会話ロボット「NAO」が授業に参加 五島市の小学校で実証実験 三菱総研DCSのAIエンジンと連携 その効果と調査結果を発表

長崎県五島市教育委員会、三菱総研DCS、日本サード・パーティは小学校における学習支援ツールとしてコミュニケーションロボットを活用することをめざし、五島市立奥浦小学校にて実証実験を2019年9月24日~2020年2月28日まで実施。その結果を発表した。

結果としては児童はロボットとのふれあいを楽しみ、一緒に学習する仲間として関心を持って受け入れている姿が見受けられた。なおくんのことは好きですか?」という設問に対し、“すごく好き”または“まあまあ好き”と答えた児童の割合は95%と、多くの児童がコミュニケーションロボットを好意的に受け入れていることが分かる。


NAOを使用した授業風景 3年生

「なおくんといっしょの授業はたのしいですか?」「もっと一緒に勉強したいですか」という設問に対しては両設問が90%を超え、コミュニケーションロボットは児童に一緒に学習する仲間として受け入れられ、児童の学習意欲を高めていることが分かった。

■奥浦小学校の全校児童43人を対象に実施
期間:2019年9月24日~2020年2月28日
対象:長崎県五島市立奥浦小学校 全校児童43人
使用内容
・英語教育で設定されているSmall Talkの実施
・クイズ形式での算数問題の出題、正誤判定
(プロジェクトはソフトバンクロボティクスの「NAO」を活用し、三菱総研DCSが独自に実施。)


DCSのクラウド型対話AIエンジン「Hitomean」と「NAO」を連携

実証実験ではDCSのクラウド型対話AIエンジン「Hitomean」(ヒトミン)とソフトバンクロボティクスの小型二足歩行ロボット「NAO」(ナオ)を連携させて、Small Talkやクイズを提供。児童や教員がスムーズにロボットを受け入れられるよう、段階的に使用範囲を拡大しながら進めた。なお、ソフトウェア開発をDCSが担当し、「NAO」の提供をJTPが担当した。


システム イメージ

Small Talkは小学校高学年の外国語教育にて行われる活動。テーマを決めて教師と生徒が英語で話をしたり、または生徒同士で自分の考えや気持ちを英語で伝え合う。2時間に1回程度行われ、学んだ表現を繰り返し使用してその定着を図ることと、対話を続けるための基本的な表現の定着を図ることを目的としている。


NAOを使用した授業風景 1、2年生


■コミュニケーションロボット活用の期待効果
<児童への期待効果>
・コミュニケーションロボットとのふれあいをきっかけとした「知的好奇心の育成」 「学習意欲の引き出し」
・英語での語りかけによるネイティブな英語との接点の増加
・クイズ形式での繰り返し学習による学習内容の定着

<教員/学校への期待効果>
・英語科授業の一部代替による教員の負担軽減
・個人の正答率やその推移の見える化による個別指導支援
・標準化された教材の使用による、学習内容の品質安定化


多くの児童がNAOを受け入れた

実験中は児童がNAOを「なおくん」と命名。児童はロボットとのふれあいを楽しみ、一緒に学習する仲間として関心を持って受け入れている姿が見受けられた。「なおくんのことは好きですか?」という設問に対し、“すごく好き”または“まあまあ好き”と答えた児童の割合は95%と、多くの児童がコミュニケーションロボットを好意的に受け入れていることが分かる。



また、「なおくんといっしょに勉強して、どんなところが楽しいですか?」「なおくんといっしょにやってみたいことがあれば、教えてください」という自由記述の設問に対しては、「いっしょに算数クイズをして、正解したときほめられたりするところがうれしいし、楽しいなぁと感じる」「なおくんといっしょにあそびたい」「もっといっしょに話す時間がほしい」という回答が。


英語科授業の様子 3年生

「なおくんが学校にきて、勉強で工夫したことや新しくはじめたことはありますか。あれば教えてください。」という設問に対しては、「なおくんが分かりやすいように、目線を合わせたり、声のトーンなどに気をつけたりした」「なおくんがきた時は声がはっきりしてなかったけど、少しはっきりしてなおくんがききやすいようにした」といったように、コミュニケーションロボットと楽しく接し、機能面の制約を受け入れフォローしながら活用できたという回答が多くみられた。


スキルタイムでの算数クイズの様子 6年生

「なおくんといっしょの授業はたのしいですか?」」「もっと一緒に勉強したいですか」という設問に対しては両設問が90%を超え、コミュニケーションロボットは児童に一緒に学習する仲間として受け入れられ、児童の学習意欲を高めていることが分かった。






短期間での実証実験のため学習面での数値的なデータの代替として、教職員へのアンケートやヒアリングを実施。「児童の学習意欲や取り組む姿勢」や「ネイティブな英語に触れる機会の増加、遠慮なく何度でも同じ内容の繰り返しが可能な点」など、ロボットならではの良さがあげられ、児童の学習面への貢献の可能性をとらえることができたという。

■教職員へのアンケートやヒアリング(一部)
児童の学習意欲や取り組む姿勢について

・前のめりになるくらい興味をもってくれる。英語をいつもよりしっかり聞きとろうとする
・全員がとても真剣にむかっていました。NAOの言葉を少しもききもらすまい!と、一生けんめい耳をすませていました
・ロボットは子どもが興味を持ち、関心を寄せる媒体なので、ロボット活用によって楽しい学習を体験することができると思います

コミュニケーションロボットならではの活用について
・同じことを何度でもくりかえすことができるところがいい
・英語科での活用に期待です。自身の英語の発音にあまり自信がないこともあり、ネイティブの発音で話してくれるところに魅力を感じます
・「聞く」「理解する」「自分の知識に照らし合わせて考える」「声に出して回答する」の一連の流れは、紙面で問題を解くよりも高度なことであり、算数などの学習内容の定着化にも効果的なのではないかと思う

一方で、継続的な活用については、以下のような課題も明らかになった。

・Wi-Fi環境が不安定で、操作画面が表示されなかったり、ロボットの応答が遅延して使えなかったりすることがあり、使用に不安があった。
影響
-画像による個人識別はとくに通信量が多く、処理を待つことで児童の利用意欲が減退してしまうため、本実験では使用を中止した
-ロボットが稼働しなかった場合に備え、授業プランを2通り用意することになると、教職員の負担がかえって増大してしまう

・短い業間休み(5分)の中で、NAOのセッティングを終わらせるのはあわただしかった
・ロボットを取り入れた授業デザインを現場だけで企画するのは負担が大きい

今回の実証実験ではもっとも効果的な活用が想定されていた英語科での活用とともに、他教科(算数)への広がりについても検証し、一定の評価を得ることができた。また、ヒューマノイド型ロボットの身体性がもたらす特徴として「人」よりも話しかけやすく、また電子教科書にある動画のような「ツール」よりも真摯に向き合う姿勢を引き出すことがわかり、今後のコンテンツ拡充のひとつの視点を得ることができたとしている。

一方で、ネットワーク通信量の軽量化や、一部オフライン稼働の実現など、現在の学校現場のネットワーク環境に即した改良も喫緊の課題として明らかになり、商品化への具体的な対応が求められていることも分かった。

獨協医科大学情報基盤センター 教授・センター長 坂田 信裕先生は次のようにコメントしている。

今回の授業において、ヒューマノイド型ロボットは、その「存在感」を活かし、単なるツールではなく、生徒たちや教員の間に入る仲間的な存在になっている様子が窺えました。生徒たちがロボットの発話内容を聞き漏らさないようにと集中する様子や、時にロボットがうまく反応しない場合でも、どのように対応したら良いかを自ら考えている姿も見受けられました。ロボットという新たな存在が教室内にいることで初めて起きる、従来にはない視点での学びの側面もあったと思われます。
また、教員にとっては、ロボットを利用することで、一人一人の生徒の学びの状態を観察できる機会にもなっていたと思います。これは、教員一人だけで授業を行う場合には難しいことだと思います。
今後の検討によって、生徒への教育効果が明らかになっていくことや、教員の支援にも繋がる新たな「ロボットのいる学びの場」の環境としての展開が進んでいくことに期待しています。

三菱総研DCSは今後、今回の実証実験で得た結果をもとに、システム基盤とコンテンツ両面のレベルアップ、活用方法のモデル化を進めていく予定。また、児童への新たな教育機会の創出と教員の働き方改革の両面に貢献するべく、教育現場でのコミュケーションロボットの活用検討について、引き続き取り組んでいく。

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山田 航也
山田 航也

横浜出身、1998年生まれの20歳。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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