ロボット新会社「TickTock」が家庭用ロボット複数種のコンセプトを公開 「家庭用ロボットは難しい」

2017年3月に創業したロボットスタートアップ「TickTock」の創業者の一人Ryan Hickman氏は、同社のロボットのコンセプトを公開した。

同氏は、もう一人の共同創業者であるSoohyun Bae氏とGoogleで出会い、拡張現実の製品に共に取り組んでいたという(その後Bae氏はMagic Leapへと進んだ)。そして、二人は2017年3月にTickTockを設立。コンセプトを練り上げてロボットのプロトタイプを作り上げた。

Ryan Hickman氏はロボットのコンセプトを練り上げる過程、試行錯誤の様子をMediumで公開している。



コンセプトを作り上げる過程を公開

私たちの最初の目標は、ユーザーの問題を解決する最もシンプルなロボットを探すことでした。まず私たちがどんなロボットに期待しているかを決めるために、技術的可能性や、すでに実現されているユーザーエクスペリエンスを整理する必要がありました。私たちは数十台のロボットの写真を壁に貼り、共通性と動向を探りました。

Exclusive Look Inside TickTock’s Consumer Robot Product Explorations | Medium

以下が、TickTockがコンセプトを固めるために使った壁の写真だ。


日本のロボットもいくつかピックアップされている。ロボホンやキロボミニ、タピア、パペロアイ、エクスペリアハロー、ティプロンといった日本発のロボットの他、Google Home、Relay、COZMOといった海外で生まれて日本にも導入されているプロダクトが並んでいる。

彼らはこれらをマッピングして、カテゴリーのいくつかを排除していったという。

トイロボットは「長期間の利用に向いておらず」、高齢者向けの製品には「安全性の問題がつきまとう」、流通ロボットは「価格競争で大手には勝てず」、子供用の教育ロボットは「子供達はロボットが大好きだが短い交流ではAI学習に繋がることはない」と分析している。

そしてスマートロボットは数万円はするため、購入を正当化するための十分な使い勝手やユーザー体験が本当に必要であり、分類したカテゴリにはそれを満たすものはなかったため新しいカテゴリのロボットを模索したのだとコンセプトを生み出す経緯を説明した。

そして、まずは必要となる機能は「移動性」だと考えた。家の中にあるセンサーもIoTデバイスも動くことはできない。ロボットだからこそできるのが移動であり、彼らはそのロボットを「家庭内のKiva Systems」だと説明している(Amazonの倉庫で稼働している商品棚を移動させるロボット、そしてそれを制御するシステム)。


例えばゴミ箱や棚の下に入り込んでそれを移動させる。これによりゴミ箱や棚の置き場所に困ることもなく、またそれらの商品デザインも変化していくのだと説明する。

コミュニケーションロボットも、Amazon Echoも、照明も、その下にTickTockのロボットが潜り込んで移動できるようになる。一見すると便利そうなアイデアではあるが、このビジネスモデルは外部アクセサリーの変化に依存しすぎていて、スタートアップが進めるにはハードルが高いのではないかという意見が出たという。


そこから彼らは方向転換を試みた結果、家庭内を動き回るゴミ箱搭載のロボットや、子供達の片付けを手伝うロボット、Amazon Echo Showを上に載せることができるロボットなどいくつかのコンセプトを練り上げて、プロトタイプの開発に至ったものもある。これらは動画で公開されている(本記事最下部にて紹介)。またMediumでは、本記事で紹介していないコンセプトも公開されている。



家庭用ロボットは見送る

Ryan Hickman氏はこれらの家庭用ロボットについて将来的には全て存在するだろうとしながらも、数多くの投資家とやりとりをする中で、スタートアップとしてはコスト感が見合わないことや市場形成のタイミングについての意見があり、家庭用ロボットへの参入を保留したと報告している。これからは家庭用ロボットを応援しつつも、自身たちは商用ロボットに方向転換していくとの方針を示した。

今家庭向けのロボットが難しいかと聞かれたら「難しい」というのが大多数の意見だろう。ロボットの開発にはお金がかかるし、まだ市場もきちんと形成されていない。一方で、aiboが大きな話題になったり、Amazonも2019年にロボットを発売するのではという情報も飛び交っている。GROOVE Xなど大型の資金調達をおこなっているスタートアップもある。難しい市場だからこそ、成功した時の見返りも大きいのだ。

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ロボスタ編集部

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