GPU搭載の自動運転デリバリーロボット「Robby」をシリコンバレーで見た!(第2回) NVIDIAにスマートマシン事業戦略を聞く

米カリフォルニア州のシリコンバレーでは自動運転のデリバリーロボット「Robby」(ロビー)が実際に歩道を走行している。開発したRobby Technologyはロボスタ読者のために「GTC 2018」会場までスナック菓子をデリバリーしてくれて更にデモ走行も見せてくれた。


ロビーについての詳細やデモ走行の動画は前回記事「【GTC 2018】自動運転デリバリーロボット「Robby」をシリコンバレーで見た!(第1回) Robby Technologies社インタビュー」を参照。

今回はその第2回として、NVIDIA社のスマートマシン事業のシニアプロダクトマネージャー、Clayton氏にデリバリーロボットとGPU、Jetson、ISAAC等について話を聞く。

NVIDIA スマートマシン事業のシニアプロダクトマネージャー Jesse Clayton(ジェシー・クレイトン)氏(写真右)。左はRobby Technology、共同創設者、CEO、Rui Li氏


ロボティクス専用のプラットフォームを開発

編集部

ロボスタ編集部もデリバリーロボットの実用化にとても注目しています。このロボットにはNVIDIA社のGPUが使われていると聞きました。これに関わるNVIDIA社の活動について教えてください。

Clayton(敬称略)

NVIDIAは世界をリードするAI関連企業です。私たちはロボティクス専用のプラットフォームを作り、お客様の問題解決、製造やロジスティクスや配達のお役に立てるようにしています。Robby Technologyが解決しようとしているのは非常に難しい課題と言えるでしょう。なぜなら、自動運転用に整備された道路ではなく、一般の歩行者が通る、普通の道路環境でデリバリーロボットをナビゲートしているのですから。


Robby TechnologyがロビーにGPUの技術を採用した大きな理由は、高度な計算レベルが実現できるからです。そしてパワーの効率化も配達を可能にするために必要です。私たちはRobby Technologyと共に働くことができて、とても楽しく感じています。

編集部

デリバリーロボットの開発について、NVIDIAの技術が得意なところ、長所はなんでしょうか?

Clayton

いい質問ですね。GPUがAI技術に使われている理由は、汎用並列演算処理アーキテクチャーがあるからです。特にディープラーニングですね。ディープラーニングはGPUによって性能を加速することができます。


そのため、会社や研究者、科学者など、多くの分野でAIプロセッシングのワークロードの高速化や加速化が望まれ、その結果GPUが選択され、急速に普及しているのです。NVIDIAは、ロボティクス専門のリソースも提供しています。私たちはご存じのように「NVIDIA Jetson」というGPUを搭載したAIコンピュータボードを開発しました。ロボットや端末機器に搭載できるクレジットカードサイズの超小型のボードです。開発や問題の解決策を効率的に探るためのプラットフォームも提供しています。

「NVIDIA Jetson」シリーズのひとつ「TX2」。写真のように乾電池と比較するととても小さいことがわかる。産業用ロボットや生活支援ロボット、自律型ドローンや都市部のAIスマートカメラ、ウェアラブルデバイス等に搭載可能な組込型AIコンピュータボード(CPUとGPU搭載)

「GTC JAPAN 2016」では、ロボットやドローンに搭載する組込型AIコンピュータ「NVIDIA Jetson」と、それを採用するトヨタ自動車やサイバーダイン、アクティブリンク、宇都宮大学などがそれを採用していることを発表した(写真)。講演しているのは同社CEOのジェンスン・フアン氏


ISAAC ROBOTICS プラットフォーム

編集部

ロボットの開発支援と言えば今回の「GTC 2018」の基調講演でジェンスン・フアンCEOが「ISAAC」(アイザック)というブラットフォームを発表しましたね。

Clayton

はい、私たちは今回「Isaac SDK」(アイザックSDK)も発表しました。Isaac SDKは開発者向けのキットです。これによって、ロボティクス分野でもAIの技術が採用されていくことを加速すると考えています。企業がAIシステムを短期間で開発し、自社の機器に搭載することができるようになるからです。なにより、シミュレータも利用できるのですから。

「GTC 2018」の基調講演でISAAC ROBOTICS プラットフォームを紹介するジェンスン・フアンCEO

編集部

Isaacプラットフォームにはシミュレーション機能があるんですね?

Clayton

そうです。ロボティクス開発にとってコンピュータ上で行うことができるシミュレーションはとても重要なことです。なぜなら、多くの場合、実際の世界でロボットのテスト機を作り、それをトレーニングし、テストするには膨大の時間と予算がかかってしまうからです。シミュレータはその代わりとして、企業がバーチャル空間でまずは開発して、テストして、トレーニングしてみることを可能にするのです。そこで良い結果がでれば、実際のロボティクス開発の実機に反映すれば、大きく効率化がはかれるでしょう。



基調講演で発表されたISAACについては関連記事「【GTC 2018】NVIDIAのロボット開発環境「ISAAC」(アイザック)とは? ロボット活用と開発の未来をAIが変える 〜SDKも発表〜」を参照。

編集部

自動運転車用には「NVIDIA Drive」シリーズ(PXやペガサスなど)をリリースしていますが、「NVIDIA Jetson」との区分はどのような点でしょうか。

Clayton

そうですね、Driveプラットフォームは自動運転車専用にリリースしています。いくつかの製品がありますが、どれも自動車に適した製品であり、プラットフォームになっています。ただ、基本的には同じGPU技術がロボティクスにも使われています。それが「Jetson」です。また、CUDAをもとに作られているので、同じファミリーの製品はハードウェアをアップグレードしてもソフトウェアやアプリケーションはそのまま利用できるスケーラブル性を持っています。

編集部

Robby Technology社とNVIDIA社の皆さん、今日はお話を聞かせていただきありがとうございました。



Robby Technologies社は、6輪タイプの「robby 2」の開発も行っていて、YouTubeやホームページで動画や情報を公開している。動画では段差を乗り越える様子も確認できる(下の動画)。まだまだ先のことだと思っていた技術が、GPUを使ったAIテクノロジーによって次々に実現し始めている。ロボティクスやドローン、デリバリーロボットなどを開発を視野に入れてい企業はこの進化の潮流に乗り遅れてはいけない。

(Featured Ayuka Alyson Kozaki)

■ Robby 2


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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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