【中国ロボット市場最前線 vol.10】中国における人工知能業界の最新事情

中国の人工知能産業は、人工知能テクノロジーの発展の波に乗って着実に拡大しています。
ロボットは中核部品、運動制御、メカトロニクスなど、長年に渡る比較的ハード寄りの積み重ねが必要ですが、人工知能は計算アルゴリズム、データマイニング、深層学習など、比較的ソフト寄りの面もあり、速いスピードでの乗り越えが可能となります。
中国はこの数年間で、人工知能のトップランナーであるアメリカとも少しずつ差を縮めてきました。これには、テクノロジーの「パクリ」と揶揄する声も聞こえますが、中国人工知能業界の努力というものを軽視してはいけないのではないかと思います。

本稿は、中国人工知能業界の事情を少しでも理解していただくために、一部のプレーヤー及び最近の出来事について紹介したいと思います。ご参考になれば幸いだと思います。




2017年度 人工知能業界のユニコーン

ベンチャーキャピタルデータベースを扱うCBインサイト社(CB Insights)が発表した「The AI 100 2017」リストに、中国の人工知能会社4社が入っています。まずこの4社について紹介したいと思います。



iCarbonX(中国語略称:碳雲知能、日本語略称:アイカーボンクス)

iCarbonX(深セン碳雲知能科技有限公司)は、2015年10月に設立された人工知能専門会社であり、「Manage your life. Digitally.」をスローガンに、ライフビッグデータ、インターネット、人工知能などを生かしてデジタル・ライフ・エコシステムの創出を目指しています。
iCarbonXは、メディカル・ヘルスケア領域のホログラフィックデータをデータマイニング、機械解析技術を生かしてヘルスケア指数の分析と予測サービスを提供しています。各種研究機関、製薬企業、医療機関、病院、診断会社、保険会社、健康管理会社を含む多くの機構と業務提携しています。
2017年1月に主力サービスとして「Caring for Everyone’s Extraordinary Life」をコンセプトに、デジタル・ヘルスケア・マネジメント・プラットフォーム「Meum」が発表されています。

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【出典】iCarbonX社(https://www.icarbonx.com/en/index.html

2016年4月に創業から6カ月で中国ソーシャルサービス大手のTencent社及び投資会社Vcanbio Cell & Gene Engineering CorporationからシリーズAとして10億元の資金調達を実施して、企業評価額が10億ドルを超え、アジアでは史上最速のユニコーン企業となっています。
2016年8月に保険ビッグデータを扱う深セン般若計算機系統股份有限公司を買収し、また9月にイスラエルの人工知能会社Imagu Vision Technologiesを買収し、iCarbonX-Israel人工知能研究開発センターを設立し、更なる戦略的なテクノロジーの増強に乗り出しました。


Rokid(中国語略称:芋頭科技、日本語略称:ロキッド)

Rokid(芋頭科技(杭州)有限公司)は、2014年12月に浙江省杭州に設立された会社です。Rokidは、「Robot+Kid」の造語であり、「知能新生命(The New Being)」をスローガンとして、家庭人工知能(Home A.I.)にフォーカスするベンチャーです。
Rokidは、家庭用サービスロボット主力製品としての付き添い型家庭用ロボット「若琪(Rokid.Alien)」、及び家庭知能娯楽アシスタント「月石(Rokid.Pebble)」をリリースしました。「若琪」は、クールなデザインの上、音声で各種家電をコントロールするとともに、ニュース、天気、カレンダー、百科、音楽などのクラウドサービスと連動しています。「月石」は、音声で会話、音楽流し、家電制御などができるとともに、タクシー、外販、宅急便などのオンラインサービスも利用できます。

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【出典】Rokid社(https://www.rokid.com/w/en/home/

2016年10月に、IDG VenturesなどからシリーズBで5000万ドルを調達しました。
その前にも、Pre-Aの数百万人民元、シリーズAの500万ドルも調達した実績があります。


Mobvoi(中国語略称:出門問問、日本語略称:モブボイ)

Mobvoi(北京羽扇智科技有限公司)は、2014年3月にGoogle元サイエンティストにより設立された人工知能会社であり、音声識別、テキストマイニング、サーチテクノロジーなどの技術を保有しています。
Mobvoiは、いままで、中国語音声で会話できる腕時計オペレーションシステムTicwearを発表し、GPSや3Gをサポートするスマート腕時計Ticwatch 2、車載用魔法ミラーTicmirror、及び車載用スマートアプリなどをリリースしました。最近、銀行カードや交通カードなどで支払いも可能な、NFC搭載の腕時計(Ticwatch 2 NFC)も発売しています。

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創業者は元Google社員であることもあるか、Mobvoiは、Googleからも資金を調達し、今まで少なくとも7500万ドルの調達金額になっています。


UBTech(中国語略称:優必選、日本語略称:ユビテック)

UBTech(深セン市優必選科技有限公司)は、人工知能、人型ロボット、プラットフォームの研究開発企業であり、独自のデジタルサーボを武器に製品のコストパフォーマンスを発揮することにより、企業評価価値は10億ドルを超え、中国ロボット業界のユニコーンと言われています。
製品ラインには、人型ロボットのほか、積み木ロボットなどがあります。積み木ロボットのMeeBotシリーズ及びAnimal Add-Onセットは、Apple Store(実態店舗)にも入っています。
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【出典】UBTech(http://www.en.ubtrobot.com/

上記4社以外にもユニークな人工知能会社が多数存在しています。いくつかを紹介したいと思います。



ユニークな人工知能会社



Baidu(中国語略称:百度、日本語略称:バイドウ)

Baiduは、中国の検索サービス大手として、電子商取引大手のアリババ社(Alibaba)、ソーシャルサービス大手のテンセント社(Tencent)と合わせて、中国インターネット業界のBATと呼ばれています。検索エンジンと言えば、バイドウとなります。
Baiduは、会社の戦略として人工知能を「コアの中のコア」と位置付けており、バイドウの将来を託していると言っても過言ではありません。資金、人材などの面でもこの「コアの中のコア」に注力しています。研究開発では、主に以下の三つのラボを生かして進めています。

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最近、天才的な頭脳を競い合う中国人気バラエティ番組「最強大脳(Super Brain)」で、コンピュータと人間がゲームや識別能力などで競う「人機対戦」が行われ、Baiduの人工知能ロボット「小度」は、中国の最強頭脳と顔・音声認識領域において3回の試合で2勝1分けの成績を収め、話題になっています。


iFlyTek(中国語略称:科大訊飛、日本語略称:アイフライテック)

iFlyTek(科大訊飛股份有限公司)は、1999年12月に安徽省合肥に設立され、2008年に上場した音声技術専門会社であり、中国の音声技術会社と言えばアイフライテックであるというほど知名度が高いです。
iFlyTekは、音声技術や人工知能に関する研究論文を数多く出しており、Blizzard Challenge、CHiME、International Workshop on Spoken Language Translation、NIST TAC Knowledge Base Population Entity Discovery and Linking Trackなどの国際音声大会でも優れた成績を収めており、世界中に注目を集めています。

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【出典】iFlyTek社(http://www.iflytek.com/en/index.html

中国でロボットや人工知能領域の音声処理技術が必要な会社は、最も優れた音声処理を組みたいと考えた場合、ほとんどiFlyTek社と手を組んでいるのです。日本のサインウェーブ社も2016年4月からiFlyTek社との業務提携がスタートしたそうです。


Horizon Robotics(中国語略称:地平線機器人、日本語略称:ホリゾンロボティクス)

Horizon Robotics(北京地平線機器人技術研発有限公司)は、2015年7月にバイドウ深層学習実験室(IDL)の元責任者により設立された人工知能会社で、「モノのブレーンを定義する(define the brain of things)」をスローガンに、組み込み人工知能においてAI Insideを創り出そうとしています。
Horizon Roboticsは、人工知能アルゴリズムを生かしたブレーン・プロセシング・ユニット(BPUs)、システム、ハードウェア・ソフトウェアプラットフォームの研究開発を進めており、世の中のデバイス(自動車、家具、ロボットなど)にセンシング、インターアクション、理解、及び意思決定の知能を付与することを目指しています。
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【出典】Horizon Robotics社(http://www.horizon-robotics.com/index_en.html

Horizon Roboticsは、いままでスマートインテリア向けの「アンダーソン」システム、スマートドライブ向けの「ユーゴー」といったプラットフォームをリリースしました。これらのプラットフォームを利用して各種音声、画像などのアプリを開発することが可能となります。


Megvii(中国語略称:曠視科技、日本語略称:メグビー)

Megvii(北京曠視科技有限公司)は、2011年に設立された機械視覚と人工知能会社であり、「マシンに世界を分かってもらう」をスローガンに、顔識別・画像識別などの技術研究開発にフォーカスしています。顔識別技術は、中国でトップクラスのリーディングカンパニーです。
Megviiは、自社ブランドとしてFace++、Image++、Brain++などのプラットフォームを中心に、画像識別、顔識別、深層学習のクラウドサービスを提供しています。アリババ社の決済サービスAlipayではFace++の技術も利用しています。

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【出典】Megvii社(https://www.megvii.com/about

2016年12月にフォックスコム社などから1億ドルを調達し、設立してからは合わせて1.5億ドルほど調達しました。


Gowild(中国語略称:狗尾草、日本語略称:ゴーワイルド)

Gowild(深セン狗尾草智能科技有限公司)は、2013年に設立された会社であり、社名通り「Go Wild」をコンセプトとして、人工知能テクノロジーを中心に、ロボットの研究開発にフォーカスしています。
Gowildは、テキスト解析、音声処理、画像処理、データ分析などが強く、製品のデザインにこだわるスタイルです。デザインとテクノロジーを融合して世の中に面白く、クールな製品を創り出そうとしています。いままで独身者や恋人同士で楽しめるソーシャルロボット「公子・小白」、ポケットロボット「公子・小白(青春版)」をリリースしました。今年のバレンタインデーに合わせて、3Dバーチャル美少女「琥珀・虚顔」が発売されます。
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【出典】Gowild社(http://www.gowild.cn/

Gowildは、芸能界とのつながりが強いという特長もあります。中国人気音楽グループ「羽・泉」は、Gowild社に加盟し、投資者であるとともに、製品のプロモーションにも注力しています。特に「羽・泉」は「琥珀・虚顔」と契約して歌を歌ったりしてもらいます。そしてキャラクターとして機能を追加し、学習させ、徐々に育成していく計画です。今後の展開が楽しみです。

いかがでしょうか。中国人工知能業界について少しでもイメージできて、ご理解が深まっていれば幸いだと思います。
人工知能分野では、ベンチャー企業が次々と出てきています。製品もどんどん投入され、競争が加速しているところです。
これからどうなるかは断言できませんが、人工知能のおかげで生活がより便利になり、世界がより面白くなると信じています。

興味があれば、私達にお気軽にご連絡ください。

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Dequan Tang
Dequan Tang

イーパオディング株式会社代表取締役社長、北京璞華機器人(ロボット)情報技術有限公司CEO。東京・北京にてITシステム化、日中間ビジネス、グローバルビジネスコンサルティング業務に十数年間携わり、いま中国でロボットのメディア、展示、販売、研究開発を行うロボット事業、及び「個客」ビジネスの「自由自在」を支援するグローバルリサーチ、コンサルティング、インターネットサービス事業に従事。IT関連の講演・著書多数。 Email:tang_dequan@epaoding.com  微信(Wechat) ID:tomotogether