SXSW2018で展示されたロボットの目指す先は? 脚光を浴びた13種のロボット

2018年3月9日〜3月18日に米国テキサス州オースティンにて開催された世界最大規模の、テクノロジー・映画・音楽の複合イベント「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)2018」。期間中は音楽祭の「SXSWミュージック」、映画祭の「SXSWフィルム」、テクノロジーの祭典「SXSWインタラクティブ」などが行われるが、このうちSXSWインタラクティブは、さまざまな新しいテクノロジーや事業アイデアが披露される場として知られている。この記事ではロボットを中心にSXSWインタラクティブをレポートする。



パビリオンでのロボットたち

SXSWはオースティン中心地の展示施設「Austin Convention Center(ACC)」がメイン会場となるが、その他に、街中のホテルや飲食店、ガレージやアパートメントなどが各種会場として使われていた。たとえば市内の一軒家がまるごと「The Google Assistant Fun House」という展示会場として公開されるなど至る所に会場があり、まさにオースティンの街全体がイベント会場という様相となっていた。


The Google Assistant Fun Houseでは家の中のあらゆるものがGoogleアシスタントと連携していた。

The Google Assistant Fun Houseで展示されていた、Googleアシスタントに話しかけることで引き出しを開けてくれるロボット。
SXSWは街全体を使ったイベント(赤いピンが各種会場。公式アプリより)

企業パビリオンも多く、自社製品やサービスの体験のほか、セッションやピッチ、ワークショップといったイベントなど様々な取り組みを各社行っていた。
その中でもロボットが目立っていたのはSonyとPanasonicのパビリオンだ。Sonyのパビリオン「WOW Studio」ではaiboとXperia Hello!が展示されていた。


SonyのWOW Studio

aiboと触れあえるコーナー。aiboはSXSWでも人気。
12台のXperia Hello!によるダンス。

Panasonicの「Panasonic House」ではおにぎりロボット「OniRobot」のプロトタイプを展示していた。OniRobotはPanasonicのイノベーションプログラム「Game Changer Catapult(ゲームチェンジャーカタパルト)」からの出展で、おにぎりを世界に広げることを目指し、まずは北米でのBtoB展開を目指すという。


Panasonic House
展示用プロトタイプによるデモ。製品版ではご飯を海苔でキャッチすることを目指す。

OniRobotが握ったおにぎり。炊きたてのご飯で温かい。


トレードショーでは数多くの日本企業が出展

3月11日から14日の4日間、メイン会場のACCではトレードショーが行われた。トレードショーは企業や団体がブース出展する、いわゆる見本市・展示会だ。

会場の約半分が分野別(AI、VR/AR、ファッション、カメラなど)、約半分が国別のエリアになっていたが、出展企業全体の約14%を日本企業が占めた。今年1月にラスベガスで行われた展示会のCESでは、出展企業全体に占める日本企業の割合が1%程度だったのに対して、かなり大きい割合だ。ただ、他の国のブースは国名を全面に押し出しまとまった形で展示を行っていたのに対し、日本は各団体や企業が個別に出展している形なので、「Japan」としての一体感には欠ける印象を持った。


トレードショーの様子。

赤い部分が日本企業の集まったエリア(公式サイトのMAPをもとに作成)

電通ブースでは「SUSHI TELEPORTATION」が多くの人を集めていた。これは電通と山形大学、デンソーウェーブ、東北新社によるプロジェクトで、食品のデータを遠隔でロボットが再現(出力)するものだ。現在は非可食のキューブを組み上げる形だが、次は可食性のゲルを使った形を目指すと言う。

また、電通と東京大学によるパワードスーツ「Lunavity」も注目を集めていた。こちらは複数の強力なローターを用いて装着者の跳躍を拡張するもので、エンターテインメント活用の他、移動を支援するモビリティとしての活用を想定しているという。様々な制約により会場でのデモ実施は行えないとのことで、静態展示となっていた。

SUSHI TELEPORTATION

キューブを組み合わせて作られた寿司

Lunavity

東京大学は2013年度から「Todai To Texas」というプログラムで、東京大学発のスタートアップやプロジェクトチームをSXSWに派遣している。このプログラムからは「Archileon」と「Ninja Drone」の2つのロボットが出展されていた。

「Archileon」は、自走する3Dプリンターで、1/1スケールの建築物を施工することを目指している。スペイン留学中にガウディの建築物に影響を受けたのがきっかけでプロジェクトがスタート、SXSW期間中にはKickstarterでクラウドファンディングを開始した。

フューチャースタンダード の「Ninja Drone」はワイヤーを伝って移動するロボットで、縦と横のワイヤーを方向転換しながら移動できるのが特長だ。ワイヤーを張り巡らせれば、まさに縦横無尽に移動することができるようになる。フューチャースタンダードの持つ映像解析技術と組み合わせて、まずは農業や畜産業などでの活用を想定しているという。


Archileonのプロトタイプ。曲線的な建築物の施工を実現させる。

Ninja Drone
ワイヤーを使った移動と方向転換

他にもNextremerの対話エンジンを使った即興ラップを披露するテレビ朝日の「AIゴーちゃん。」や、博報堂ブースでは3DCGでできた女子高生「Saya」のデモなどが注目を集めていた。

AIゴーちゃん。
Saya


海外メーカーのロボットたち

トレードショーの会場で一際目をひいたのがKUKAの「Rotanza」だ。同社の産業用ロボットを組み合わせて作られたロボットがダンスを披露していた。また、Universal Robotsは同社の協働ロボットにライトセーバーを持たせて打ち合うデモを行っていた。

どちらのケースも、普段は業務をこなすロボットアームのエンターテインメント活用で、多くの客の足を止めさせる客寄せの役割を果たしていた。

KUKAのRotanza
Universal Robots

発売が間近なロボットでは「Temi」が展示されていた。Temiは家庭向けのパーソナルロボットで、2018年7月に米国と中国にて1500米ドル程度の価格で発売を予定している。並行して量産化を進めていて、2018年の冬商戦には十分な在庫を用意したいという。マーケティングはニューヨーク、R&Dはテルアビブ、製造は深センといったグローバルな体制で開発を行っているそうだ。

スマートスピーカーのように音声認識で、天気や各種情報を取得できる他、音楽や映像を使ったエンタメ機能を備える。また、スマートフォンを使って遠隔操作を行い、カメラを通じたテレプレゼンスや見守りを行うことができる。呼びかけることでTemiを近くに呼び寄せたり、顔認識を使ったトラッキング機能でユーザーの動きに合わせて向きを変えたりすることが可能となっている。

スマートフォンのような、「人に最も身近なデバイス」となることをコンセプトとしていているため、あえて顔や表情をつけないという話が印象的だった。


緑のラインがTemiの「顔」。

台座の部分はスマートフォンのワイヤレス充電が可能。

配送用の梱包も出来上がっていて、発売間近な様子がうかがえる

スマートフォンを使ったテレプレゼンス機能。
Temiのデモ(動画)


ロボットたちは次にどこを目指すか

イベントの性質から、SXSWではコンセプトモデルやプロトタイプの展示が多かった印象だ。他のイベントで圧倒的な存在感を見せている中国企業が今回ほとんど目立っていなかったが、コンセプトフェーズを飛ばして商品化に進むスピード感からかもしれない。なお、SXSWでは様々なセッションが行われていたが、テクノロジー系のセッションでは中国企業の動向について触れられる事が多く、注目度の高さを感じた。

SXSWをスタートとして、商品化や社会実装をいかに進めていけるか。SXSWで出会ったロボットたちと、次はどこでどんな形で再会できるか楽しみだ。


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小野哲晴
小野哲晴

アスラテックのロボットコンサルタント。 2005年、ソフトバンク入社。法人向け/コンシューマ向けの両面において、さまざまなサービスの企画・運用に従事する。2010年、Ustream Asiaにてライブ映像配信サービスの立ち上げに参画し、プロダクトマネジメント、広告運用、ローカライズ、コンテンツ制作を担当。その後、国内最大手SNS運営会社勤務を経て、2016年よりアスラテックに転身。