ニューヨーク、ロンドン、ルクセンブルクに拠点を置いているLuxAIは、ルクセンブルク保健研究所(Luxembourg Institute of Health、通称LIH)および英国のバーミンガム大学と共同で、ソーシャルロボット「QTrobot」を用いた自閉スペクトラム症の幼児向け在宅発達プログラムの有効性を検証する世界初の大規模かつ長期的な科学研究を開始した。
対象は2.5~4.5歳の子どもを持つ69世帯で、研究は2026年末までに終了する見込みである。
研究の狙いと設計
本研究はルクセンブルク国立研究基金とルクセンブルク経済省の共同資金提供を受けている。
QTrobotは家庭で実施できるインタラクティブな学習活動を提供し、ゲームやガイド付き練習を通じて各児のペースに適応。評価はコミュニケーションと言語、ソーシャルスキル、学習などの発達領域を中心に行い、保護者が活用できる構造化された支援ツールの有用性も検討する。
デジタルヘルス革新の観点から、ロボットが在宅環境で一貫した個別支援を提供できるかを科学的に明らかにすることが目的だ。
実施地域と評価項目
参加家庭は英国West Midlandsで約10カ月にわたり在宅プログラムに取り組む。研究者は子どもの発達指標に加え、保護者のセルフエフィカシー(自己効力感)を測定し、ロボット支援型プログラムが早期発達支援の質とアクセシビリティをどの程度高めるかを検証する。
LIH臨床疫学調査センター長のマノン・ガンテンバイン博士は、短期・小規模研究で示されてきた有望性について触れた上で、長期的な有効性と使いやすさの体系的検証は初の試みだと述べた。バーミンガム大学教育学部長のカレン・グルドバーグ教授は、高品質な早期支援へのアクセスが限定的な現状を指摘し、研究とテクノロジーの統合が家族にとって魅力的な支援モデルを生む可能性を示した。
国際連携と今後の展望
LuxAIのCOOであるアイーダ・ナザリ博士は、QTrobotが子どもにとって安心できる家庭環境で一貫性のある個別支援を提供し得る点を強調し、69世帯による10カ月の実装から得られる実世界の知見に期待を示した。同社は、社会的支援ロボットとAIを活用した人とロボットの相互作用ソリューションを展開する。
フラッグシップであるQTrobotは、早期発達から高齢者領域まで健康・ウェルビーイング・学習を促進する用途で世界的に用いられ、「特別支援教育向けQTrobot」は各国の学校で活用が進む。バーミンガム大学は自閉症教育研究センターを中心に、自閉症、教育、神経発達研究の知見を蓄積している。
現在、ウェスト・ミッドランズ地域で対象年齢の子どもがいる家庭の募集が行われている段階である。