【編集長コラム】第1回 コミュニケーションロボットに必要なのは「世界観」である

2016年、新年明けましておめでとうござます。

昨年は大変お世話になりました。ロボットスタートは会社としても1周年を迎え、ロボットライブラリやロボスタのリリースをおこなうなど、とても濃い一年間となりました。今年はさらにロボット業界を盛り上げていけるよう、編集部一同邁進していきたいと思います。2016年もどうぞよろしくお願い致します。

さて、今年から編集長コラムということで、ロボット業界で日々感じていることなどを不定期に書かせて頂きます。


コミュニケーションロボットに必要なものとは

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ここのところロボットを見る機会も多くなり、私なりに今後売れていくであろうロボットと売れなさそうなロボットの違いについて考えたりします。

売れるロボットと、売れないロボット。

売れたと判断する基準は難しいところですが、二足歩行ロボットで世界一売れたと言われているRobi(ロビ)を「売れたロボット」と呼ぶことに異論はないでしょう。デアゴスティーニから販売されたこれまでのラインナップの中でも最も売れたと言われています。


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では、Robiはなぜ売れたのでしょうか。様々な理由がある中で、今回は「世界観」というワードに注目してみました。

ロビの開発者であるロボットクリエイターの高橋智隆さんが大切にしたこと、それはロビの世界観でした。ロビは年齢だけでなく、どんな男の子なのかというキャラクターをきちんと作り上げています。そしてそのキャラクターというルールに忠実な言葉をしゃべります。

きちんと作り上げられたロビのキャラクターは、ロビユーザーに愛され、後にロビの関連グッズが多数販売されることになります。代表例がタカラトミーから販売されたロビジュニアです。ロビジュニアはロビの2歳昔の設定で、ロビよりも幼い顔立ちを持ち、少し幼い声で話します。

以前タカラトミーのロビジュニア担当者の方に開発秘話を伺った際、エピソードの端々から「作り上げた世界観を壊さない」という高橋智隆さんのこだわりを感じることができました。

例えば、タカラトミーから高橋さんとデアゴスティーニに提案した最初の企画書では、ロビジュニアはロビの弟という設定だったそうです。タカラトミーとしてはロビとロビジュニアが会話をするという機能を付けたかったのです。しかしロビの弟と設定をすると、どうしてもそれまでの世界観と合わない部分が出てきてしまいます。そこで高橋さんからロビの昔の設定でどうかと申し出があり、それが採用されて2歳昔のロビとしてのロビジュニアが生まれました。そして、2歳昔のロビと今のロビが会話をすることはおかしいということで、ロビとロビジュニアが会話をするという機能は白紙に戻ったのです。


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ロビジュニアの会話内容を決める際のエピソードからも、高橋さんの世界観へのこだわりが感じられます。ロビジュニアは1,000フレーズの会話をすることができる、ロビ以上に会話に特化したロボットです。ロビよりたくさんのフレーズを作る必要があったため、タカラトミー側で様々なフレーズを書いて高橋さんとデアゴスティーニに提出しました。少し奇をてらった言葉などもあった中で、高橋さんがしたアドバイスは「ロボットは会話するだけで既に真新しさがあるので、普通のことを喋らせるだけで良い。あと世界観にそぐわないことは話さないほうが良いと思います。」といった内容でした。例えば、ロビジュニアが「今日のハンバーグは美味しかったね」などと言うと、明らかに嘘になり、それは世界観を壊してしまうことになる。それは良くない、というアドバイスでした。

私はこの「世界観を壊してしまうことになる。それは良くない」というフレーズこそが、これからのコミュニケーションロボットに求められることだと感じています。

コミュニケーションロボットと家電やスマホの一番の違いは、人がそこに人格(キャラクター)を感じることだと思います。この人格を感じるという点はコミュニケーションロボットと深く接したことがある方なら理解が容易いでしょう。

人がそこに人格を感じるということは、その人格(キャラクター)に沿わない言葉を聞くと違和感を感じるということに繋がります。だからこそ、その人格のバックグラウンドとなる世界観を大切に作り上げていかなければいけないのです。ロビが「おれのオヤジは…」などと言ってはいけないわけです。


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しかしそこを突き詰めていくと別の問題が出てきます。ロビもロビジュニアもしゃべるフレーズが決まっていたから良いですが、PepperやSotaといったロボットは会話の内容をアプリ開発者が決めることができてしまいます。では、このようなロボットはどうすれば良いのでしょうか?

ハードウェアメーカーが事前に全てのフレーズを決めておくべきかというと、私はそうは思いません。ロボアプリ開発者が参入できる環境を整え、ロボアプリを充実させることでユーザーの満足度を上げるべきだという考え方は間違っていないはずです。会話の内容が毎日変わらなければ、10年後も会話をすることはほぼあり得ません。しかしロボアプリが毎日更新されていくことで、ユーザーにロボットとの新しい体験を与えていくことができるのです。

だからこそ、ハードウェアメーカーには「ロボアプリをアプリデベロッパーに作ってもらいつつ、世界観を壊さないための準備」が求められています。

「世界観を壊さないための準備」とは何か。それは徹底した世界観を事前に作り上げることだと私は思います。今仮にドラえもんが目の前にいて、会話の内容を操れるとしても、きっと一人称は「ぼく」を使うでしょう。「俺の名前はドラえもん」と喋らせる人も「おいらはネズミが好きだ」と会話させる人もほとんどいないはずです。それはドラえもんというストーリーに触れているため、ドラえもんの普段の口調から考え方まで理解しているからです。

コミュニケーションロボットに求められていることは、しゃべるフレーズを制限することではなくて、世界観をきちんと作り上げることです。そのロボットの基礎となる設定を隅々まで固めて、それを事前に公開して、その世界観をなるべく壊さないようにとアプリ開発者に求めていく必要があるのです。

Pepperも世界観を大切にしてきました。Pepperの口調については、デベロッパーの間で、ある程度共通の口調があるかもしれません。ただ、それでもまだまだ設定が甘いのではないかと感じます。開発者モデルと、一般販売モデルで一人称が違ってはいけないのです。

これから出てくるコミュニケーションロボットに期待したいことは、機能の前に、まずは設定をきちんと作り上げること、そしてそれを目に見える形でアプリ開発者に浸透させていくことです。一人称を決め、年齢・性別を決め、生まれた経緯や誕生日を決め、好きなテレビ番組や嫌いな動物といったかなり細かい部分まで一つ一つの設定にこだわり、独自の世界観を作り上げることで、エンドユーザーがプロレスをしながらもその世界観を楽しんでくれるのではないかと私は思います。

みんながアトムのことを好きなのは、強くて空が飛べるからではなく、正義感の強い優しいロボットだからなのではないでしょうか。


(ロビジュニアの開発秘話の詳細は、1月5日にロビクラブウェブマガジンで公開予定のインタビュー記事をご覧ください)

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望月 亮輔
望月 亮輔

1988年生まれ、静岡県出身。ロボスタ編集長・ロボットスタート株式会社取締役。2014年12月、ロボスタの前身であるロボット情報WEBマガジン「ロボットドットインフォ」を立ち上げ、翌2015年4月ロボットドットインフォ株式会社として法人化。その後、ロボットスタートに事業を売却し、同社内にて新たなロボットメディアの立ち上げに加わる。

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