
パナソニック コネクト株式会社は、製造業や物流分野向けに「ロボット現場導入サービス」の提供を、2025年6月30日より開始すると発表した。
また、複数のロボットメーカーや機種に関わらず、同一の操作感で制御できる「ロボット制御プラットフォーム(PF)」を2025年10月からリリース。これをエコシステム化していき、製造・物流現場に業務用ロボットの普及を進めていきたい考えだ(ROS 2 に対応したロボットが対象)。具体的には既に12社との連携を構築しているとして、ラピュタロボティクスをはじめとして連携パートナーを発表した。
パナソニック コネクトは、6月30日に報道関係者向けに説明会を開催し、複数のロボット活用システムのデモを公開した。
1.ラピュタロボティクス株式会社
倉庫における共同ソリューション開発 戦略パートナー
2.株式会社SmartOne
本PF・協働ロボット等をシステムインテグレーションするパートナー
3.株式会社T-ROBO
本PF・協働ロボット等をシステムインテグレーションするパートナー
4.オリックス・レンテック株式会社
本PFと繋がる機器のレンタル・リース パートナー
5.TechShare株式会社:Dobot Roboticsの代理店
6.ミカサ商事株式会社:ELITEROBOTSの代理店
7.AUBOロボティクス株式会社
本PFと接続動作確認済みの協働ロボットメーカー
8.Dobot Japan株式会社
本PFと接続動作確認済みの協働ロボットメーカー
9.Elite Robot Japan株式会社
本PFと接続動作確認済みの協働ロボットメーカー
10.ファナック株式会社
本PFと接続動作確認済みの協働ロボットメーカー
11.FAIR Innovation (Suzhou) Robot Systems Co., Ltd.
本PFと接続動作確認済みの協働ロボットメーカー
12.Universal Robots A/S
本PFと接続動作確認済みの協働ロボットメーカー
異種ロボットも一括制御する「ロボット制御プラットフォーム」のデモを公開
デモでは、製造業や物流における一連の流れ作業をロボットで自動化する例が紹介された。そこでは「Rapyuta ASRS」と人が協働するピッキング、「Rapyuta ASRS」とロボットアーム(ファナック製とユニバーサルロボット製)が協働するピッキング、箱詰めした商品を積換用ロボットアーム(DOBOT)に運ぶ「カチャカ」など、異なるメーカーのロボットの協働作業が紹介された。
■パナソニック コネクト 異なるロボットを一括制御「ロボット制御プラットフォーム」のデモを公開 製造・物流向けソリューション
日本の物流・製造現場の課題
説明会では、パナソニックコネクトの榊原氏と牛島氏が登壇。日本の物流・製造現場での課題と自動化について語った。
榊原氏は「サプライチェーンには計画領域と実行領域がありますが、これから実行領域の方にも注力していく考えです。そして、実行領域にはロボットを活用しての自動化を提案していきます」と語り、実現したい世界観を提示した。
同社は、現場データの統合・全体最適化をグローバルに展開しているクラウドSaaS企業のBlue Yonderを買収して傘下に収めている。Blue Yonderのサービスに、同社が日本独自の情報や現場でセンシングしたデータ、ノウハウを加えることで、高精度なプラットフォームとして提供するとしている。そのためにはAIやデジタルツイン、シミュレーションなどのICT技術も駆使する戦略を「オートノマス・サプライ・マネジメント」と呼ぶと語った。
ロボットの導入をはばむ課題
続いて登壇した牛島氏は、今後は更に厳しくなる「労働力不足」をあげ、現場の自動化ニーズが急速に高まっているとした。一方で自動化・ロボット導入の障壁が高く、日本ではなかなかロボット導入が進まない現状がある。
その理由は、従来のロボット導入には専門のスキルを持つロボットSIerなど専門業者が不可欠という状況があり、企画から現場導入まで、最低でも1~2か月を要し、導入企業側にも、それを支援するロボットSIer側にも負担が大きいという本質的な課題をあげた。
企業がロボットを導入する際には「知見の不足」「人材不足」「コスト不透明性」などの課題があることをあげた。一方でSIer側も、案件が常に複雑で非標準的なために数をこなせず、エンジニア不足も深刻化している。
これらの導入障壁を下げるためにオープンな「ロボット制御プラットフォーム」を新たに開発し、推進していく。
「ロボット制御プラットフォーム」の特徴
「ロボット制御プラットフォーム」の特徴は「複数のロボット事業者・マルチメーカー対応」「ビジュアルプログラミング」「標準設定のテンプレート」の提供。非エンジニアや初心者でも簡単にロボットを制御するための設定が可能となる。
ロボットマルチメーカー対応
従来から、ロボットの導入には各種設定やティーチング(動作の学習)が必要で、それらはメーカーごとに異なり、エンジニアや現場の担当者で入念におこなう必要があった。「ロボット制御プラットフォーム」では、メーカーごとの違いを吸収し、例えばティーチングにおいても、各社独特な制御デバイス(ティーチングペンダント)が不要で、メーカーや機種にかかわらず、パソコンやタブレット操作でティーチングが可能になる。
ビジュアルプログラミング
教育現場ではロボットに動作を指示するプログラミングは、既にスクラッチ風などのビジュアルプログラミングが主流だが、製造・物流分野のロボットにもビジュアル方式を導入する。これによって、専門のプログラマ(エンジニア)がいなくても、現場の担当者がロボットに作業指示を行うことができるようになる。
標準設定のテンプレート
主要な動作は予めテンプレートが用意されていて、それを活用したり、それを元にわずかな変更でロボットに指示することができるようにした。
■パナソニック コネクト、製造・物流の自動化ソリューション「ロボット制御プラットフォーム」の説明とデモを公開
生成AIによる自動プログラミング
生成AIを活用し、担当者が作業内容を自然言語で指示する自動プログラミング機能も開発中だ。
中小企業の小規模導入が主なターゲット
なお、「ロボット制御プラットフォーム」は超巨大なスマート工場やスマート倉庫ではなく、中小企業の小規模導入を主なターゲットとし、既にパナソニックの6拠点の工場をはじめとして複数の工場で活用が進んでいる、とした。また、具体的な事例として、パナソニックのノートパソコンに、Intelのシールを貼付する作業をロボットで自動化していることを紹介した。
同社内での導入効果を実例として紹介。「ロボット制御プラットフォーム」と「工程自動化支援サービス」によって、ロボット導入工数を約50%削減でき、企画から実稼働までのリードタイムを半減。現場の自動化を加速していくと説明した。
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神崎 洋治
神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。