【MM総研調査】企業のコミュニケーションロボットの導入目的は「店舗での接客」が第1位。

MM総研(東京都・港区、所長・中島 洋)はコミュニケーションロボットの企業需要動向調査に関する調査結果を発表した。本リリースにおける「コミュニケーションロボット」とは、日常生活において人間とコミュニケーションすることにより、話し相手や情報提供などのサービスを行うロボットを指し、工場などで特定の動作を繰り返す産業用ロボットは含まない。本調査は、経営企画室など経営に関与している部署および情報システム部門を対象に実施している。官公庁は対象に含めていない。



企業のコミュニケーションロボットの認知度は60.7%

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出典:(株) MM総研 [ 東京・港 ]

回答企業に対して、コミュニケーションロボットの認知度について質問した結果、「どのようなことができるか機能等も含めて知っている」が 13.6%、「言葉を聞いたことがあるが、具体的な機能までは知らない」が 47.1%でこれらを合計した 60.7%の企業が程度に差はあるが認知している。一方で「言葉も知らず、このアンケートで初めて知った」は39.3%だった。

次に、個別のコミュニケーションロボットを知っているかどうか複数回答で質問したところ、最も認知度が高かったコミュニケーションロボットはソフトバンクロボティクスが企画・開発を行っている「Pepper」(ペッパー)で、認知度は 63.4%であった。次に、ロボガレージが企画・開発した「Robi」(ロビ)が 17.8%で続き、タカラトミーが企画・開発している「Robi jr.」(ロビジュニア)の 6.6%の順になった。いずれのコミュニケーションロボットについても「認知していない」という企業は 29.2%であり、回答企業のうち、70.8%はいずれかのコミュニケーションロボットを認知しているという結果になった。

Pepperの認知度(63.4%)がコミュニケーションロボットの認知度(60.7%)を超えており、コミュニケーションロボットという概念は知らなくても Pepper は知っているという状況になっている。認知度で Pepperが他社製品を大きく引き離しており、コミュニケーションロボット市場はソフトバンクロボティクスの一強体制になっていることを示している。

さらに、コミュニケーションロボットの認知経路について複数回答で質問したところ、最も利用されている認知経路は、テレビ番組で 75.6%、次がテレビ CM で 70.5%、3番目が新聞記事で25.4%であった。

コミュニケーションロボットの導入意向について質問したところ、「導入している」が2.4%、「導入を検討している(導入のためにメーカーと打合せを実施している等)」が 4.2%、「導入を検討したが断念した(メーカーへの問い合わせを実施したことがある等)」が 3.5%、「特に必要がないため導入検討はしていない」が 89.9%となり、10.1%の企業(導入を断念した企業 3.5%を含む)が導入に前向きである一方で、全体の導入意向は高くないことが明らかになった。

前述の「導入している」、「導入を検討している(導入のためにメーカーと打合せを実施している等)」、「導入を検討したが断念した(メーカーへの問い合わせを実施したことがある等)」と回答した回答企業に対して、コミュニケーションロボットの活用方法(予定を含む)について質問したところ、最も多かった活用方法は「店舗に設置して接客対応に活用」で 32.7%、次が「店舗に設置してマーケティングツールとして活用」で 26.0%、3 番目が「イベント・展示会の会場等で来場者対応に活用」で 21.2%であった。

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出典:(株) MM総研 [ 東京・港 ]

活用方法を産業別に分解したところ、流通業(卸売業、小売業、運輸業を含む)、金融業、製造業などの業種では店舗に設置して接客対応やマーケティングに活用している傾向があり、一方で医療・介護業や情報通信業ではイベント・展示会等で活用する傾向があることが明らかになった。



導入を阻害している要因は、活用用途の不明確さや導入コストの高さ

「導入を検討していない」と回答した回答企業も含め、全回答企業に対してどのようなことが導入の阻害要因になるかについて質問したところ、最も多かった回答は「業務上、活用する余地がない」の 30.6%、次が「導入コスト」の 20.4%、3 番目が「投資対効果が不明確」の 19.9%という順になった。

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出典:(株) MM総研 [ 東京・港 ]

「業務上、活用する余地がない」という状況が変わるかどうかについては、今後、アプリケーション開発などが可能な拡張性の高いコミュニケーションロボットを市場に投入することで業務用アプリケーションの開発が進めば、活用余地が拡大する余地があるだろう。「投資対効果が不明確」という課題に対しては、コミュニケーションロボットの導入事例を増やして投資対効果を測定する機会を増やし効果を示すという方法が考えられる。活用が進めば、量産効果により販売価格が低下するということもありえるだろう。阻害要因を産業別に分解したところ、「業務上、活用の余地がない」という回答は、多くの産業で 30%前後を示したが、医療・介護業、教育産業では 20%以下に収まっており、これらの産業においては他の産業と比較して活用の余地があるということが窺える。「導入コスト」については特に金融業が課題として認識している傾向がある一方で、「ランニングコスト」については、医療・介護業が課題として認識している傾向がある。今後、普及を進めるにあたって、産業ごとに適した提供形態をとることも必要になるだろう。



20.3%の企業がコミュニケーションロボット産業への参入意向を示す

今後のコミュニケーションロボット事業への参入意向について単一回答で質問したところ、20.3%の企業がコミュニケーションロボットに関するいずれかの分野に対して参入意向がある(もしくは参入済みである)と回答している。その一方で、79.7%の企業が「いずれにも参入予定及び興味はない」と回答しており、約 2 割の企業が今後、コミュニケーションロボット産業への参入を考えていることが明らかになった。

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出典:(株) MM総研 [ 東京・港 ]

参入意向がある回答企業に対して興味を持っている参入分野を複数回答で質問したところ、最も多かった回答が「ソフトウェア開発(OS、ミドルウェア等)へ参入を予定、または興味がある」で 29.0%、次が「コミュニケーションロボットを活用したサービス事業(コンサルティングを含む)に参入を予定、または興味がある」で25.7%、3番目が「ソフトウェア開発(音声認識、音声合成、画像認識等)に参入を予定、または興味がある」で25.2%となった。

産業別(情報通信業、製造業、その他産業)で参入意向を比較すると、情報通信業が 30.5%、製造業が24.9%、その他産業が 18.3%となり、情報通信業が最も強い参入意向を示している。



拡張性が活用拡大のカギ

本調査を通じて、ソフトバンクロボティクスの Pepperの認知度が 63.4%という結果を示したことから、市場がソフトバンクロボティクスの一強体制になりつつあることが判明した。今後、各社は自社製品の PR 戦略に力を入れることが必要になるだろう。また、法人の参入意向が 20.3%であり、ビジネスチャンスとしてのコミュニケーションロボット産業への期待の高さが窺える。

今後は、アプリケーション開発などを行える拡張性の高いコミュニケーションロボットを社会の様々なシーンに配置することで、それまでコミュニケーションロボットと接点のなかった人々からのアイデアを募り、そのアイデアをアプリケーションという形にしてコミュニケーションロボットに実装し、活用余地を広げていくといった工夫が求められるだろう。

調査方法 WEBアンケート調査
回答件数 1,033件
調査対象 従業員数1名以上の事業会社及びその他法人格(医療・福祉法人、学校法人など) 
※官公庁は調査対象に含んでいない。
従業員数属性 1,000名以上20.8%、500名以上1,000名未満6.5%、100名以上500名未満17.8%、10名以上100名未満32.9%、1名以上10名未満21.9%
業種別属性 流通業38.3%、製造業16.4%、教育産業5.1%、金融業4.3%、医療・介護業6.6%、建設業8.4%、情報通信業7.9%、その他産業13.0%
調査時期 2015年12月

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ロボスタ編集部

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