「実はハードウェアはお金がかからない」 Makuakeものづくり忘年会でトークセッション
12月19日、東京・恵比寿のEBISU SHOW ROOMにて、「Makuake」が主催するイベント「ものづくり忘年会2018」が開催されました。
これは「ものづくり」に携わる方々を集めた忘年会で、参加者の3割ほどがものづくりの関係者、残り7割の方のほとんどがものづくりに興味を持っている方々でした。今回の記事では、同イベント内で行なわれたトークセッションの模様をお届けします。
登壇したのは、株式会社Shiftall代表取締役 岩佐 琢磨さん、株式会社Moff 代表取締役 高萩 昭範さん、popIn株式会社 代表取締役社長 程 涛さん、パルスボッツ株式会社 代表取締役CEO 美馬 直輝さんの4名。モデレーターはMakuakeでテクノロジープロダクトアドバイザーを務める鷹木創さんが務めました。
ロボットは今しか自由に作れない
まず冒頭で鷹木さんは、それぞれの自己紹介と併せて「今年はどんな年だったか」と質問。Shiftall岩佐さんからは「ハードウェア業界にとっては若干中だるみ期で、次を模索する期間に入った」との分析もあった中、印象的だったのはロボット「ネモフ」を開発したパルスボッツの美馬さんの言葉でした。
パルスボッツ 美馬さん
パルスボッツではこれまで、ロボットのコミュニケーションエンジンを開発してきました。それを続けてきた中で、他の人たちが作ったロボットではなく、自分たちのロボットを喋らせたいなと思うようになって「ネモフ」というロボットを開発しました。
今後、アマゾンも家庭用のロボットを作っていくと思います。するとそれが初めての普及型のロボットとなって、ロボットってこういうものだよねと形が決まってしまうと思っています。そういう意味で、特にコミュニケーションロボットは、今年が自由にロボットを創れる最後のチャンスだと思ってチャレンジしました。
ハードウェアは諦めない人が向いている
Shiftall・岩佐さんと Moff・高萩さんは、ハードウェアの開発を続けてきた中で今年は次のステップへと事業を転換した年でした。一方のpopIn・程さんとパルスボッツ・美馬さんのお二人は、ソフトウェアからハードウェアへと新たな分野へと足を踏み出した年です。お二方はハードウェア開発についてはどのように感じたのでしょうか。
popIn 程さん
ソフトウェアでは「ここまではできる」という自信を持っていましたが、いくつもの都市をまたいでのハードウェア開発はソフトウェアの100倍から1000倍難しかったです。今年3月の段階で予定よりも2ヶ月遅れで、ソフトウェアでは起こらないことが度々起こりました。デバッグ一つを取っても非常に大変でした。
パルスボッツ 美馬さん
ハードウェア開発は、大変という一言に尽きます。毎日壁にぶつかって乗り越えての繰り返しでした。スマートスピーカーは、安売りをしている時には3,000円くらいで購入できるので、僕らの商品も原価6,000円くらいで作れるだろうと思っていましたが、全然そんなことはありませんでした。ハードウェアの方々からすると当たり前のことかもしれませんが、それくらい当初はわからないことだらけだったんですよね。
一方で、ものづくりをすると人のモチベーションが上がるということを実感しました。ソフトをやっている時よりも、チームメンバーが自分たちのモチベーションでやってくれているのを感じましたし、イベントでの反応など「エモさ」を感じさせてくれるハードウェアはやっぱり面白いなと思いましたね。
鷹木さん
岩佐さんが「うんうん」とすごく頷きながら聞いていましたが(笑)
Shiftall 岩佐さん
お二人のお話にありましたが、諦めない人はハードウェアは向いていると思います。まさしくそうだなぁと思って聞いていました。
Moff 高萩さん
Moffもウェアラブルスマートトイということで子供向けの事業をやってきましたが、ハードウェアを使ったSaaSモデルを提供するという中でヘルスケア領域に事業をシフトしました。創業してからものづくりでやってきて、100%ハードウェアの売り上げで成り立っていた中で、ソフトウェアに変えるという転換ができたので、「諦めない」というのはビジネスを軌道に乗せるという意味でも大事だなと思いました。
Shiftall 岩佐さん
新しいハードを作らず現在のハードの中でのモデル転換はなかなか難しいことなのに、Moffさんはうまくやったなぁと思いました。投資家からも色々と言われたんだろうなと。
Moff 高萩さん
シリコンバレーに行った際にアドバイスを受けたこともあり、ハードウェアからソフトウェア、そしてサービス化をするというのはもともと意識していた流れでした。なので、そこまで大変ではなかったですね。
ハードウェアの開発期間は1年がちょうど良い
今年発売して話題のロボットに、ユカイ工学が開発したしっぽ型ロボット「Qoobo」があります。鷹木さんから美馬さんに「ネモフがQooboに似ていると思ったんですけど、どうですか?」と質問が飛びました。
パルスボッツ 美馬さん
Qooboが発表されたときに話を聞いたら「企画から発表まで半年」だと言われたんですね。それを聞いたときに自分でもできるんじゃないかと思ったんです。企画から1年でシッピングまでやってみよう、と。わからないながらに走れるんじゃないかなと思いました。それ以上長いと僕が飽きてしまうというのもありましたが(笑) なので、モフモフは一つの要素としてはあるんですけど、モフモフにすることで機構などの制約から逃れられることもあると考えたんです。
鷹木さん
モフモフという要素よりも、どちらかというとやり方によりインスパイアを受けたということですか?
パルスボッツ 美馬さん
そうですね。短い開発期間の中で、ぬいぐるみに入れることでメカ部分の見た目とかにこだわらなくて済むというのは大きかったです。
Shiftall 岩佐さん
(ネモフのように)企画から1年っていいタイミングだと思います。企画から2-3年かけると大体頓挫するんですよね。海外のクラウドファンディングを見ていてもそうです。考えすぎたり、飽きちゃったり。複雑じゃない限り、1年は良いかもしれないです。WEAR SPACEでもクラウドファンディングをしたんですが、ここから半年くらいで量産に持っていきたいなと思います。
Shiftall 岩佐さん
「popIn Aladdin」はどれくらいの期間で作りましたか?
Shiftall 岩佐さん
シンプルなものは1年くらいで、「popIn Aladdin」くらい複雑なものは1年半くらいかけてもいいですよね。
鷹木さん
Moffはどうでしたか?
Moff 高萩さん
モフバンドも1年ですね。キックスターターに出したのが4月で、企画はその前の夏、シッピングはキックスターターの半年後でした。
ハードウェア起業はお金がかからない
ここで会場からの質問ということで、ハードウェアを開発するのにかかるであろう「お金」について「ハードウェアスタートアップは資金的に厳しいというお話を聞きますが、実際のところどうでしたか?」と質問をしてみました。
パルスボッツ 美馬さん
どちらかというと、ハードウェアはプロモーション要素が強かったです。100体だけ募集をかけさせてもらって半日で売り切れましたが、だからと言って1000体作っても売れなかったかもしれません。型をおこして100体売っても元は取れないので、赤字で出しています。正直なところ、ハードウェアは儲かるかでいうと厳しいと思っていますが、この先ソフトと連携させていくことでうまく行く可能性もあるんじゃないかと思っています。
Shiftall 岩佐さん
1つお伝えしておくと、ハードウェアスタートアップだからといってお金がかかるわけではないんです。金型代が高いと言われますが、数百万でおさまるケースも多いです。
Moff 高萩さん
Moffの金型代は200万円でした。
Shiftall 岩佐さん
ですよね。人件費の方が断然コストはかかるので、ハードだからお金がかかるというのはまずありません。ただし、トラブった時にお金が出ていきやすいというのはありますね。物理的にものを送り返して頂く必要があるので送料がかかったり、開発をする上で法令を遵守しないといけなかったり。ただ、ソフトの方がたくさん競合もいて、例えば他者との違いを作るために優秀なUIデザイナーを雇ったり、人件費がかかるし、競合との違いを出せなければ資金調達も難しいんじゃないかと思っています。一方でハードウェアスタートアップは資金調達では穴場で、今がチャンスだと思います。特にハードウェア単体ではなくて、HaaS(Hardware as a Service)だとお金を引っ張りやすいです。
最後にShiftallの岩佐さんは「今スタートアップするタイミングだと思うので、興味あればスタートして欲しい。HaaSで起業して、仲間が増えると嬉しい」とトークセッションを締めくくりました。短い時間でしたが、ハードウェア企業の裏側も知ることができた、為になるセッションでした。
その後イベントでは、懇親会が行われ、懇親会中に行われたライトニングトークでも魅力的な製品がいくつも紹介されました。
来年もMakuakeから魅力的なプロダクトが世の中に出てくることを楽しみにしています。
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ロボットスタート株式会社ロボットスタートはネット広告・ネットメディアに知見のあるメンバーが、AI・ロボティクス技術を活用して新しいサービスを生み出すために創業した会社です。 2014年の創業以来、コミュニケーションロボット・スマートスピーカー・AI音声アシスタント領域など一貫して音声領域を中心に事業を進めてきました。 わたしたちの得意分野を生かして、いままでに市場に存在していないサービスを自社開発し、世の中を良い方向に変えていきたいと考えています。