ソフトバンクグループの自動運転会社「SBドライブ」、沖縄で自動運転バスの試乗会を開催! 車掌は「Pepper」

自動運転技術を研究・開発する先進モビリティと、SBドライブの2社は、「沖縄自動運転コンソーシアム」を形成。内閣府が推進する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「自動走行システム」でバス自動運転実証実験を受託し、2017年3月20日~4月2日の2週間にわたって沖縄県南城市で実証実験を行った。

SBドライブは、ソフトバンクと先進モビリティによって2016年4月に設立された合弁会社で、自動運転技術を活用したスマートモビリティーサービスの事業化を目指している。2017年3月にYahoo! JAPANがSBドライブの第三者割当増資を引き受けて約4.9億円を出資した。

今回の記事では、SBドライブが3月30日に、報道関係者向けに開催した実験車両の試乗会の模様をリポートする。

内閣府は今回の実証実験で実施する内容として、次の三つを挙げている。

・走行ルートにおける自動運転の性能評価(正着制御の精度、車線維持制御の安定性を検証)
・走行状況(速度・位置等)のデータ収集・モニタリング、運行管理などに関するシステム検証
・自動運転技術を使った公共バスの社会受容性調査 等
内閣府のプレスリリースより抜粋)

これを受けて、先進モビリティが独自に開発した実験車両と、SBドライブが設計・開発した遠隔運行監視システムを使用して実証実験が行われた。

試乗会では、まずSBドライブ社長の佐治友基氏と先進モビリティ技術部の安藤孝幸氏が、実証実験の概要と実験車両の仕様について説明を行った。

先進モビリティによると、実験車両は日野自動車製の小型バス「リエッセ」(乗車定員20名、路線バス仕様)をベースに改造したもの。自動走行に必要なLiDAR(レーザーレーダー)やミリ波レーダー、高性能GPSアンテナ、カメラなどのセンサーが取り付けられ、アクセル操作とハンドル操作が自動化されている。また、ディープラーニングによるカメラ映像からの車両認識技術も導入予定で、NVIDIAの「DRIVE PX2」を用いたデモを披露した。


説明会場(海の館・イノー)内のパネル展示

自動運転バスは今回の実証実験のフィールドに選ばれた「あざまサンサンビーチ」の駐車場を出発し、片道約1kmの海沿いの公道を最高時速30kmで往復した。なお、今回の実証実験ではブレーキ操作は運転席に座るドライバーが行った。現行制度上、自動運転の実証実験を公道で行う場合は、必ずドライバーが運転席に座ることが求められている。


実証実験のフィールドに選ばれた「あざまサンサンビーチ」




試乗者の98%が満足


今回の実証実験では、自動運転技術を使った公共バスの社会受容性調査も行われた。SBドライブによると、3月29日までに計10回のデモ走行を実施し、約60人が実験車両に試乗した。試乗者に対して実施したアンケートによると、98%がデモ内容に「満足した」と回答したという。また、3月24~25日に試乗した交通事業者関係者らに対して実施したモニター調査によると、試乗前は半数以上が自動運転に不安を示していたが、試乗後は逆転し、大半が安心と回答したという。



Pepperが”車掌”に


実験車両に乗って驚いたことは、Pepperが”車掌”として乗車していたことだ。制帽と制服に身を包んだPepperが「はいさーい」と沖縄弁で話し掛け、報道陣をなごませた。

さらに実験車両と連携し、発進・停止時や車線変更時にも「手すりにおつかまりくださーい」と、安全を呼び掛けた。転回時などに車体が揺れると、Pepperが体を傾ける――車両の挙動に合わせて、うまくバランスを取るPepperの姿勢制御機能を、思わぬ形で見ることになった。

SBドライブの広報担当者によると「SBドライブは、レベル4(運転手が介在しない完全自動運転)での実用化を目指している。ただし、運転手がいないとホスピタリティーの低下が避けられない」と指摘し、「車内安全のためには乗客との双方向のコミュニケーションが不可欠になる」と続けた。

今回は実証実験ということでPepperが”乗務”していたが、自動運転で走る公共バスが実用化される時は人型ロボットではないにせよ、何らかの車内を見守るシステムが必要になる。今回の試乗会では撮影が許可されなかったが、SBドライブはタブレットで「発進」「緊急停止」などの操作や車内カメラの映像をリアルタイムに確認できる遠隔運行監視システムの試作品を開発し、この実証実験で検証した。



わずか数センチでバス停に停車する正着制御技術


今回の実証実験で行われた自動運転の性能評価の一つが「正着(せいちゃく)制御」だ。テストコースには往路・復路各1カ所、計2カ所に仮設のバス停があった。報道陣を乗せた実験車両は、最前部(バンパー中央)に取り付けてあるLiDARで180度センシングし、縁石との距離を測りながら幅寄せする。そして、Pepperが「ピターっと着けますよ~」と話すと徐々に左に寄り始め、縁石にぴったりと近づけて停車。車両と縁石の隙間は、わずか4~7cm程度だ。

先進モビリティの技術担当者によると、車いすの利用者が安全に乗降できる隙間はノンステップバスであれば6cm程度以下だが、近づけすぎると縁石やバス停設備と接触するリスクがあり、安全運行が可能なように今後も制御精度を高めていくという。



商用化時には「1,000万円~1,500万円」程度に

沖縄でのバス自動運転実証実験を実施した内閣府によると、今回の実証実験は第1ステップ。2017年6月に沖縄県の離島の公道で、通常の交通環境における公共バスとしての適用性実証を経て、さらに第2、第3ステップ(2017~18年度)と、正着制御を含む、より高度な自動運転バスの技術実証などを実施していく予定だ。

一方SBドライブは現在、北九州市や鳥取県八頭町など4市町村とスマートモビリティーに関する連携協定を締結しており、2018年度後半に公道での完全自動運転による実証実験の実施を計画、早ければ2021年度の商用化を目指している。SBドライブの佐治社長によると、今回の実験車両の「改造費は企業秘密」とのことだが、商用化する時点では「(改造費を)1,000万円~1,500万円程度に抑えたい」と語っていた。

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ロボスタ編集部

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