【テレパシーはSFではない】脳波で意思を伝達、ロボットを操作!つくば市が採択した産総研のニューロテクノロジー「BMI」最新技術

「サイコミュ」。機動戦士ガンダムシリーズに登場する架空の制御技術で、特殊な脳波サイコウェーブでロボットや兵器を制御する。また、脳波で意思疎通するとなると「テレパシー」を思い浮かべる人も多いだろう。これらニューロサイエンスの知見に基づく「ニューロテクノロジー」研究はSFではなく実際に行われている。脳と機械のインタフェースとなることから「Brain-machine Interface」(BMI)と呼ばれる技術の中から、今回は脳から発する生体信号の漏れを検出して活用する技術を紹介する。
「NEDO AI&ROBOT NEXTシンポジウム」の展示ブースにおいて、産総研の長谷川氏が研究している「ニューロテクノロジー」研究、脳波スイッチのデモを実際に見る機会を得た。この技術は、つくば市が社会実装トライアル支援事業に採択し、脳の運動会「bスポーツ」の開催を目指している。

8チャンネルの計測ヘッドギアと基板

1チャンネルの計測装置はさらに小さい

工業デザインを考慮したバージョンの計測ヘッドギア




脳波で意思を伝えるニューロディテクター

展示されていたのは「ニューロテクノロジー」のひとつ、長谷川良平氏(※)が研究している「ニューロディテクター」「ニューロコミュニケケーター」「ニューロトレーナー」だ。脳波は特製のヘッドギアを着けて検知する。(※冒頭の写真 産業技術総合研究所 人間情報研究部門 ニューロテクノロジー研究グループ 研究グループ長 長谷川 良平氏)


デモの内容は、複数のコマンドの中から頭で考えるだけでひとつを選択し、選択したひとつの行動をロボットが実行する、というもの。
具体的にはこうだ。パソコンの画面上に「肩たたき」「箱を左に置く」「ダンス」など、8つのコマンドがアイコン(絵カード)化されて画面に表示されている。


デモが始まると、そのアイコンのひとつがランダムに点灯する。わりと高速に表示は移り変わるが、自分が選択したいアイコンが点灯したときに、頭の中で「これだ」と考える。その意思の脳波をシステムが読み取って、どのアイコンを選択したのかを検知する。


8つのコマンドのうちひとつがランダムに点灯する(実際には「これかな」と表示する)。自分が選択したい「箱を左に置く」アイコンが点灯したら、頭の中で「これだ」と反応する。

その信号を受けて、右のロボットが動作をはじめ、四角い黒い箱(スポンジ)を右の台座から左の台座に移動させる。



通常これを行うなら、自分が選択したいアイコンが点灯したら「ボタンを押す」というしくみを作ると思うが、「ニューロディテクター」はボタン押下の代わりに頭の中で思うだけでOKというイメージだ。
ルーレットのように順次ではなく、ランダムに点灯する理由は、比較的大きな脳波が「驚き感」によって誘発されるため。シーケンシャルに光ると予想できるため、驚き感が少ないのだという。

■ニューロディテクターのデモ

では、これらはどのようにユースケースで使われるのだろうか。将来はロボットや家電機器など、さまざまな装置を脳波で制御できるようになる可能性があるが、比較的近い将来に実現できると考えられているのが次のようなケースだ。


「ニューロテクノロジー」のユースケース


運動機能障がいの意思伝達支援

まず「ニューロコミュニケーター」としての活用だ。身体が不自由な人や重度のALS患者など、意思を伝達することが困難な場合に、それを支援する。


今回、見せてもらったもうひとつのデモでは「こんにちわ」「おめでとう」「やったー」「いってらっしゃい」などのアイコンから、自分の気持ちに近いものを選択。選択した気持ちをロボットがポーズで表現したり、ロボットが言葉を発して周囲に意思を伝えることができるだろう。

アイコンには「こんにちわ」「おめでとう」「やったー」「いってらっしゃい」などがあり、意思や感情を伝えるために用いることができる


認知機能の評価

次が「ニューロディテクター」。脳波スイッチの計測によって軽度の認知障がいや認知症予備軍であることがわかる。それらを検知した場合、健康脳に戻すための予防医療が有効で、認知症になるのを防げる可能性があり、エビデンスの検証を行っているところだ。



bスポーツへの発展

認知症を防ぐために「ニューロトレーナー」が有効だという。釣り、バッティング(野球)、クレーンゲームなど、タイミングよく判断することで高得点が得られるゲームを行うことで脳のトレーニングになる。
また、将来はeスポーツならぬ、脳(Brain)によるゲーム競技をbスポーツとして普及させたい、と意欲を語った。例えば、モグラたたきのような簡単なゲームで高齢者や障がい者がアクティビティとして楽しめたり、複数のロボットで宝箱を取り合ったり、競い合う仕組みを取り入れるような世界も目指している。この構想についてはつくば市が評価して「令和元年度つくばSociety 5.0社会実装トライアル支援事業」に採択した。今後スポンサーを募るとしている。

■ゲームに応用したデモ

この技術は、茨城県つくば市で2020年2月15日(土)と16日(日)に開催される「Tsukuba Mini Maker Faire 2020」に出展される予定だ。


ABOUT THE AUTHOR / 

神崎 洋治
神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

PR

連載・コラム