GMO大会議・秋・フィジカルAI 2026の講演ダイジェスト 学習データ・ヒューマノイドや四足歩行ロボットの社会実装・サイバー防衛など

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GMOインターネットグループは2026年9月15日、東京・渋谷のセルリアンタワー東急ホテルで「第4回 GMO大会議・秋・フィジカルAI 2026」を開催した。司会はフリーアナウンサーの加藤綾子氏が務めた。

本記事では、講演全体の様子をダイジェスト形式でお届けする。

オープニング

開会に先立ち、会場では二足歩行ヒューマノイドロボット「Unitree G1」5台によるダンスパフォーマンスが披露された。

オープニングで披露されたヒューマノイドロボット「Unitree G1」5台によるダンスパフォーマンス

オープニングメッセージに登壇したGMOインターネットグループ代表取締役グループ代表でCEO兼CAIO(グループAI変革最高責任者)の熊谷正寿氏は、生成AIの普及速度や日本のロボット産業の現状について語った。その内容はロボスタの既報記事で詳しく報じたため、本稿では割愛する。

続いて内閣総理大臣・高市早苗氏のビデオメッセージが流れた。高市氏は、フィジカルAIを「我が国の勝ち筋となる分野」と位置づけ、2040年度までに半導体を含め80兆円の官民投資を想定していると述べた。国産のAIロボットを含む1000万台規模のAIロボットを2040年までに国内に導入し、世界シェア3割超にあたる20兆円規模の市場獲得を目指す考えを示した。

内閣総理大臣・高市早苗氏のビデオメッセージ

続いて財務大臣兼金融担当大臣の片山さつき氏のビデオメッセージが流れた。片山氏は、フィジカルAIの時代にはサイバー攻撃の対象がデータやシステムだけでなく、工場のロボットや物流システムといった現実世界にも広がると指摘し、防御側もAIを活用しながらサイバーセキュリティ対策を進める必要性を強調した。そのうえで、産官学が知見を結集し、日本の強みを生かしたフィジカルAIの発展と、安全で信頼できるAI社会の実現に向けた議論が深まることに期待を示した。

財務大臣兼金融担当大臣・片山さつき氏のビデオメッセージ

Anthropicとの提携

続いて、Anthropic Japan代表執行役社長の東條英俊氏は、2021年にサンフランシスコで創業した同社の成り立ちと、安全性を重視したAI開発の方針を紹介した。GMOとの提携については、サイバー攻撃対策サービスへのClaude導入や、グループ社員によるClaude活用が進んでいると説明した。

「Anthropicが目指す世界」と題したスライドを示しながら講演する東條英俊氏

北京のヒューマノイド大会に挑んだGMO

続いて、GMO AI&ロボティクス商事の取り組み紹介では、GMO AIR代表取締役社長の内田朋宏氏が登壇した。同社は2024年6月に設立され、ヒューマノイドロボットの需要と供給をつなぐ事業を展開している。2026年3月には受託開発とロボット提供を行う「GMOヒューマノイド.shop」を開始し、4月には開発から実証実験までを一箇所で行える「GMOヒューマノイド・ラボ 渋谷ショールーム」をオープンした。

8月に北京で開催された「第2回世界人型ロボット運動会」には汎用機体で出場し、100メートル・200メートル走で好タイムを記録した。一方で、内田氏は転倒やハードウェアの故障といったトラブルも率直に語り、現場での再学習の必要性を痛感したと振り返った。

北京での世界人型ロボット運動会における転倒・修理・本番出場までの過程を示すスライド

このセッションではさらに、TechShare代表取締役の重光貴明氏が登壇し、同社とGMOとの資本業務提携を発表した。重光氏は自社の歩みを紹介しつつ、GMOとタッグを組んで国内のフィジカルAI普及を進めたいと述べた。

GMO AIRとTechShareの資本業務提携を発表するスライド

「AIにいくら使っているか」経営層の本音

パネルディスカッション「うちはAIにいくら使っている?から始めるトークンマネジメント」には、OpenAI Forward Deployed Engineerの齊藤初雲氏、デジライズ代表取締役CEOの茶園将裕氏が登壇し、GMO天秤AI代表取締役社長の山城博規氏がモデレーターを務めた。

齊藤氏は前月のAI利用料が個人で約40万円に上ったと明かした。

前月のAI利用料が合計40万円に上ったことを示すスライド

茶園氏は、1,000円や2,000円の節約より、1人に100万円払ってでも1億円の売り上げを生み出す発想の方が重要だと述べた。一方で、日本企業の多くは無償版のAIをそのまま使い続けていたり、有償版を導入してもアカウントが放置されていたりする例が多いとも指摘し、経営層自らが積極的に使う姿勢を見せることが現場への浸透につながると強調した。

左から山城博規氏、齊藤初雲氏、茶園将裕氏

両者共通して、AIの利用料を「コスト」ではなく「投資」として捉えていると語った。

デジタル大臣・松本尚氏「自動運転とAI×医療に注力」

衆議院議員でデジタル大臣を務める松本尚氏は、日本の成長戦略に掲げる17分野・62事業のすべてにAIとサイバーセキュリティが関わっていると説明した。

自動運転については、大手自動車メーカーに対しレベル4の自家用車を国内外に展開する目標を共有するよう求めていることを明らかにした。医療分野では、日本の高い医療技術のデータを国産AIに学習させ、手術支援や内視鏡診断に活用する構想を語り、データを海外のAIに預けるのではなく国内で保持する重要性を述べた。

講演するデジタル大臣の松本尚氏

四足歩行ロボットの警備実証実験、壁は技術より制度

「四足歩行型ロボットによる警備実証実験」のパネルディスカッションには、千葉工業大学未来ロボット技術研究センター所長の古田貴之氏、ALSOK執行役員CTOの佐藤将史氏が登壇し、GMOインターネットグループ取締役グループ副社長執行役員・COOの西山裕之氏がモデレーターを務めた。

左から西山裕之氏、古田貴之氏、佐藤将史氏

古田氏は、陸上自衛隊との共同実験で得た知見を、ALSOKとの民間向け実証実験に応用したと説明した。ロボット本体は駆動部分のみとし、センサーやコンピューティングは別途搭載することでセキュリティを担保する設計にしたという。

一方で、実際に都内の民間施設で実験を行う段階では、ナンバープレートの要否や道路使用許可、緊急停止装置の必要性など、前例のない申請対応に時間を要したことも語られた。佐藤氏は、ロボット技術そのものより、これを社会実装するための制度や運用の整備こそが最大の壁だったと総括した。

西山氏も、技術者・サービス事業者・セキュリティ担当者の三者が協議を重ねたことで実証にこぎ着けたと振り返り、今後は空港や工場など公共性の高い現場でも展開を目指す考えを示した。

GMOフィジカルAI Awards 2026

「GMOフィジカルAI Awards 2026」の表彰式では、経済産業省大臣官房審議官の奥家敏和氏や千葉工業大学の古田貴之氏ら有識者による審査を経て、AI部門優秀賞にPreferred Networks、ロボット部門優秀賞にテレイジスタンスが選ばれた。

Preferred Networksは独自開発の半導体を用いた研究成果を社会実装につなげた点が評価された。

AI部門優秀賞に選ばれたPreferred Networksの共同創業者 代表取締役社長 岡野原大輔氏

テレイジスタンスは、遠隔操作と自動制御を組み合わせたロボットソリューションをコンビニや倉庫向けに24時間稼働させ、そこで得られる動作データを業界全体で共有できる仕組みづくりに取り組んだ点が評価の対象になった。

ロボット部門優秀賞に選ばれたテレイグジスタンスの共同創業者兼CTO佐野元紀氏

NVIDIA平野一将氏が語るSPECIALISTとGENERALIST

エヌビディア ロボティクス事業部事業部長の平野一将氏は、フィジカルAIの開発における最大の課題はデータ収集の難しさにあると説明した。

NVIDIAが目指しているロボット知能のスケーリングとしては、モデル化手法のSPECIALISTとロボット学習のGENERALISTを組み合わせることを掲げ、日本のものづくりの強みを活かせる余地があると述べた。

学習データは現場で集めるか、合成でつくるか

「フィジカルAIを動かす学習データの作り方」のパネルディスカッションには、経済産業省の奥家敏和氏、Preferred Networks共同創業者代表取締役社長の岡野原大輔氏、一般社団法人AIロボット協会CTOの松嶋達也氏、テレイジスタンス共同創業者兼CTOの佐野元紀氏が登壇し、GMOインターネットグループサイバー防衛事業推進本部長で元陸上自衛隊陸将の廣惠次郎氏がモデレーターを務めた。

左から廣惠次郎氏、奥家敏和氏、岡野原大輔氏、松嶋達也氏、佐野元紀氏

佐野氏は、ロボットの関節や腕の動きを直接記録した操作データが最も価値が高いと述べ、遠隔操作やハンドヘルド型デバイスで集めたデータを組み合わせて学習に使っていると説明した。岡野原氏は、映像や音声はすでに合成技術が発達している一方、力の伝わり方など物理的なセンサーデータの合成は難しく、実データの比重が依然として高いと指摘した。奥家氏は、潜水艦の溶接技術のように機密性の高いデータは非公開が原則である一方、一般的な溶接手法のような汎用性の高いデータはむしろ業界で共有した方が全体の底上げにつながるとの考えを示し、経済産業省としてもデータセット整備の事業を進めていると明かした。

AIによる攻撃は加速する、防御側もAIエージェントの活用を

「AIで攻撃が加速する今、どう先に守るか」のパネルディスカッションでは、AIモデルの性能向上に伴い、脆弱性の発見数がここ数年で急増しているという指摘が相次いだ。

脆弱性が発見されてから実際の攻撃に使われるまでの期間が数カ月単位から即日に近い水準まで短縮していることや、長年使われてきたオープンソースソフトウェアの脆弱性がAIによって新たに発見される事例も紹介された。

対策として挙がったのは、開発の初期段階からAIでコードを検証する「シフトレフト」の考え方や、パッチ適用の迅速化、そしてAIエージェントを防御側にも活用することだった。パネリストらは、攻撃側の速度と量に対抗するには、守る側も同様にAIを使いこなす体制づくりが欠かせないという認識で一致した。

左から米内貴志氏、乙部幸一朗氏、菅野信亮氏、阿部慎司氏

東京大学・藤井輝夫総長「泳ぎながら学ぶロボットの研究からおよそ40年」

最後の講演には東京大学総長の藤井輝夫氏が登壇した。

東京大学総長の藤井輝夫氏

藤井氏は1990年頃に水中ロボットの研究に携わり、ロボット自身が泳ぎながら動きを学習する仕組みを研究してきたと振り返った。

時が流れ、現代の東京大学では、AIを責任を持って開発・運用するための倫理面の教育にも力を入れており、2027年秋には社会課題の解決を担う人材を育成する新しい教育課程「UTokyo College of Design」を設置する予定だと語った。

囲み取材、熊谷正寿氏「ヒューマノイドの壁は手」

プログラム終了後の囲み取材には、GMOインターネットグループ代表の熊谷氏が対応した。

囲み取材に応じたGMOインターネットグループ代表の熊谷正寿氏

ロボスタ編集部からヒューマノイドロボットの社会実装に対する考えを質問すると、ロボットの動作全体のうち手の動作が占める比重が大きく、卵を割らずに持てるような繊細な動きができて初めて社会実装の壁を越えられるのではないだろうかと回答。他メディアから、ヒューマノイドと人が共存する街づくりの必要性が問われた際には、まずは工場や倉庫など特定の環境から実装が進み、その後に家庭向けの用途に広がっていくとの見通しを示した。

GMOグループはこれからも、ヒューマノイド企業の事業化を支援する姿勢だと熊谷氏は語った。

《杉田 大樹》

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杉田 大樹

杉田 大樹

イード運営媒体を複数担当し、記事/4コマ漫画/特集ページなどの制作・編集を行っています。 ロボット・AI用語集のページを制作しましたので、下記のホームボタンからぜひご覧ください。

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