横浜ランドマークタワーで自律移動ロボットが警備業務を担当!三菱地所が各種ロボットの実証実験、SEQSENSEが参画

三菱地所は、横浜ランドマークタワーにおいて、4種類のロボットの実証実験を行うことを発表した。自動化による労力削減や、人手不足の解消という課題に対して、ロボットがどこまで有効かを検証する。実証実験の期間は2018年9月3日~16日までの2週間。ロボットによる自動化は、警備、清掃、運搬の3分野において検証する。

追従型運搬ロボット「PostBOT」(横浜ランドマークタワーにて)

自律走行型清掃ロボット「Neo」(横浜ランドマークタワーにて)

三菱地所は丸の内エリアにおいて「ロボットを活用した豊かな街づくりに向けた取り組み」を積極的に推進している。少子高齢化が進む将来に向けて、深刻な人手不足をロボットで解決をはかりたい考えだ。今回もその延長にあり、横浜ランドマークタワーに舞台を移しての実証実験となる。
その実験のひとつ、警備用の自律移動型ロボットとして「SQ II(ツー)」を使用する。ロボット開発のスタートアップで明治大学の黒田洋司教授らが設立した企業SEQSENSE(シークセンス: CEOは中村壮一郎氏)社が開発している。三菱地所は同社に今年6月に5億円を出資したことを発表している。(関連記事「警備ロボット開発のSEQSENSE、10億円の資金調達を発表 セキュリティロボットシステムの商用化目指す」)

自律走行型の警備ロボットSEQSENSEの「SQ2」(横浜ランドマークタワーにて)

「SQII」は、ランドマークタワーのオフィスフロアや商業ゾーン(ランドマークプラザ等)で巡回警備を行う。三菱地所は「実証実験を行う2週間の間、実際の警備員を1名削減して検証を行い、その効果と課題を確認する」としている。

横浜ランドマークタワーの入口で立哨(立って警備する業務)している「SQ II」ロボット。警備員が待機する防災センターに映像を送る監視カメラの役割をする


警備ロボットの実証実験の内容

報道関係者向けの発表会では、「SQII」はまず施設の入口で立哨(立って警備する)業務を行う。「SQII」に搭載されたカメラ映像を防災センターで遠隔から確認するしくみだ。次に消化器が所定の位置にちゃんと置かれているかを移動して確認、いつもと違うものが施設に置かれていないかを決められたルートを移動しながら確認していく、という作業が公開された。

「SQII」は消化器の設置場所に自律的に移動し、所定の位置にあるかを確認

移動して警備を続ける

SQIIのカメラが捉えた映像は防災センターで確認することができる

三菱地所の渋谷氏は、警備ロボットの実証実験について次のようにコメントしている。
「警備ロボットは、消化器が所定の位置に配備されているか、防火シャッターや非常口など防災施設の周りに案内板や機材など、本来置かれていてはいけないエリアにモノがないかをチェックする業務を行います。通常は警備員の方が行っている日常業務です。また、ロボットが移動する際、止まったり避けたりして周囲の人と衝突しないように移動することができます。
今回の2週間の実験では、3階と15階のフロアで警備巡回を昼と夜とで行い、自動化がどこまで進められるか、省人化、省力化はどのくらい見込めるか、などを試したいと考えています。また、今回の実験では実装していませんが、将来的にはロボットとエレベータを連携させて、ロボットが自律的に複数のフロアを移動できる機能も実現したいと考えています。」

三菱地所株式会社 ビル運営事業部 統括 渋谷一太郎氏(右)

■三菱地所が横浜ランドマークタワーでSEQSENSEの自律移動ロボットを実証実験(動画)




警備ロボット「SQII」の特徴

「SQII」の最大の特徴は、ロケットのようなデザインの頭頂部で回っている独自開発の3Dレーザーセンサーだ(国際特許を出願中)。「三次元」で空間を認識して自ら立体地図を作成しながら自身の位置を特定した、高精度の自律走行が可能だ。
巡回ごとに周囲の状況と、記憶している正常な状態を照合し、差分があれば環境の変化があったとして、アラートを出すしくみだ。

最大の特徴である3次元センサー。2次元のセンサーを3つ装備し、それらを回転させながらたくさんのセンサー画像を輪切りで取得し、それを合成することで3次元の情報を生成する

赤外線センサーを本体の前後に装備し、物体や人を検知する。更にガラス物を正確に認識するために超音波センサーも装備している。また、広い視界をカバーする魚眼レンズ付きのカメラを3つ装備し、周囲の情報を撮影できる。また、サーモセンサーも装備していて温度を検知する。タバコの吸い殻や火災などに有効だ。

3Dレーダーセンサー、超音波センサー(ソナー)、魚眼カメラ、サーモセンサー、足元の2D赤外線センサーなどを装備している

自律的に充電ステーションに接続できる

赤外線センサーで周囲を検知して移動するため真っ暗な環境でも移動して警備することができる。人を検知することができるので、不審者を検知し、防災警備センターにアラート通知する機能も実装している。ただ、消化器の設置や物体の確認などを遠隔からカメラで視認する場合は、ライト(照明)を装備するか赤外線カメラ対応などの工夫が必要、としている

これから移動できるロボットの導入が加速しそうだ。自律移動には実はいろいろな方式がある。中でもこのロボットのように自動でマッピングしながら人を避けて移動できる方式は、開発競争が進んでいる自動運転車と同様のしくみであり、大きなアドバンテージを持っていると感じる。あとは今回のような実証実験を通じて、課題を解決しながらブラッシュアップしていくことで、実用化の事例が増えていくだろう。


なお、三菱地所ではこのロボットのほかに、清掃と運搬の各ロボットの実験も行っている。ロボスタでも追って詳細をお知らせする予定だ。お楽しみに。


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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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