製造現場でAIをどう使うか?「目視検査100%達成」武蔵精密工業とABEJAの開発事例 「NVIDIA ディープラーニングセミナー 次世代の製造現場へ提案」

製造現場でディープラーニングなどのAIをどう使うのか?
Jetsonシリーズのようなエッジデバイス向けAIコンピュータボードをどう活用するのか?

NVIDIAが主催したイベント「次世代の製造現場へ提案 NVIDIA ディープラーニングセミナー」において、武蔵精密工業が登壇し、実際の工場で活用している事例と、自社で開発したAIソリューションを紹介した。武蔵精密工業は主に自動車部品などを製造する会社。愛知県に本社を置き、国内9拠点、海外に25拠点で展開している。

「Jetson を利用した現場実装事業展開モデル」と題して講演する武蔵精密工業株式会社 上席執行役員 新規事業統括 伊作 猛氏


製造現場でAIをどう使えば有効か

伊作氏が考える、製造現場で次に解決すべき問題とは「繰り返しではあるもののある程度の高い判断が必要な作業」だという。判断のいらない繰り返し作業は既に自動化が進んでいるが、判断や判別が必要な作業は人間がやらざるを得ないのが現状、そこを自動化できないかと自社の作業の洗い出しから取り組んだ。


作業工程で見ると、ピッキング・材料投入、組立、加工・搬送、インライン画像検査などがあげられる。具体的には、トラックから工場へ、またはライン間などの搬送業務は人が行っているし、出荷前の目視検査も人が行っている。これらは単純作業なので、なんとか自動化によって解放することで、新たな価値の創造ができるのではないかと考えた。


作業領域で見ると、搬送、段取り、加工、検査に分けられ、そのうちの搬送と検査にそれぞれ20%、合計40%程度の割合で人員が割かれているのではないか、と分析した(武蔵精密工業の場合含め)。

伊作氏は「少し乱暴な試算だが」と断ったうえで、これらの作業に従事している人の割合と就業者の総数から算出すると、武蔵精密工業では約400人、日本全体では約320万人の労働力を解放することに繋がる、と分析。働き方改革やSDGsの面でも有効であり、大きな市場が拡がっている、と語った。





「目視検査」をAIで代替

まず、同社の場合、出荷前の目視検査で不良品がみつかる「不良品発生率はわずか0.002%」。5万回の目視で1回発見する不良品のために、就業者は目を凝らし、長時間の作業に従事していることになる。また人間の作業は残念ながら体調や気分にも左右される、実は不安定なもの。5万回に1回を、もしもわずかな気のゆるみで見落とししていたとしたら意味がない。


そこで、業務の効率化と安定性を実現するため、まずはベベルギアの検品をカメラとAIによって目視作業を代替しようと、ABEJAと取り組み、実用化した。現状すでに不良品の検出率は100%を達成し、良品の納品としては完璧な状態だが、その一方で良品を不良品と判別するケース(過検出)という課題は残っている。


今後の精度向上のテーマは既にそこ(過検出を減らすこと)に移っている、と語った。


こうして2019年生産現場では検査工数の大幅な削減を実現したとともに、このAI化をやることによって「傷とはなにか」、非常に細かい部分で言えば人によって「傷」と判定する基準の見直しも行う良い機会にもなったという。


AIコンピュータボックスを製品化

AIは大きく分けて推論をクラウドで運用する方法とエッジで行う方法があるが、製造現場ではエッジ側でAIの推論を稼働させることが大切だと伊作氏はいう。エッジでの推論は、クラウドに比較してタイムラグが少なく俊敏性に富む。こうしたことから武蔵精密工業は自社でエッジコンピュータボックスを開発して製品化した。これにはNVIDIAの超小型のAIコンピュータボード「Jetson TX2」を搭載している。


「搬送」の自動化にも着手

もうひとつの課題となる「搬送」についても着手している。Jetson TX2を搭載した自動搬送車(AGV)の開発を行っている。制御は天井近くに設置したカメラの映像をもとに行うセントラル・コントロール・システムを採用している。


これらのAIシステムは製造業だけでなく、ロジスティクスや農業、廃棄物の分別などにも応用できるのではないかと開発を行っている。伊作氏は「事業ドメインを拡大し、より広域で展開していきたい」「さまざまな分野の人にお声がけいただき、一緒に開発を進めていきたい」と語った。

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神崎 洋治
神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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