今回はドミノ・ピザが発表した自動運転デリバリーロボット「DRU」を紹介したい。
ピザの配送コストは無視できない金額
日本国内でピザを注文すると自宅まで届けてもらうのが当たり前になっていて、たとえばドミノ・ピザの場合、その配送コストは商品価格に含まれているので、個別に配送料を意識することはない。
一方、ドミノ・ピザでは店頭受取とすることで様々な価格メリットを打ち出している。例えば1枚平均3,000円のものがテイクアウトだともう1枚無料となったり(BUY 1 GET 1 FREE)、Mサイズ1枚通常2,500円のものがテイクアウトだと1,000円になる(1枚割)などかなり割引料金が適用される。つまり、これらの例では1,500~3,000円の割引金額が、顧客が負担するはずだった配送コスト相当の金額という計算になる。
もちろん、実際にドミノ・ピザ側で必要な配送コストは、デリバリークルーと呼ばれるアルバイトの人件費、配達用バイクにかかるコストなど複数の要素があるため、配達1回当たりのコストは正確には計算できない。上記顧客負担の配送コスト相当金額より少ないにせよ、劇的に安いコストとは想像しにくい。ドミノ・ピザのデリバリーのアルバイトの人件費は店舗やエリアによってい異なるが、時給950円~1250円以上となっている。もちろん配送のない時間帯でも、人件費は負担しなければならない。
諸々考慮すると1回のピザの配送コストは、1,500円前後は平均してかかっているのではないだろうか。
(蛇足だが、1枚宅配しても、2枚宅配を頼んでも本来配送コストは同じなはずなのに、価格が割り引かれないのは顧客にとっては不利益だ。実際は複数枚を同時オーダーの場合、配送コストでみれば、お店側が得をするような計算になる。)
(蛇足ついでに、外人向け日本サイトからオーダーすると、宅配でも1枚無料になるサービスが受けられる。日本在住の外国人のコスト感覚、ボリューム感に合わせたサービスなのかもしれないが、日本人でも利用可能だ。)
DRU (DOMINO’S ROBOTIC UNIT)とは
さて、本題に入りたい。配送コストの低減はピザ事業者にとってコストの大きな部分を占めることは疑う余地がないことは前述の通り。この配達業務をロボットで行わせることで、大きくコストを削減しようとしているのが、「DOMINO’S ROBOTIC UNIT」=DRU(ドリュー)だ。このロボットは同社調べによれば、世界初の商業用自動運転デリバリーロボットだという。
ロボットの構造は4輪車で、上部にキャリーボックスが設置されている。外見は目のようなLEDが愛らしく、他様々な場所にLEDが埋め込まれていて周りからの視認性も高いように配慮されている。
ピザ配達に特化したデリバリーロボットだけに、キャリーボックスは注文されたピザを保温、ドリンクを保冷しながら運搬できる。
DRUは、店舗を出発点として顧客のドアを目的地として、自動的に経路を設定し、歩道を使って、安全な速度で配達を行う。
道から外れず、障害物を回避しながら動けるよう車載センサーも多く搭載されているという。
このDRUの導入で、配送コストが浮いた分、ピザの価格設定を下げれば他社ピザ事業者に対する競争優位性を強化することもできるし、価格を変えずに会社の利益を上積みすることもできる。ピザ事業者がこのロボットを採用しない理由はまったくないだろう。
現在オーストラリア、クイーンズランド州の一部エリアで試運転中で、今後は世界に展開するという。「日本に登場する日はまだ先になりそうですが、考えているほど遠くはないのかもしれません。」と公式サイトでアナウンスされている。
YouTubeでオフィシャル動画が公開されている。開発の様子、発表会、実際の動きなどがまとめられた動画だ。多くのデザイン案から可愛い顔が選ばれたのは興味深い。
開発に携わったのはMarathon Targets
DRUの公式紹介サイトでは「Powered by Marathon」と明記されている。これは、以前ロボスタで紹介したオーストラリアのロボット企業「Marathon Target」のことだ。
ドミノ・ピザのDRUに対して、Marathon Targetsは、カスタムボディと自律型ロボットプラットフォームを提供したと発表している。
開発中のDRUのプロトタイプの動画と、10年以上軍用ロボット開発の経験を積んできたMarathon Targetsの車両はかなり共通点が見られる。ミルスペック(MIL規格)のロボット開発のノウハウが、今回のDRUに引き継がれているのは間違いない。軍民転換の好例と思う。
軍需産業からの民需産業へのシフトは大歓迎。僕らが大好きなインターネットも缶詰も、当初は軍事ニーズから生まれたものですしね。
Domino’s / DRU – Domino’s Robotic Unit – Autonomous Delivery Vehicle