適応する能力を獲得するという。この手法では、人間が細かい動作を設計するのではなく、ロボット自身が試行錯誤を繰り返しながら、より適切な動きを自律的に獲得していく。
結果として、人間が制御しなくても、未知の環境においても、階段を登る、バランスを保つといった動作が可能になる。
GMOインターネットグループは、2025年3月6日、日本最大級のサイバーセキュリティカンファレンス「GMOサイバーセキュリティ大会議&表彰式2025」を開催した。石破総理大臣や平サイバー安全保障担当大臣など、政府からサイバーセキュリティの重要性を語るメッセージが届いた。
そして、「GMOサイバーセキュリティ大会議&表彰式2025」のセッションに登壇した古田所長は、ロボットにとってもサイバーセキュリティの重要性を再確認するべき、と述べた。
仮想空間で群ロボットが環境への適用を自律的に学習
古田所長はスワームロボティクスで学習したAIモデルをデプロイした四足歩行ロボットをステージに登壇させ、階段を登らせてみせた。
最新の技術で開発されたこの四足歩行ロボットは、視覚センサーやタッチセンサー、カメラも使わずに、自分の姿勢情報のみを頼りに階段を登ることができる。
また、蹴られたり、転倒したりしても、すぐに姿勢を立て直し、移動を継続することも、デモで実演してみせた。
このような適応能力の高さは、従来のロボットにはなかったものであり、最近、めざましい発展を見せているAIロボットの特徴でもある。
「スワームロボティクス」の活用が進む
こうした技術革新により、安価なロボットでも高度な動作が可能となり、今後は「スワームロボティクス(Swarm:群ロボット)」の活用が進むと予想される。スワームロボティクスとは、多数のロボットが群れとして連携し、統一された目的を果たす技術。例えば、複数のドローンが協調して飛行し、建物の点検や災害救助を行うといった応用が考えられる。
スワームロボティクスとセキュリティ課題
しかし、こうしたロボットの進化は、セキュリティの観点から新たな課題を生み出している、と古田氏は解説する。スワームロボティクスの最大の問題は、通信や制御の安全性。多数のロボットがネットワークを通じて情報を共有するため、悪意のあるハッキングによって制御を奪われる危険性がある。仮に敵対勢力がロボット群を乗っ取れば、物理的な破壊活動や窃盗などの犯罪行為を実行する可能性もある。
さらに、ロボットの大量運用には、メンテナンスやエネルギー供給の問題もある。特に、バッテリーの充電や交換が課題となるため、持続的な運用を可能にするインフラの整備が必要不可欠だ。
こうしたことから、今後は、ロボット技術の発展とともに「サイバーセキュリティの重要性」も高まっていく。AIとロボットの融合が進む中で、ロボットを安全に運用するための技術的対策が求められ、技術者や研究者のみならず、社会全体がロボットとセキュリティの問題に向き合い、対策を講じていくことが不可欠だと語った。
■動画
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神崎 洋治
神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。