ロボットに「人権」を与えるべきなのか? その時に考えなければならないことは?
以前、セックスロボットと結婚できる時代になる?・・・学者はロボットとの結婚が合法になると予測という記事を書いた。この件、あくまで海外かつ将来の議論。もちろん日本の現在の法解釈では、そもそもロボットは自然人でも法人でもなく、契約行為の主体となりえない、だから現在日本ではロボットは法律上結婚はできない。
ということで、今回はロボットの「人権」というテーマを少し掘り下げたい。
ロボットの人権
Forbesが、欧州議会がロボットに関する法律問題を検討しはじめたと報じた。
欧州議会がロボットの法的責任を検討
現在、ロボット工学の進化とAI技術の進化に伴い、雇用市場におけるロボットに注目が集まっている。そんな中、欧州議会の法務委員会が、ロボットの権利と義務、人権を与える必要性、ロボットの最低賃金、ロボットと人工知能に関する法体系の見直しの必要性、ロボットによる損害をどうとらえるかなどの議題についてレポートをまとめ、これに関する立法案を提出したという。
世界でもっとも強力な権限を持つ立法機関のひとつといわれる欧州議会でこんな議論が行われていることがまず驚きだ。
ロボットの権利と義務
本当にロボットは人としての責任能力があるのだろうか。アルトワ大学の研究者、Nathalie Nevejansは「意識、感情、思考、または自分の意志を欠いた単なる機械は自主的な法的主体となりえるだろうか。科学的、法的、さらには倫理的な観点から、現時点では不可能だろう。」と語る。
そもそもロボットを操作する人間が裏にいるのであれば、ロボットに法的な立場を与える意味はないというわけだ。しかし、将来的にロボットが自律的に動くようになった時にはどうなるのだろうか? 意識を持ったロボットが起こした損害を、オーナーの人間が責任を取る必要があるのだろうか? もしくはロボットが責任をとるべきなのだろうか?
また、ロボットの責任の議論とともに、ロボットの権利も考えられる。ロボットが休暇や給料を要求するこになったときに、人間はどうすればいいのだろうか?
Nathalie Nevejansは付け加えた。「ロボットを人間と同じカテゴリーとして扱うことは、その境界線をぼかすことになる。ロボットの地位を上げることは、逆に人間の地位を落とすことになりかねない。」
SF作家アイザック・アシモフの「ロボット工学三原則」は有名だが、もはや現実はそれを超えたルールを必要としてきているとも言える。
ロボットと人間の違い
欧州会議の議員、Mady Delvauxは「ロボットは共感を示すことができます。 しかし、ロボットは共感を感じることができません。いずれ強さ、知性、順応性、寿命などあらゆる領域で人間はロボットよりも弱い存在になってしまうでしょう。共感を感じられるのは人間だけの特性であり、それを大切にする必要があります。」と語る。
見た目は人間そっくりなロボットが現れても不思議のない近未来、人間とロボットの違いを考えさせられるコメントだ。
欧州議会が出す最終的な結論は、分かり次第お伝えしたい。
ロボットの人権、自動運転車が事故を起こしたときの責任の所在など、法体系と現実のずれがだいぶ目立ってきているのでこのあたりで諸々見直すのはいいタイミングだとは思います。そして日本の法律はどうなるのかな・・・。
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中橋 義博1970年生まれ。中央大学法学部法律学科卒。大学時代、月刊ASCII編集部でテクニカルライターとして働く。大学卒業後、国内生命保険会社本社において約6年間、保険支払業務システムの企画を担当。その後、ヤフー株式会社で約3年間、PCの検索サービス、モバイルディレクトリ検索サービスの立ち上げに携わる。同社退社後、オーバーチュア株式会社にてサービス立ち上げ前から1年半、サーチリスティングのエディトリアル、コンテントマッチ業務を担当する。2004年に世界初のモバイルリスティングを開始したサーチテリア株式会社を創業、同社代表取締役社長に就任。2011年にサーチテリア株式会社をGMOアドパートナーズ株式会社へ売却。GMOサーチテリア株式会社代表取締役社長、GMOモバイル株式会社取締役を歴任。2014年ロボットスタート株式会社を設立し、現在同社代表取締役社長。著書にダイヤモンド社「モバイルSEM―ケータイ・ビジネスの最先端マーケティング手法」がある。