AIの次はロボットが大衆化し、社会に融けていく パナソニック安藤健氏が語るロボットビジネスで心掛けるべき本質

■2冊の「ロボット」本が同時刊行
『ロボットビジネス ユーザーからメーカーまで楽しめるロボットの教養』(発行:クロスメディア・パブリッシング、発売:インプレス)、『融けるロボット テクノロジーを活かして心地よいくらしを共につくる13の視点』(発行:NPO法人ミラツク、発売:英治出版)というタイトルの2冊の本が、2025年3月、ほぼ同時に刊行された。著者はいずれも安藤健氏。パナソニックでロボット開発を牽引する安藤氏は、要素技術の開発から事業化までの責任者、さらにはグループ全体の戦略構築も担って、ロボットの社会実装に取り組んでいる。
2冊の本の内容はある程度重なっているが、それぞれ対象読者が、やや異なる。大雑把にいうと『ロボットビジネス』のほうは、ロボットのことをあまり知らないがビジネス対象として少し興味を持ち始めた人が、まず、さらっと概要をつかむために読む本といったテイストだ。価格も手頃で、文体も「ですます」調でやさしく、短時間ですぐに読める。ただし、グラフや写真など図版類が一枚もない。ロボット名や企業名を聞いても何も知らない人は自分で検索しなければ全くピンとこないだろう。
一見人文書のようなタイトルの『融けるロボット』のほうは、もともとは安藤氏が大学で行なった集中講義をベースにしたもので、ロボットだけではなく未来の社会のあり方について、より深く、遠く広く未来を見据える視点を養うことを重視している。いっぽうロボットビジネスを進める上で陥りがちな思考の罠のようなものについても書かれており、実際にロボットビジネスをすでに手掛け始めた人にもおすすめできる本である。ただしもともと学生向けだったせいか物足りない部分も多いので、頭のなかで「じゃあパナソニックはどうするのか?」と安藤氏に突っ込みながら読むのも良いと思う。
どちらの本についても言えることだが、おそらく、ある程度実際にビジネスを進めている人のほうがピンとくる部分は多いだろう。残念ながらロボットは、まだまだ、身近な、あるいは自分が直接たずさわるビジネス対象として捉えられていない。「様々な職業の人にロボットに対して興味を持ってほしい」「今後の社会のありかたについて何か考えるきっかけになれば」という視点は、どちらにも共通している。値段もだいぶ違う2冊だが、本誌読者にはまとめて読んでみることを筆者としてはおすすめしたい。
『ロボットビジネス ユーザーからメーカーまで楽しめるロボットの教養』
著者:安藤 健
定価:1848円(本体1,680円+税)
体裁:四六判 / 272ページ
ISBN:9784295410751
発行:株式会社クロスメディア・パブリッシング(クロスメディアグループ株式会社)
発売:インプレス
発売日:2025年3月21日
◆関連URL
https://www.cm-publishing.co.jp/9784295410751/
Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4295410756/rsaf-22
楽天ブックス https://books.rakuten.co.jp/rb/18133185/
『融けるロボット テクノロジーを活かして心地よいくらしを共につくる13の視点』
著者:安藤 健
定価:2970円(本体2,700円+税)
体裁:四六判 / 400ページ
ISBN:9784991213267
発行:NPO法人ミラツク
発売:英治出版
発売日:2025年3月16日
◆関連URL
https://eijipress.co.jp/products/5065
Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4991213266/rsaf-22
楽天ブックス https://books.rakuten.co.jp/rb/18122050/
■現在のロボットのすがた
この二つの本の同時刊行を記念し、内容のエッセンスを伝えるトークイベントが2025年3月21日(金)、「六本木 蔦屋書店」SHARE LOUNGEイベントスペースで行われた。司会は、NPO法人ミラツクの佐藤絵里子氏がつとめた。
安藤氏はまず、「掃除ロボットを持っている人?」と来場者たちに問いかけた。多くの講演をこなす安藤氏によれば、この返事は地方によってだいぶ違うそうだが、掃除ロボットの国内世帯普及率は現在10%を超えたところなので、10世帯に1世帯くらい、おおよそ500万世帯に普及していることになる。
東京では掃除ロボット以外のロボットを見かけることも多くなっている。都心部のビルでは警備ロボットや業務用清掃ロボットがうろうろしている姿を見かけることも少なくない。特にファミリーレストランでの配膳ロボットはコロナ禍のあと、広く見られるようになった。
では世界で最も大きなロボット会社はどこだろうか。ロボットについて詳しい人たちならば、産業用ロボット大手のファナックや安川電機の名前を挙げる人が多い。出荷台数だけ見ると確かにそのとおりだが、金額の側面で見ると、手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」で知られるインテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社が2024年12月決算で売上83億ドル以上、営業利益率28%と非常に大きくなっている。しかもロボット自体は2000台しか販売していないにも関わらず、インテュイティブサージカルはこの数字を叩き出している。この成功の背景にはロボット本体ではなく、消耗品やサービスから儲けるしくみを構築したことがある。このように、ロボットビジネスといってもさまざまなかたちがあり得る。
■徐々に身近な暮らしに近づきつつあるロボット
安藤氏は早稲田大学理工学部機械工学科出身。その後、大阪大学医学系研究科保健学科に進み、医療工学の研究を行う。いまは、パナソニックに入ってロボットの実用化を目指している。日本科学未来館のロボット常設展示の監修や「国際ロボット展」実行委員、日本ロボット学会の理事など社会と関わる仕事も多い。
ロボットといえば、まずは産業用ロボットだ。自動車工場では多くのロボットが使われている。産業用ロボットの市場動向を見ると、年間50万台くらいのロボットが世の中に出ている。市場全体は右肩上がりの状況だ。日本メーカーのシェアは以前は9割を超えていた。だが今は50%くらいに落ちてきている。中国そのほかのロボットが台頭しているからだ。
2014年ごろから始まったと考えられている「第3次ロボットブーム」以降、多くのサービスロボットも登場している。ロボット掃除機はもちろん、手術ロボット、物流ロボットなどが活用されている。いっぽうでビジネス市場ではルンバのiRobotが苦境に立ったり、手術ロボットも特許切れによって各国から新手が登場したり、物流では多くのスタートアップが出てくるなど、厳しい競争が行われている。
また、ピーマン収穫などの農業や、食品工場でのお惣菜製造、飲食店での洗浄作業や食品調理、そして配膳など、従来はロボットが使われなかった領域でのロボットも登場し始めている。小売やビル警備などでも使われている。安藤氏は「身近な暮らしの手前くらいまで、多くのロボットが使われるようになっている」と紹介した。
■ロボットによるビジネス変革「Robot Transformation(RX)」
なぜロボットが必要とされるのか。背景には人手不足がある。2030年には650万人弱の労働力が不足すると考えられている。そこで政府は、女性やシニア、外国人労働者の活用のほか、生産性向上を目指している。生産性向上で何とかしないといけない労働力は300万人分だ。ここにロボットの活用も含まれる。
ではロボットは順風満帆なのか。そうではない。難しい問題が多々存在している。人を超える高速高精度で動く領域で使えばよかった自動車や電機工場とは異なり、未活用領域では、人並みの速度でも良いが、より柔軟に現場の変化に対応することが求められる。食品製造での唐揚げハンドリングや介護、配膳現場での人や外乱との混在、いずれも、これまでロボットが培ってきた領域とは異なる課題が存在する。
これを異なる見方で見ると、従来のロボット活用領域は少品種大量だったが、これからは多品種少量への対応が必要となる、ということだ。個別対応の「マスカスタマイゼーション」やリサイクル関連の「静脈産業」への対応も同様だ。ここはいわゆる「ロングテール」であり、合計すると大きな市場ではあるが、従来は費用対効果が合わなかったので自動化対象として取り組んでいなかった領域だ。
そこで、やり方自体、ビジネスそのものを変えることが必要だ、というのが安藤氏の主張だ。これを「Robot Transformation(RX)」という。
■RXの実例 Amazon、相模屋食料、搾乳ロボット
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たとえばネット通販大手のアマゾンは倉庫のピッキング方式をAmazon Roboticsで変えた。人が歩き回るのではなく、棚の下に入り込むロボットが棚自体を運んでピックアップする人の前まで持ってくるという方式に変えたのである。つまり人作業をそのままロボットにするのではなく、やり方自体を変えた。今ではAmazonは75万台以上のロボットを運用しており、世界最大のロボットユーザーとも言われている。
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安藤氏がもう一つ挙げた例は相模屋食料の豆腐製造である。相模屋は手作業で行われていた豆腐のパッキング方式を変えた。この「ホットパック製法」が実現したのは製造方式の変更だけではない。豆腐の消費期限が3倍に伸び、さらに販売エリア自体が拡大した。天候データによる需要予測もできるようになり、これらの結果、売上が10倍になった。単純に自動化しただけではない価値を産んだ点が、面白い点だ。
新しい価値へと繋がったもう一つの例として安藤氏が挙げたのは搾乳ロボットである。年間平均 2,000時間の労働時間のうち、半分から6割が搾乳作業だったところをロボット化した。搾乳量は増え、販売できる牛乳の例も増えた。ロボットが物理的に牛に触ることを生かし、健康管理デバイスとした。さらに牛乳中のホルモンバランスを見ることによる発情タイミングの予測、さらにはロボットに適した形の乳頭形状を持つ乳牛への繁殖へと進んでいる。
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■第4次ロボットブームの本質は「ロボットの民主化」が起こること
では今後何が起こるのか。次は「第4次ロボットブームが来る」と安藤氏は語った。産業用ロボットが出てきた第一次ロボットブーム、パートナーロボットなどが出てきた第2次ロボットブーム、そして2014年ごろ、安倍総理がOECDで「ロボット革命」を唱えた第3次ロボットブーム、その次というわけだ。
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いまGoogleでヒューマノイドを検索すると、多くのニュースが登場していることがわかる。全てを追うことはもはや不可能である。中国ではヒューマノイドのスタートアップは60-70社くらい出てきている。工場や物流倉庫での活用への挑戦も、始まりつつあるようだ。もし精密な作業もできるようになれば革命的な変化が起こる。たとえば台湾のFoxconnは、中国UBTechと提携し、ヒューマノイド活用を検討する予定だとされている。
世界初の二足歩行ロボットは1973年、早稲田大学の加藤一郎氏らが開発したWABOTだ。「動くガンダム」のイベントで展示されていたので見たことがある人もいらっしゃるだろう。WABOTは一歩歩くのに45秒かかった。
それが今やヒューマノイドは、滑らかで素晴らしい運動能力を持つに至った。身体能力は劇的に向上した。だが手先を細かく動かすことはできないし、産業用ロボットが未解決の問題もまだ解決していない。だが「使ってみようかな」と思い始めた人も少なくないのである。
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だが安藤氏は「第4次ロボットブームの本質はヒューマノイドブームではない」と述べ、「誰でもロボットが扱える時代が来る、ロボット市場の民主化が起こることが本質だ」と強調した。ヒューマノイドは、いわばその象徴に過ぎない。
つまり、これまでは限られたスペシャリストたちが集団になって、大金を投入してロボットを動かしていた。だが今やロボットは選ばれしものだけが扱う時代ではなくなろうとしているのである。
■「ロボット基盤モデル」の発展
背景には「ロボット基盤モデル」の発展がある。従来はロボットは部分ごとに開発を行っていて、それを統合していた。これに膨大な手間がかかっていた。基盤モデルを使うことで、そういった複雑な作業をせずにロボットを動かせるようになる可能性が高い。少なくともそういう日が近づいていることを予想させる。
そうなると何が起きるのか。まず起こることはコストの大半を占めている「ロボットインテグレーション」の簡易化・低コスト化による市場拡大である。現状のロボットはプロでも動かすのが難しい。システム全体の価格が高いのは、その導入コストが高かったからである。それが簡単に使えるようになると、一気にコストが下がる。
すると、従来はコストの問題があって導入できなかったロングテール市場までロボットがアプローチできるようになる。それを支えるのが「ロボット基盤モデル」というわけだ。安藤氏は「ここにあるモノを、そっちへ持っていって」と口頭で言うと、基盤モデルが状況を理解して、ロボットを動かせるようになる時代が間違いなくやってくると語った。
■AIの次はロボットが大衆化する
さらにその先には何が起こるか。従来のAIは専門家だけが使うものだったが、今のAIは誰もが使える。中身はわかってなくてもインターフェースを触るだけで使える。しかも毎日の暮らしや仕事のなかで、積極的に活用できるようになっている。「これと同じことが、必ずロボットでも起きてくる」と安藤氏は述べた。つまりロボットの大衆化である。逆に、毎日の仕事のなかで積極的に使わなければ、大きな差が生まれる可能性が高い。
では人の仕事はなくなるのか。安藤氏は逆だと述べ、ドイツの例を示した。ロボットを使った会社のほうが最終的には人が増えているというグラフである。企業全体としては使える技術を使ったほうが発展するし、そのぶん人も必要とするのである。採用しなかった企業は逆に減っていってしまう。労働制度の違いもあるので国による違いは存在するが、日本の事例でも、ほぼ同じような調査結果が出ているという。
では、何でもかんでもロボットを導入すればいいのか。そうではないと安藤氏は語った。業務内容は似ていても、「大阪王将」と「餃子の王将」、「ガスト」と「サイゼリア」にはそれぞれロボット活用のスタイルに違いがある。良い悪いではない。経営戦略の違いがあるのだ。経営戦略に対してどういうふうにテクノロジーを活用していくのかについては、まず何を提供したいのかを考えなければならない。
■幸せに過ごすために大切にしていることは何か
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最後に安藤氏は「人手不足を解消するだけではなく、多くの人がどんな暮らしを送るべきかを考えるべきだ」と語り、パナソニックのデリバリーロボット「ハコボ」の例を紹介した。遠隔で監視できるだけでなく、オリィ研究所の分身ロボット「オリヒメ」を組み合わせて使うことで、外出できない人が遠隔オペレーターや、タウンツアーのガイドとして働くこともできる。
同じ遠隔ロボットオペレータであっても、10台のロボットを同時に遠隔処理するのと、コミュニケーションロボットの遠隔オペレーターとして働くのとは異なる能力だ。安藤氏は「それぞれが自分らしさや、自分らしいスキルを活かしながら暮らしていく社会の実現が重要なのではないか」と語った。
デリバリーロボットは街の人たちからも愛されているという。安藤氏は「街のなかで暮らす人たちとの『余白』を埋める作業は自分たちでやっていかないと自分たちのものにならない。そういう取り組みが今後増えてほしい」と語った。
お台場にある日本科学未来館のロボット関連展示「ナナイロクエスト」もそういう思いで作ったと述べ、「ロボットと携わってない人にも、幸せに過ごすためにどんなロボットにどんなことをしてほしいか、大切にしていいることで任せたくないことは何か考えてもらいたい」と述べ、トークを締めくくった。
■2冊の本を書いた理由
このあと、会場からの質疑応答が行われた。まず、「2冊の本を書いたモチベーションは何か?」という質問に対して安藤氏は「会社でロボットビジネスに携わるようになって、普通に技術先行型で商品を投入してもうまくいかない。世の中に普及しないと思った。失敗をたくさん繰り返してきた。世の中で同じ悩みにぶち当たる人も多いのではないか。失敗してきたことは共有しておきたいと思って書いたのが『融けるロボット』のほう、いや両方」と紹介した。
また「ロボット業界では、ここ数年はロボットは盛り上がっている。だが広く一般からするとふだんロボットに触れることはまずない。だが実は意外と身近にあるし、これからどうするべきかを考えてほしいと思って書いたのが『ロボットビジネス』。その上で、どんな社会を目指すのか、どうそれを実現していけばいいかといったことを書いたのが『融けるロボット』」と紹介した。
「どんな人に読んでほしいか」という問いに対しては、「全員に買ってほしいです」と笑ったあと、「ロボットのビジネスにぜんぜん興味がなかった人、そんな世界を考えたこともなかった人は、身近な事例を混ぜながら書いているので『ロボットビジネス』のほうがとっつきやすいかもしれない」と述べた。
「そして『ロボットビジネス』のあとには、ぜひ『融けるロボット』のほうも読んでほしい。こちらは新規事業をやっている人や大学の学生さんとか、技術は何のためにあるのかということを考えて社会に出てもらいたいという思いもあって書いてます。結論からいうと、全員にどちらも読んでほしい」と語った。
■ロボットのコストは下がるか
「今後、ロボットが大衆化する」という話があったが、AIと違ってロボットはハードウェアであり、絶対に無料というわけにはいかない。その点をどう考えるかという質問に対しては「エンジニアサイドからは安くしていくための開発は愚直に続けなければならない。これは前提としてある。それとロボット本体よりも使いこなすためのインテグレーション費用のほうが高いという話を紹介したが、そのコストがAIの活用で下がってくる。また、もしかしたらヒューマノイドが本格的に普及すると汎用的になるので数が出ることによって一気に下がってくる可能性はある」と述べた。
そして「ただし、これからは従来の産業用ロボットのように大型投資に慣れている会社だけが使うわけではない。そこでRaaSなど、色々なビジネスモデルが始まっている。そういった視点と工学サイドの努力がうまくいくと、もしかしたら家庭のなかに一台という時代が来るかもしれない」と続けた。
■ロボットを社会に融かしたい
『融けるロボット』という本のタイトルだが、その意味について、本のなかでははっきり書かれていない。このタイトルはどういう意味なのかという質問に対しては「タイトルが決まったのは最後の最後だった。それまではずっと社会実装といったタイトルだった。社会にどうやったら実装するかという思いではなく、社会と実装するという思いで、『社会と実装する』というタイトルにしたいと考えていたが、『あまりインパクトがない』と言われた(笑)」と答えた。
そして「『社会と実装する』とはどういう意味だったかというと、『メーカー』と『ユーザー』に分かれて一方的に提供するのではなく、ユーザー自身が『余白』を埋めていって、社会のなかで自分たちで使うというところにもっていきたい。そう考えたときに、技術というものは、ほぼ見えないですよね。配送ロボットの取り組み事例を紹介しましたが、ハコボというロボットを『なんとか会社のロボット』という人は、ほぼ誰もいなかった。あれは『自分たちのロボット』であり、『湘南ハコボ』だと。自分たちのものだと。『ロボット』という状態は存在はしてなくて融けた状態になっていた。技術自身が気にされなくなって見えなくなっていた。そういう状態になるといいなと。今は逆に、ロボットは『融ける』という状態とはかけはなれている。当たり前のものには全然なっていない。それを最終的に融かしたいと思って『融けるロボット』というタイトルにした』と語った。
■ロボットビジネスの本質は、ロボットではない
ロボットビジネスにする際のアイデアはあるかという問いもあった。安藤氏は「アイデアはないですけど、タイトルと相反することになるがロボットビジネスをしようとは思わないこと。ロボットビジネスをしようと思った時点で、ロボットが主語になっている。そうではなく、何に困っているのか、課題は何なのか。そのソリューションとしてどういうものが提供できるのか。たまたま、その一つのツールとしてロボットが存在している。もしくは、存在していなくても解決できるぐらいの状態になっていない限りはあまりうまくいかないというのが答えだ。ロボットビジネスということをイメージしながらも、でもロボットは本質ではないということを忘れないことがすごく大事」と答えた。
この件は、本のなかでは、ロボットの魅力と魔力という表現で語られている。「ロボットには、手段が目的化する魔力があり、その力は非常に強いので気をつけたほうがいい」という話だ。
■どんな社会を作りたいか
今後、安藤氏が取り組んでいきたい分野や仕事に関しても質問が挙がった。安藤氏は「街づくりがしたい。人が存在している空間、集まりを楽しくしたい。人が生きがい、やりがいを持って働ける社会、地域を作ることに挑戦したい。そういうことに携わっていきたい」と語った。なお、政治家や不動産デベロッパーを目指すつもりはないとのこと。
最後に、学生にどういうことを期待したいかという質問に対しては「学生時代には将来や、どういう社会を作ってみたいかといったことは考えたことはなかった。だが1日、集中講義をすると、人はものすごく変わる。全員ではないが、次の年に講義に行くと、わざわざ言いにきてくれたりする子もいる。そういう人が一人でも増えたらいいかなと思っている。技術がとにかく大好きという人がいてもいいし、その心は大事にしたらいいと思う。その中に何人か、どんな社会を作りたいかと考える人がまじっていて、新しいものづくりに挑戦してくれるといいなと思いながら本を書いたり授業をしたりしている」と語った。
ロボットの見方 森山和道コラム
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森山 和道
フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!