【速報】メルセデス・ベンツとNVIDIA、次世代コネクテッドカーのソフト開発で協力 自動運転/安全支援/セキュリティ/OTAなど開発を加速

メルセデス・ベンツとNVIDIAは、メルセデス・ベンツ(以下、メルセデス)が発売する次世代シリーズの全モデルにおいて、ソフトウェア開発で協力していくことを発表した。具体的には車載用コンピューティング・システムと AIコンピューティングのインフラ構築を協働で開発していく。2024年から納車を開始する、次世代モデルのメルセデス・ベンツ車両に標準装備される。


これは自動運転(レベル2、3、駐車場内などの限定域内は4)、運転支援システム、セーフティシステム、セキュリティなど、多岐にわたる分野の技術が含まれる。メルセデスとNVIDIAの開発チームが協業で開発していくことになり、NVIDIAからはAI関連の開発チームが投入される。


自動車の世界的なトップブランドと、ディープニューラルネットワークのリーダーが強力なタッグを組むことで、業界全体に与える刺激や影響は大きく、次世代モビリティ開発の起爆剤となって、技術の進化が加速することも予想される。

イメージ 提供:Mercedes-Benz / NVIDIA


メルセデスとNVIDIAが次世代コネクテッドカー開発で協業

日本時間の2020年6月24日未明2時30分、メルセデスとNVIDIAは共同でプレス発表会をオンラインで開催し、両社がメルセデスの次世代モデルのソフトウェア開発において、積極的に協業していくことを発表した。

オンラインでの発表会に登壇したNVIDIAの創業者/CEO ジェンスン フアン氏(左)、MCの女性をはさんで、メルセデス・ベンツ・カーズのCEO オラ ケレニウス氏(右)

今回の発表によれば、NVIDIA DRIVEのソフトウェア・スタックが採用され、開発環境はハイエンドの「NVIDIA DRIVE AGX Orin」プラットフォーム(200TOPS)で行われる。

NVIDIA Orin System-On-a-Chip

ソフトウェア・デファインド・プラットフォームとして構築された「DRIVE AGX Orin」は、運転支援のADASから完全自動運転のレベル5まで拡張可能な、アーキテクチャの互換性があるプラットフォームを実現するために開発され、自動運転車両やロボットで実行される様々なアプリケーションとディープニューラルネットワークを同時に処理すると同時に、システムが自動車向け機能安全規格(ISO 26262)の中で最も厳しい水準「ASIL-D」を満たすことができるように設計がなされている。

次世代モデル:コンセプトカー 発表会の冒頭で流れた動画より

NVIDIAが開発しているドライブシュミレータ内を疾走する仮想次世代モデル:コンセプトカー。本物そっくりの景色のシミュレータ内を走りながらドライブAIは運転を学習していく

■ 動画 Mercedes-Benz and NVIDIA to Create World’s Most Advanced Cars


アップグレードできる自動運転機能

また、ソフトウェアのアップグレードが可能なコンピューティングアーキテクチャが導入され、「OTA」で常に新しくて最適なソフトウェアに更新される。OTAとはOver-The-Airの略称で無線通信を通じてアップデートするしくみ。スマートフォンではOSやアプリのアップデートは一般的だが、現時点で自動車にはあまり導入されていない。有名なところではテスラが既にOTAを採用していて、運転支援や自動運転のシステムは無線技術を使って最新のバージョンに自動でアップデートされる。また、OTAによってオプション機能を追加で利用するアップグレードや、映像や音楽コンテンツ等の購入、サブスクリプションサービス等の提供にもつながるだろう。

ソフトウェア・アップグレードのイメージ

自動運転に関して両社は、SAEレベル2、およびレベル3、更には自動駐車機能(限定域内でのレベル4相当まで)を実装したAIおよび自動運転車用アプリケーションを共同開発する。指定した住所から目的地まで日常的に往復しているルートの完全な自動運転、運転支援システム(ADAS)、セーフティドライブ機能、駐車機能、外部の攻撃から守るセキュリティなどが想定され、今後開発されていくだろう先進システムを含め、広範囲の分野のソフトウェアで連携していくという。
これはメルセデスの欧州や米国向けモデルだけでなく、日本を含めてワールドワイドに展開される。現在の見込みではA-ClassやS-Class相当のグレードから搭載されていくとみられている。


下がドライブシュミレータ


メルセデスとNVIDIA 両社CEOによるコメント

NVIDIA の創業者/CEO であるジェンスン フアン (Jensen Huang) 氏と、ダイムラーAG の取締役会会長 兼 メルセデス・ベンツ・カーズ統括であるオラ ケレニウス (Ola Källenius) 氏はそれぞれ次のようにコメントしている。

NVIDIA ジェンスン フアン氏

メルセデス・ベンツと協業できることを喜ばしく思っています。長きにわたる同社のイノベーションの歴史と両社の技術面での密接な関係を考えれば、メルセデス・ベンツは NVIDIA にとって完璧なパートナーです。同社のオラ (Ola) 会長および彼のチームとの徹底した議論を通じて、両社が将来の自動車について共通したビジョンを描いていることは明らかになっています。両社は一体となり、自動車の所有体験を一新させ、OTA を使って車載ソフトウェアをプログラムできるようにするだけでなく、継続的なアップデートも可能にします。NVIDIA DRIVE システムを搭載した、将来の全てのメルセデス・ベンツ車は、AI とソフトウェアのエキスパート エンジニアで構成されたチームによって継続的に開発と調整が行われ、車両の生涯を通じて拡張され続けます

ダイムラーAG オラ ケレニウス氏

NVIDIA社との協力関係をさらに拡大できることを嬉しく思います。ジェンスンと私はお互いによく知った仲で、次世代の車載コンピューティング アーキテクチャの目標と可能性について、多くの時間をかけて話し合ってきました。この新しいプラットフォームは、未来のメルセデス・ベンツ車すべてに搭載される、効率的で集約的な、ソフトウェア デファインドのシステムとなります。NVIDIA の AI コンピューティング アーキテクチャにより、メルセデス・ベンツの自動運転に向けたプロセスがより効率化されるでしょう。これらの新しい機能とアップグレードは、クラウドからダウンロードされるようになりますので、メルセデス・ベンツのすべてのお客様の安全性が向上するととともに、車を所有する価値と楽しみがさらに高まるようになるでしょう。





新しいコンピューティング アーキテクチャ

メルセデス・ベンツが将来実現する自動運転機能には、次世代の「NVIDIA DRIVE プラットフォーム」が搭載されることになる。「Orin」と呼ばれるSoC(コンピュータ・システム・オン・チップ)は、先日発表されたNVIDIA Ampereスーパーコンピューティング・アーキテクチャがベースとなっている。NVIDIA DRIVE プラットフォームには、自動運転用AIアプリケーションのための、フルシステムのソフトウェア・スタックが含まれる。


この新システムの最先端の機能は、安全を最優先したものとなる。テクノロジーおよびフレームワークが発展し、多くの車はOTAでアップデートできるようになり、常に新しい自動運転機能をユーザーは利用できる環境へと向かうだろう。他の安全機能とともに便利な機能もアップデートされる。


新しいモデルを開発するために、両社は NVIDIA DRIVE インフラストラクチャー・ソリューションを活用して、データドリブンな開発と、ディープニューラル・ネットワークの開発を実現し、車両が販売される地域および営業領域の要件に対処できるようにする、としている。

ABOUT THE AUTHOR / 

神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

PR

連載・コラム