【金賞作品を一挙紹介】小中学校のレベルアップがすごい「Pepper 社会貢献プログラム スクールチャレンジ」プログラミング教育成果発表 全国大会2019

「レベルの向上が凄いと感じました。昨年も審査員をやりましたが、今年全国大会に出たすべてのチームが、昨年の優勝チームのレベルを超えているとさえ感じました」

そう評したのは、クラブ・部活動部門で審査員をつとめた玉川大学の工学部情報通信工学科 岡田浩之教授だ。それほどに今年の全国大会は、子ども達のプログラミングのスキルが上がっていることが実感できる大会となった。





プログラミングの成果を競う全国大会

ソフトバンクグループは、Pepperを無償または廉価で小中学校や高校に貸し出し、プログラミングの授業を推進する「Pepper 社会貢献プログラム スクールチャレンジ」を2017年4月から行っている。そして、子ども達がその成果を競い合い、Pepperを使ったプログラミングやアイディアを披露するのが、このプログラミング成果発表会 全国大会となっている。今年は2月10日(日)に開催され、予選を勝ち抜いた合計30チームが出場した。


成果発表会で競うのは狭義のプログラミングの能力だけではない。小学校部門では「身の回りで役立つ Pepper」をテーマに、話し合って課題をみつけ、それを解決するアイディアを考え、実際にプログラミングしてPepperを動作させることが必要になってくる。
プログラミングに疎い大人達からみれば「そんなことが子ども達にできるの?」と感じるのが自然だろう。しかし、2020年から小学校で、2021年からは中学校でプログラミング教育が必修化になる、ということは、少なからず子ども達はそれに似たスキルを身につける学習をしていく。そして将来、そのスキルを社会で発揮する人材へと成長していく。


小学校部門 避難所で役立つPepper

「小学校部門」で金賞を受賞したのは新見市立野馳小学校。ふたりが「身の回りで役立つ Pepper」として選んだのは豪雨災害の経験から。新見市も被害にあった。
避難所で過ごすことの大変さを想像しながら、「避難所で役立つPepper」をプログラミング開発した。避難所で過ごした経験のある友達に話しを聞き、もしも学校が避難所になった時にPepperがどのように役立つか、アイディアをだした。

その結果、3つのメニューでプログラムを作成することにした。
それは避難所案内、飛左おばあさんの昔話、体を動かそうだ。避難所の中を案内するコンシェルジュ、昔話を話してくれるエンタテインメント性、高齢者施設でもレクの時間に使われている健康体操と、実に実践的な3項目に着眼している。


デモで披露した「飛左おばあさんの昔話」では、実に滑らかに昔話を話すPepperに驚くかもしれない。健康体操も実用的で、小学生がプログラミング制作したとは思えない、素晴らしい出来栄えとなっている。


■新見市立野馳小学校のプレゼンテーション




中学校部門 中国人観光客の実態調査に活躍

中学校部門のテーマは「社会の課題を解決する Pepper」。
金賞を受賞した藤枝市立葉梨中学校のプレゼンテーションには感心した。まず着眼点。
「外国から日本に訪れる観光客は増加していて、昨年度は2800万人を超えました」とグラフを掲出することからはじまる。観光客の増加は経済効果のメリットともに、文化や言語、価値感やマナーなどの違いから問題になることもあることを述べ、静岡県藤枝市も例外ではないとした。その一例が高速道路の藤枝パーキングエリア(PA)だ。

「中国人観光客のニーズがわかれば、その情報が藤枝PAにとってプラスになり、僕たちが愛する藤枝PAが更に活気づくのではないか」

ここにも外国人、特に中国人観光客が多くやってくる。そこで考えたのが、中国語を話すPepperを藤枝PAに導入し、中国人からさまざまな情報を集めることで、お客さんが何を望み、どんな傾向にあるのかを分析、よりニーズにマッチしたPAの運営ができるのではないかと考えたのだ。ソフトバンクやNEXCO中日本の協力のもと、実際に2018年10月6日から3日間、Pepperを藤枝PAに設置、実証実験を行った。アンケートの結果、さまざまなことがわかった。


まず「静岡空港や名古屋空港からバスに乗り、東京方面に向かう人がほとんど」ということがわかった。そして、その場合「藤枝PAが初めての休憩場所」となり、「疲れをとるために甘い物を食べたくなる」のではないかと推測。更に、「富士山が見え始める藤枝PAでは、初めて見る富士山に感動して富士山グッズに人気が集まる」とも分析した。


■藤枝市立葉梨中学校のプレゼンテーション




クラブ・部活動部門 学校生活をより良くするPepperがお買い得

クラブ・部活動部門は自由テーマ。
そこで「ショップジャポン」と言う架空のテレビショッピングを舞台に笑いを交えたプレゼンテーションを展開したのが、金賞に選ばれた掛川市立北中学校だ。

「教育現場に新たなご提案!学校生活をより良くするPepper」の紹介をはじめた。学校にいるPepperはまず朝の「あいさつ」から。人をみつけると積極的に挨拶をして、挨拶した人数をタブレットにカウント表示、短い会話機能ももたせた。次に「日直」、休み時間に働く「レクリエーション」、更に英語学習に役立つ「English Pepper」と4つの機能を揃えた。そして、「今回だけ特別にサービスでお付けする」5つめ、6つめの機能は・・



■掛川市立北中学校のプレゼンテーション




Pepperでできることから更なるレベルアップへ

岡田教授は言う。「続けていくことが大切だということが今年のレベルアップに現れています。来年以降もきっとレベルアップしていくでしょう。今年は「Pepperでできること」をみんなで考えたと思いますが、来年は「Pepperでなければできないこと」を考えて作品作りをしていただくと更に飛躍できると感じています」




プレゼンテーションでの子ども達の発言や実証実験を行う行動力、マーケティング能力、課題をみつける洞察力・・プログラミングから様々なスキルが養われていると感じた。
来年の全国大会も、子ども達の成長を見るのが今から楽しみだ。


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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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