【羽田卓生のロボットビジネス入門 vol.1】法人向けロボットビジネスが盛り上がる理由
はじめまして、このロボスタで連載をさせて頂くことになりました、アスラテックの羽田卓生です。「第三次ロボットブームからロボットビジネスを始めた人のための”ロボット業界の眺め方講座”」ということで、不定期連載させて頂きます。
1998年にソフトバンク入社後、メディアビジネスや通信ビジネスに主に従事。2013年のアスラテックの立ち上げ時より同社に参画。現在、事業開発部門の責任者を務める。任意団体ロボットパイオニアフォーラムジャパン代表幹事。
私も3年前にロボット業界に転身したばかりの新参者です。この3年、「ああ、そんな話はもう3回目だよ。」と言われたことが度々。
そう、いまのロボットブームは「第三次」と呼ばれています。すでに、日本では三回目のブームなのです。だから、そう言われてしまうんですよね。
しかし、現状は第三次ロボットブームからの参入者が多数派。
そんな第三次ロボットブーマーのために、ロボットビジネスをいろんな角度から探っていければと思っております。それでは前置きが長くなりましたが、本編に移ります。
ロボットのビジネス活用事例
2016年も後半に差し掛かり、第三次ロボットブームと呼ばれてもう数年が経つ。
まずは、この第三次で発売、発表された産業用以外のロボット製品を振り返ってみようと思う。
■代表的な購入できるロボット製品(産業用ロボット以外)
このリストを見ると、3機種をのぞいて、B向け(ビジネス・法人向け)でも販売をやっているという結果になった。そもそも、B向け限定販売という機種もある。
事実、Pepperを個人で買ったという声よりも、法人での導入事例の方が多く聞こえてくる。ロボホンも、当初はC向け(コンシューマー・個人向け)のマーケティングを行っていたが、発売後すぐにB向けの施策を発表した。ロボホンのような明確なC向けプロダクトであっても、法人での活用は無視できないのが現状だ。
ここで、いくつか、B向けでロボットたちが使われている事例を紹介したい。
アクトロイド、Tapiaほか – 「変なホテル」「変なレストラン」での事例
長崎のハウステンボスの「変なホテル」「変なレストラン」では多くのロボットが働いている。こういう形で、法人がロボットを運用し、コンシューマー向けのサービスを提供する形態は、ひとつの成功パターンと言える。
代表例は、ホテルのフロントで受付業務をするアクトロイド(ココロ)。その横には、同じくココロの恐竜ロボも居る。
タピア(MJI)は、レストランの各テーブルで、入退店管理などのお客向けのコミュニケーションを担当している。おそらく、この変なレストランのために、カスタマイズを施していると思われる。
Pepper、PALRO、 Sota、OriHime、うなずきかぼちゃん – 医療・介護施設での事例
ロボットを活用した介護施設の事例は多く発表されている。導入されているパターンは大きく分けて3つある。
1.ロボットを活用したレクリエーション
PALROの事例が代表的。体操や会話を施設利用者と一緒に行うといった活用がされている。施設のスタッフの業務軽減になるというメリットがあるのだろう。
2.ロボットを使ったテレプレゼンス
テレプレゼンスでの活用は、オリヒメ(オリィ研究所)の事例が代表的。自宅などにこのオリヒメを設置し、長期入院患者がオリヒメを通じて家族とコミュニケーションを行うというもの。ロボットが、アバター的な役割をすることで、コミュニケーションが円滑になるという。
3.セラピー効果
こちらは、ロボットに触れることで、癒し効果があるというもの。直近では、「いっしょに笑おう!うなずきかぼちゃん」が、その例になる。
過去には、パロ(産総研)が有名。パロは「世界で最もセラピー効果があるロボット」としてギネスでも認定されている。
Pepper、Sota – インバウンド対応
商品説明などを多言語対応で行うアプローチ。今の所、Pepperの事例が多い。Pepperにおいては、最近になって各種B向けのパッケージロボアプリも増えて来ている。その中にも、インバウンド対応アプリが登場し始めている。
このようなものを使えば、簡単に訪日外国人対応が行える。2020年までは、インバウンドは増加の一途であろう。その対策としても、ロボットは注目される。
法人向け活用が盛り上がる理由
他にも、多くの事例が生まれはじめ、徐々にではあるが、ロボットで仕事ができる場面が定着しつつある。この「場」を探して、最適化していく作業がここ数年のB向けのロボットビジネスの肝になるであろう。
では、B向けでの活用のほうが、活発化してきているのはなぜだろうか?
そこには、2つの大きな理由がある。理由の1つ目は価格、2つ目は運用面である。
まだまだ、ロボットは高いし、よく壊れる。結果、運用が難しい。どこに原因があるかを、強引に一つで言うと、それは「サーボモーター」だ。
一部を除いて、多くのロボットは、このサーボモーターと呼ばれる動力が使われている。それも、1つや2つじゃない。Pepperの場合だと、20個も使われている。
ロボホンを分解された記事によると、ロボホンの部材費の60%超がこのサーボモーターになっている。これが値下がりしないと、安価なロボットは作ることができないということでもある。
また、サーボモーターがロボットの性能の主因になっていると言っても過言でない。小型化できるのも、動きが滑らかなのも、力強いのも、音が静かなのも、このサーボ―モーターが成長しないと実現できない。
高くて、壊れやすく、運用が難しい。ゆえに、家庭ではまだ使われにくい。そこで、まずはB向けから市場が立ち上がってきたということになる。
日本を取り巻く、社会環境は俄然思わしくない。少子化に高齢化、そこからの、労働者不足は改善の兆しは見えていない。
そこに、ロボットがひとつのソリューションとして、発展することは社会からの期待であるとも言える。
Pepperの発表時に、それらを解決できる「鉄腕アトム」的なヒーロー登場を期待した人も多いのではなかろうか。しかし、Pepperが劇的に何かを解決した話はまだ聞こえてこない。ほかのロボットも同様だ。
これから、数年におけるB向けロボットは、
2.正しいロボット選択
3.正しいロボットの設置
4.正しい運用
の4つが必要だ。
この答えをいかに多く見つけられるかが、B向けのロボットビジネスのすべてだと言えよう。
次回連載では、ロボットを活用した「模範事例集」を紹介していく。
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羽田 卓生1998年にソフトバンク入社後、メディアビジネスや通信ビジネスに主に従事。2013年のアスラテックの立ち上げ時より同社に参画。現在、事業開発部門の責任者を務める。任意団体ロボットパイオニアフォーラムジャパン代表幹事。