AIロボットが切り拓く日本の未来とは 「LOVOT」や「はなちゃん」がステージに登場したRobiZy総会シンポジウム

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2026年9月14日、ロボット関連の会員組織「RobiZy(ロビジー)」の総会シンポジウム「生成AIxフィジカルAIが切り拓く日本の未来 ~AIは考えるから動くへ、そして人のこころに寄り添うロボットへ~」が東京大学 弥生講堂 一条ホールで開かれた。

開会挨拶に立ったRobiZy理事長の佐藤知正氏は、生成AIが身体を持ち、現実の空間で動き始めた現在を「フィジカルAI」の時代と位置づけ、この日の議論の軸を示した。

本記事では、総会シンポジウムの様子をダイジェストでお届けする。

国家戦略として動き出したロボット政策

山田太郎氏

基調講演には参議院議員の山田太郎氏が立った。山田氏は欧米各地の研究現場を視察してきた経験を踏まえ、ロボットの頭脳にあたる基盤モデルの開発とともに、手足にあたるアクチュエーターやセンサーの供給体制を国内に整えることが急務だと述べた。高性能なモーターやセンサーの多くを海外製に頼っている現状が続けば、国産ロボットの価格競争力そのものが失われかねないという。

あわせて、視覚と言語と行動を結びつけるモデル(VLA)や、数秒先の映像を予測しながら動作を決めるワールドモデルの研究動向にも触れ、実際の作業精度を上げるにはAIだけに頼らず、決められた手順を守るルールベースの制御と組み合わせる必要があると指摘した。

現場に根ざすということ

続く活動紹介では、佐藤氏が副理事長の伊藤デイビッド遥叙氏とともに「生成AIとフィジカルAI/ロボットワーキンググループ」の取り組みを紹介した。

佐藤知正氏

佐藤氏は、レストランや工場、病院といった現場では人が抜けた瞬間に作業が止まってしまう場面が今も多いと指摘し、AIやロボットを導入する際には技術の完成度だけでなく、現場の人に信頼されるかどうかが普及の分かれ目になると述べた。

あわせて、2040年60兆円へ拡大させると言われているAIロボット市場の内、3割の20兆円を日本が獲得するという政府目標についても言及。高齢化と人口減少が進む日本にとって、ロボットの働きが不可欠になると説明した。

挑戦しないことこそ最大のリスク

事例発表の1人目は、株式会社MOGITATe代表取締役社長でRobiZy創設者でもある北河博康氏である。北河氏は三井住友海上で29年にわたり営業や商品・サービス開発などを手掛けた後、2021年にMOGITATeを設立した経歴を持ち、講演のスライドには「最大のリスクは『挑戦しないこと』である」という言葉を掲げた。

北河博康氏

保険会社時代に培ったリスクマネジメントの視点から、人と共存するロボットが増えるほど誤作動や接触事故といった新しい種類のリスクが生まれると説明する一方で、人手不足や高齢化が進む地方にこそロボット導入の余地が大きいとし、地域の課題を先に見つけたうえで小さく試すことが定着への近道になると語った。

良いハードウェアとは何か

事例発表の二人目、早稲田大学理工学術院大学院情報生産システム研究科教授の橋本健二氏は、長年にわたり人型・脚型ロボットの機構設計に携わってきた立場から登壇した。

橋本健二氏

橋本氏は、モデル化しやすく制御しやすい機体こそが良いハードウェアだと考えてきたと振り返りつつ、コンピューターの中でのシミュレーションと実機の動きには依然として差があり、この差を埋める作業こそが研究の核心だと述べた。近年は中国製ハードウェアの進歩が目覚ましく、機構設計から入ってAIに取り組む日本の研究者が相対的に少なくなっている現状にも言及し、機構とAIの両方を理解する人材の重要性を訴えた。

銀行が見るヒューマノイド市場

3人目の事例発表には、株式会社三菱UFJ銀行産業リサーチ&プロデュース部の安井也雄氏が登壇した。安井氏は、人手不足が深刻な物流や製造の現場を中心にヒューマノイドの導入が進みつつあるとしたうえで、現時点では決まった環境の中で同じ動作を繰り返す用途が中心であり、想定外の状況に完全に対応できる段階には至っていないと説明した。

安井也雄氏

中国では見本市に多数のヒューマノイドが出展されるなど普及の動きが加速しており、銀行としても企業間の連携やユースケースづくりを後押ししていく考えを示した。

そばにいるAIという発想

ハナモフロル株式会社代表取締役の袖山慶直氏は、ソニーグループでの研究開発を経て2026年3月に同社を設立した経歴を紹介したうえで、子供の姿をした対話ロボット「はなちゃん」を介護施設に持ち込んだ実践を報告した。

袖山慶直氏

はなちゃんは身長43センチ、車椅子に座った利用者と目線が合う高さに設計されている。特別養護老人ホームでの調査では、認知症が進み会話がまとまりにくくなっていた入居者が、はなちゃんとの会話をきっかけに表情を動かし、言葉を交わす場面が見られたという。

HANAMOFLOR 愛称「はなちゃん」の紹介スライド

袖山氏は、効率だけでは測れない「人の心が動く」という反応こそが、フィジカルAIの価値を考えるうえで見落とせない要素だと述べた。

温かいテクノロジーが向き合う問い

続いてGROOVE X株式会社代表取締役社長の林要氏がオンラインで登場。家庭向けロボット「LOVOT(らぼっと)」の開発を通じて見えてきた知見を語った。

林要氏(オンライン)、LOVOT(会場)

LOVOTの本体価格はおよそ45万円から50万円で、これまでの累計出荷台数は2万3千台ほどだという。林氏は、スマートフォンなどと比べればまだ生産規模の小さいロボットにどこまでコストをかけられるかが事業上の課題だとしたうえで、LOVOTには5000個を超えるセンサーを搭載し、1日16時間動き続ける設計にしていると説明した。

決められた作業をこなす「タスク遂行型」のロボットとは異なり、そばにいて関係を築くこと自体を目的にした「関係性構築型」のロボットとして開発してきたと述べた。

タスク遂行型フィジカルAIと関係性構築型フィジカルAIを対比する図

実際に林氏が示したスライドでは、聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーション科でのロボット介在療法の予備実験が報告されていた。脳梗塞の後遺症で会話が難しかった患者がLOVOTに話しかけるようになり、自発的な発語が増えた例、気管切開の後に認知機能が低下していた患者がLOVOTと触れ合うことで発語を促された例が示され、治療の場での会話そのものが増える傾向が見られたという。

リハビリ現場でのLOVOT介在療法を紹介するスライド

今後の展望

最後にRobiZy副理事長の伊藤デイビッド遥叙氏が登壇し、「寄り添う」から「実装」へという言葉でこの日の議論を締めくくった。

伊藤デイビッド遥叙氏

伊藤氏は、フィジカルAIには決まった作業をこなす方向性と、人のそばにいて信頼を築く方向性の二つの領域があるとしたうえで、両者を分けて考えるのではなく、現場ごとにどちらの比重を置くかを見極めることが今後の実装の鍵になると語った。

議員、保険会社出身者、大学の研究者、金融機関、そして介護や家庭向けロボットの開発者などがそれぞれの考えを語ったこの日のシンポジウムは、フィジカルAIの可能性の広さや、社会実装を推進していくことの重要性を示すものとなった。

《杉田 大樹》

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イード運営媒体を複数担当し、記事/4コマ漫画/特集ページなどの制作・編集を行っています。 ロボット・AI用語集のページを制作しましたので、下記のホームボタンからぜひご覧ください。

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