11月16-18日に開催していたET/IoT総合技術展、Microsoftブースで開催されていたIoT開発体験ラボに行ってきました。
まずはイベントの紹介から。
日時:11月16日(水)-18日(金)
会場:パシフィコ横浜
URL:http://www.jasa.or.jp/expo/
ETとはEmbeded Technology=組み込みに関する技術です。今年からは、時代の要請を受け、IoT分野での活用にフォーカスしたIoT Technology 2016を同時開催することで多分野とのシナジーを生み出そうとしているとのこと。
クラウドからデバイス、センサー、開発環境周りまで、非常に多様な要素技術に関する展示がありました。
そんな中で特徴的な展示をしていたのはMicrosoftのブース。
デバイス側からクラウドサービスまで、各レイヤーの様々なプロダクトを一社のスペースの中で幅広く展示し、ワークショップまで実施していました。今年のバズワード『IoT』を理解する、という目的で来られた方も多かったと思いますが、このブースに来れば概要をつかむことできたのではないでしょうか。
そんな多様な展示がされていたブースの中でも特に目立っていたのが、ロボットを使った二つのコンテンツでした。
Windows+Azure IoTを連携させてコーヒーを入れてくれるコーヒーバリスタロボットとPALMIによるIoT導入ワークショップです。
ロボットアームによるバリスタデモ
ET展的には、一般的なコーヒーメーカーやエスプレッソマシンに様々なセンサーを取り付けることでも実現できそうなソリューションですが、あえてロボットアームでコーヒーを
淹れています。
耐滅菌性を追求しているため表面処理はポリッシュ仕上げ。ごみがたまりにくいよう曲面を多用したデザインが異彩を放っている。
ただし、今回の展示でフィーチャーされていたのは、ロボット本体ではなく、Azureと連携したシステム。
Windowsベースで開発されたVS-S2のコントローラーが、ゲートウェイを通してクラウドへ接続されます。この接続部分は、Azure IoT Hubが担当します。プラットホームやプロトコルの違いを吸収し、セキュアで信頼性の高い接続を保障してくれるので、様々なデバイスをクラウドにつなぐ敷居が大きく下がりそうです。
ロボットやセンサーからクラウドに上げられたデータはイベントとして処理されStream Analyticsでリアルタイム分析されます。
Stream Analyticsの特徴の一つは拡張性と開発効率の高さだそうなので、今回のデバイス以外にも、カメラによる表情認識や、人感センサーによる滞留時間の計測、Azure MLなどを組み合わせて、「おいしいコーヒー」を探求するシステムを開発するなんていうこともできそうです。
また、それらのデータを人間に提示する際にはPower BIのダッシュボードで直感的に視覚化されます。簡単に様々な形式で表示できるので、人間ならではの洞察を促すことができそうですね。
「今後発達していくロボットやAIは『非人間的な作業や労働』を担当し、人間は『人間らしい作業』をするのだ」、という未来予想図を耳にすることはありますが、現在でも、オフィスなどで要求される「お茶くみ」はエスプレッソマシンがこなし、自分好みのコーヒーを淹れる作業は「趣味」の一つとして依然として残っています。
クラウドやロボットが、趣味性の象徴である「茶道具」でコーヒーを淹れる姿は、従来の「マシン」とは違う形で人と共存していく姿を想像させてくれますね。
IoT開発体験ラボ
さて、バリスタロボのデモの中で使われていたシステムのアピールポイントの一つが、導入に当たっての開発コストが非常に低く抑えられる、という点だったのですが、それを実感できたのがワークショップエリアで開催されていた「IoT開発体験ラボ」です。
ワークショップの内容はQualcomm Snapdragonを積むシングルボードコンピュータ「Dragon Board」を使ってSeeed Studioの96ボードにつないだセンサーから得たデータをAzure IoT HubやStream Analyticsにつなぎ、Power BIで表示する、というもの。
30分という、ぎゅっと濃縮されたワークショップです。
いただいた資料のスライドを読ませていただいたのですが、、時間の制約があるのでAzure IoT HubやStream Analyticsの作成方法はざっとした紹介でしたが、非常に簡単にシステム構築ができていました。
IoTサービスの中で導入、環境整備にまつわるコストが大きく減らせるので、競争力につながる開発へリソースを集中できそうですね。
さて、このワークショップの講師を務めるのはMicrosoftのエヴァンジェリストでIoT系コミュニティ、IoT Argyanの主要人物、太田寛さん、ではなく、DMM.Robotから来たPalmi。
今回は会場のWifi環境が悪かったため、実施はしなかったそうなのですが、パワーポイントのスライドに合わせてノートに記載してある説明のとおりにワークショップを進行していってくれるそうです。
そのため、スタッフはワークショップ会場のあちこちで発生するトラブルへの対処に集中できるとのことで、非常に運営が楽になったとのこと。
どのくらい楽になったのかというと、「de:codeでは、1日半で50回以上のワークショップを実施できた」、とのこと。これは相当リソースの節約ができる体制のようですね。
司会をロボットにしたワークショップの副産物とは
さて、この「スクリプトどおりに進行できるものはロボットにまかせて、人間は非定型な業務に専念する」という構図は、介護施設のレクリエーションなどで使われるロボットでもみたものですが、「ワークショップならではかも」と太田さんにお聞きできたのはなかなか面白い裏話でした。
「技術者はロボットを見るとしゃべらせたくなってしまうんだ」とは太田さんの談。
先ほどワークショップの内容について説明をさせていただきましたが、非常に簡単にまとめることができました。それは「Palmiが読み上げる内容がすべてノートに記載されていた」のが大きな理由なのですが、説明が本当に細かい。
行けなかった勉強会のSlideShareを見つけても、「これだけじゃわからないな」と思った経験、ありますよね?
その対極だと思ってください。
話す内容がすべて書いてあるノート部分に触発されて、資料に「つい付け加えたたくなってしまう一言」を引き出してしまう、というのがどうやらロボットの持つ魔力のようです。
ワークショップのスクリプト制作者が第三者的な視点で話者や参加者を見れるので、資料や説明のブラッシュアップの効率も非常に高そうですね。
また、資料に対するノウハウが文章化されることで、知識の共有、蓄積のスピードや、トレーナー育成の効率が飛躍的に上がった、とのお話もお聞きできました。
今までロボットにかかわってきていて、ロボットが「いかに奉仕したくなってしまう存在か」は知っていたつもりでしたが、それが回りまわっていつの間にか組織の利益になっている、という仕組みはとても面白かったですね。
よく「それはロボットじゃないとできないの?」という質問を聞きますが、このような副産物の豊富さがロボットの魅力の一つなのかもしれません。
僕はこうと思った
IoTやEmbeded Technologyは、非常に広範な知識が必要とされる分野。なかなか全体像がつかみにくかったので、展示会に行ったもののどうまとめようか正直焦りました。
そんな中でMicrosoftさんのブースでは、モノの展示だけでなく、実態としてのサービスを提供してくれるロボットのデモをしたり、実際にデバイスをつないで動かす体験を提供することで、今まで概念として理解していたものを身近に感じさせようという狙いが非常に強く感じられたのでなんとかまとめられました。
今後IoT業界が成熟していくにつれ、「いかにサービスを使いこなすか」は非常に大きなポイントになるので、そんな中で今回の展示を体験された皆さんが「Azureをうまく使いこなせそう」という感触を持ち帰ってくれれば、エコシステムがさらに強くなっていく気がします。
Microsoftによるワークショップ情報
最後に、Microsoft IoTについての耳寄りな情報が二つ。
こちらのワークショップの拡張版が「Microsoft IoT Day」でも体験できます。東京、大阪で開催されるので、ぜひ下記URLよりご応募してみてください。
また、さらに深く知りたい、というエンジニアの方向けには2016年12月7日に「DragonBoardとWindows 10 IoT Coreで実現するIoT ~コグニティブを活用した画像分析~」が開催されます。
10:00-17:00と一日かけ、カメラで撮影した画像をコグニティブ AI サービスで分析するところまで実施するハンズオンなので、よりディープな使い方が学べますね。
こちらも応募が開始されていますのでぜひご登録を。
なお、これらのイベントなどに使用される、「Dragon Boardと96Boardと周辺機器」は「東京エレクトロンデバイス社様 DragonBoard Azure IoT評価キット」として販売されています。
TEDさんから、Azureの利用を新規にお申し込みされた方には、ワークショップでも使われていた「データ可視化までの手順書」も送付してもらえるので、本格的に開発してみたい方は、ぜひご検討してみてください。