株式会社シーイーシーは2026年9月9日、製造業向けに「フィジカルAI」の社会実装に向けた事業検討を開始し、研究拠点のさがみ野システムラボラトリに「フィジカルAI実証ラボ」を開設したと発表した。フィジカルAIとは、現実世界を理解して行動を生成することで物理的タスクを遂行するAIを指す。
同社は製造業に特化したバーティカルAI(領域特化型AI)を起点に、データ利活用基盤「Resolana(レゾラナ)」で整理した情報を現場の設備とつなぎ、フィジカルAIによる実行までを一貫して支援する方針を掲げる。クラウドに依存せず、中小の製造現場でも使用できるフィジカルAIの社会実装を目指すとしている。同ラボでは、機械制御を含むメーカー横断のロボット環境でフィジカルAIの実装に向け、導入要件および実装論点の検証を進めている。
製造DXの知見とロボット制御技術を統合
少子高齢化による人手不足や多品種少量生産の広がりを背景に、製造・物流をはじめとする現場で自動化・省人化のニーズが高まっており、現実世界で見て・考えて・動くフィジカルAIの活用が期待されている。一方で、対象や環境が都度異なる現場でロボットを確実に動かすには、学習モデルの品質と実機制御の現場ノウハウ、そしてその土台となるデータの質と量が欠かせない。
現場で適切な判断を行うには、製造工程や品質基準、安全要件といった業務知識を理解したAIが求められるため、汎用的な大規模AIに加え、業界・業務に特化したバーティカルAIによって現場固有の知見をAIの判断に反映させることが重要になる。
シーイーシーは、製造業に特化したバーティカルAIと機械・ロボット制御技術、データ利活用基盤「Resolana」を組み合わせ、フィジカルAIの社会実装に向けた事業検討を開始する。複数メーカーのロボットを自社保有し、特定ベンダーに依存しない独立系企業として、上位システムと現場の機械制御を安全・確実につなぎ、製造現場のDX・自律化に貢献することを目指すとしている。
マルチベンダー環境で連携性・安全性を検証
フィジカルAI実証ラボは、データ×AIと実ロボットを組み合わせた実験環境を提供し、マルチベンダー環境での連携性・制御性・安全性を系統的に評価することで、事業化検討に向けた基礎資料を取りまとめる。必要に応じて追加検証も計画するという。実際にロボットユーザー企業や大手部品メーカーなどが同ラボを訪れており、高い関心が寄せられているとしている。
本年度の実証テーマとしては「動作設計(ティーチング・プログラムの自動生成)」と「学習モデルの現場適用(Sim2Real)」の2つのアプローチを推進する。
Sim2Realとは、シミュレーション環境で学習・検証したモデルや制御戦略を、現実世界の装置・ロボットで再現・稼働させるための技術体系を指す。いずれの取り組みも、オンプレミス環境、複数メーカーの同時制御、新旧装置(ロボット)の混在といった製造現場の実態を想定した環境での実現を目指し、実運用性・安全性・導入効率の検証を行っている。

具体的には、AIを用いてロボットの動作設計(何を、どの順で行うか)を自動生成し、生成されたティーチング・プログラムの妥当性および安全性を仮想環境上で体系的に評価する。
これにより、熟練者による手作業の負荷を低減し、多品種少量生産への迅速な切り替えや現場導入のスピードアップを目指す。検証では、安全境界の設定、異常時のフェイルセーフ動作、サイクルタイムやタクト変動の影響評価などを主要な評価指標として扱う。


また、シミュレーションで得たAIモデルを実機に展開し、現実環境での再現性や安定稼働性の確保も検証する。稼働継続率、誤差率、復旧時間、セーフティインシデントの発生頻度といった運用指標をモニタリングし、実運用に耐えうる水準の担保を目標としている。
工作機械見本市にも出展予定
バーティカルAIを起点に現場データと設備をつなぎ、フィジカルAIの社会実装を目指す同社は、今回の実証をフィジカルAI事業の出発点と位置付ける。
工作機械や産業用ロボットなどのユーザー企業と協業し、AIとデータで上位システムと現場の機械制御を安定的かつ確実に結ぶソリューションの実装を目指している。設備IoT導入実績やセキュリティソリューション実績を生かし、メーカーやシステムインテグレーター、製造・物流事業者と連携して自律化(フルオートメーション)の実現に貢献する方針だ。
シーイーシーは2026年10月26日から31日まで東京で開催される「第33回 日本国際工作機械見本市」に出展し、今回の検証内容のデモンストレーションを行う予定としている。
ロボスタオンラインセミナー情報
フィジカルAIに重要な「学習データ」 知能化ロボットの最前線
ロボスタでは、ヒューマノイドやAIロボットの進化を支える「学習データ」をテーマに、オンラインセミナー「フィジカルAIの『学習データ』はどう作る? APTO高品氏が語るフィジカルAI時代のデータ戦略と社会実装」を10月7日(水)に開催します。

講演では、「フィジカルAIになぜ学習データが重要なのか」といった基礎から、VLAや模倣学習、テレオペレーションによる実世界データの収集、アノテーション、シミュレーションや合成データの活用まで、フィジカルAIの学習データがどのように作られるのかをわかりやすく解説していただきます。
さらに、実際のユースケースや社会実装に向けた取り組みを紹介します。NVIDIAやAWSとの連携など、フィジカルAI時代に求められるデータ基盤やエコシステムのあり方、今後の可能性についても深掘りします。
ロボットを賢くするための「データ」は、どこから集め、どう作り、どう活用していくのか。フィジカルAIの社会実装を「学習データ」の視点から考えるセミナーです。ぜひ、ご参加下さい。
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「触覚」のAIロボット最新研究と実装の最前線
ロボスタでは、AIロボット実装の鍵を握る最新技術のひとつ「触覚・力覚」をテーマに、オンラインセミナー「ロボットは「触覚」で進化する ヒューマノイド・フィジカルAI時代のハプティクス最前線」を9月17日(木)に開催します。

講演では、「人間の触覚・力覚とは何か」「ロボットに触覚はなぜ必要なのか」といった基礎から、視覚AIとの融合、遠隔操作やテレオペレーションとの関係、医療・介護・製造分野への応用、さらにはヒューマノイドやフィジカルAI時代における触覚技術の役割まで、最新の研究動向を交えながらわかりやすく解説していただきます。
後半は、柔軟ゴムセンサ「e-Rubber」の開発や実証実験、「身体性AI」やロボットへの応用事例等をご紹介。
大学等における最先端研究と、企業による社会実装の両面から、触覚技術の現在地と今後の可能性を深掘りします。ぜひ、ご参加下さい。
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