近年、ロボットの活躍範囲は産業用途から介護や物流領域と多岐に及んでいるが、一人一人の生活に寄り添い、その時々で適切な判断や対応が求められるサービスロボットの分野については、未だに多くの技術的課題がある。
そこで、トヨタ自動車株式会社と株式会社Preferred Networks(PFN)は、市場のニーズに応えるサービスロボットの早期実現を目指し、トヨタの生活支援ロボットHuman Support Robot(HSR)をプラットフォームとして共同研究開発を行うことに合意したと、8月7日に発表した。
PFNはトヨタ、ファナック、日立製作所、みずほ銀行などの大手企業から資金調達を受けている。トヨタ自動車とは2014年10月から共同研究を開始していて、CES2016ではトヨタとNTTと協力して「ぶつからないクルマ」の展示したり、CEATEC Japan 2018では複数台のHSRで部屋を片付けるデモを公開するなど、以前より関係は深い。
両社は、お互いが持つ技術やノウハウを持ち寄り、今後、より多くの人々の生活の質向上に寄与できるよう一般的な生活環境の中でロボットが自ら学習し、多様なニーズに応える賢さを持ち合わせたサービスロボットの研究開発に取り組んでいくと述べている。
なお、ディープラーニングの研究と開発を行うスタートアップ企業であるPFNは、交通システム・製造業・バイオヘルスケアの3つを重点事業領域としており、トヨタ自動車とは自動運転およびコネクテッドカーに関する技術の研究開発において、2014年10月から共同研究を行っている。
共同研究開発の具体的内容
具体的には、まずトヨタのHSRを数十台規模でPFNに貸与し、今後3年間で両社が連携して研究開発を行う。開発に当たり、両社が持つ既存の知的財産等の情報も含め相互の技術を共有し、また共同研究の成果も両社が自由に活用可能とすることで、サービスロボットの実用化に向けた開発加速を図る予定だ。
■【動画】HSR/DSR機能紹介(トヨタ自動車公式チャンネルより)
今回の合意について、トヨタの未来創生センター長の古賀伸彦氏は以下のように述べている。
トヨタ自動車 未来創生センター長 古賀伸彦 氏
トヨタは、2004年頃より『人々の生活を支え、共生する』をコンセプトに、主に身体の不自由な方や高齢の方を支援するパートナーロボットの開発に取り組み、2012年には生活支援ロボットとしての基本的なプラットフォームを有するHSRを開発した。HSRはこれまで国内外13か国、49機関で研究開発に活用され、プラットフォームロボットとして高く評価していただいております。今後、よりお客様のニーズに応えるサービスロボット開発を目指すにあたり、世界トップレベルの知能化関連技術を有するPFNと、共同で研究開発を行えることを楽しみにしております。
また、PFN代表取締役社長の西川徹氏も以下のようにコメントしている。
PFN代表取締役社長 最高経営責任者 西川徹 氏
PFNは2014年の創業以来、深層学習技術を応用して自動車や産業用ロボットなどのハードウェアの知能化に取り組んでいます。CEATEC Japan 2018では、HSRに深層学習技術を応用し、不定形の物をつかむ/置く、動作計画を立てる、人の指示に対応するなど、全自動で部屋を片付けるロボットのデモンストレーションを行いました。HSRは優れたプラットフォームロボットであり、開発元のトヨタと共同開発に取り組むことで、ロボットが人の生活空間で働くために必要な機能の開発を加速させ、世界に先駆けてサービスロボットの実用化を目指します。