ポケトークに新製品「ポケトークmimi」が誕生 加齢性難聴や聴覚障害者にフォーカス

ソースネクスト株式会社が、9月4日(金)に、AIボイス筆談機「ポケトークmimi(ミミ)」を発売することを発表した。価格は29,800円(税別)。
この製品は、ボタンを押して話した内容を瞬時に大きな文字で表示する筆談専用IoTデバイス。加齢性難聴や聴覚障がいのある人とのコミュニケーションをスムーズで快適なものにするため、スピードや文字の見やすさ、使いやすさにこだわったという。

現在ソースネクストのWebサイトで予約受付を受付中で、9月4日(金)からは全国の家電量販店のほか、眼鏡販売店の「メガネの愛眼」でも販売を開始するという。それ以外にも、まずは試してみたいというユーザーのために、ポケトークmimiのレンタルサービス(月額1,980円・税別)も開始する。




聴覚障害者向けにフォーカスした様々な特徴

現在、日本では、難聴者率は11.3%、国内推計で1,430万人にのぼるという。(一般社団法人 日本補聴器工業会しらべ)
高齢化が進んでいく今後、ますますこの数字は高くなっていくことが予想される。
しかし、コロナ禍でソーシャルディスタンスの徹底がマナーとして浸透しつつあるなか、特に高齢者は「話が聞き取りにくいので近くに」とも「もっと大きな声で話してください」とも言いにくい世情になっている。
そんな状況下で今回発売されたポケトークmimiは、シンプルな操作とリアルタイム性の高い筆談機能で高齢者にも扱いやすい機器となっているようだ。
今回発表された特徴を細かく紹介してみよう。


シンプルなUIと初期設定で箱から出してすぐに使える!

高齢者の自宅にはWi-Fi環境が整っていないということも多いだろう。
そういった状況でも使えるようにポケトークmimiは国内用のeSIMが内蔵、設定済みで、モバイル通信料も2年分先払いしてあるため、契約手続きや通信料は不要だ。
こういった部分で躓くことを想像して躊躇してしまうことが多い高齢者にとって、まるで家電のように使える機器というのは非常にありがたいだろう。

非常にシンプルな初期設定

また、使用方法もボタンを押しながら話すだけ、というシンプルなもの。
テキスト化にはクラウド上にあるAIを使うものの、リアルタイムでテキスト化されることを強くアピールしていることから速さには自信があるようだ。
シンプルなデバイスなだけに、訂正が頻繁に起こるようでは使いにくいだけだろう。
そういった意味では、クラウド上のAIを使う事による正確さや、本体価格の低減などを重視していることが予想できる。

ポケトークmimiのテキスト化の流れ。ノイズ・キャンセル機能を搭載するマイクロフォンの採用などでテキスト化精度を高める工夫などもされている。



低コストながら見やすいディスプレイ部などで高齢ユーザーにフォーカス

ポケトークmimiは、翻訳機として好評のポケトーク S Plusよりもさらに大きなディスプレイを採用し、文字の大きさを調整する機能や読みやすい「教科書体フォント」を使うなど、きめ細やかな高齢者向けの配慮が設計に活かされている。

外観部品はポケトーク S Plusの部品を多く流用しているようだ。

特に、前述のポケトーク S Plusとの部品の共用をすることで価格を抑えていることに注目したい。近年のデジタル技術の発達で価格が下がってきているものの補聴器の値段は10万円以上の物が多い。しかし、3万円を切る価格であるポケトークmimiであれば、高額な補聴器に手を出しづらい高齢者ユーザーや、「補聴器をつかっているものの聞きづらくなってきたユーザー」、「聞こえてはいるものの、話の流れを記憶しづらくなってきたため、眼で読み直したいユーザー」など、幅広い層に受け入れられるだろう。


ボイスUI機器は高齢者層にDXを促すきっかけになるか

多様な特徴を持つポケトークmimi。この製品の開発のきっかけは、ソースネクストが2017年から発売している通訳機「ポケトーク」を日本語から日本語への翻訳に設定し、耳の聞こえにくい人との会話に使っているユーザーがいることだったという。
非常に使いやすいUI、手を伸ばしやすい価格の商品は様々な使い方をするユーザーが生まれる、という好例だろう。

アイデアをただ実現するだけであれば従来機の翻訳機能を削ぎ落とすだけでも可能なわけだが、そこにとどまらず、各種機能、UIを見直したという点にも着目したい。
たしかに「拙いながらも他言語でコミュニケーションをしたい」というユーザーに比べて母語での発声を文字化したいユーザーの方が機能の採点が辛めになるだろう、という点もあるとは思うが、今後ますます増えることが予想される聴覚補助を必要とするユーザーに向けて落胆させない商品作りに邁進していた、と考えたほうが良さそうだ。

読みやすい書体の採用や、文字の大きさ選択などの工夫。老眼であっても、「会話の中のひとかたまり」を確認するためにある程度のボリュームの分量を確認したいユーザーには喜ばれるだろう。

ソースネクストは、今後も「製品を通じて世界中の人々に喜びと感動を広げる」というミッションの実現に向けて、さまざまな製品の開発に取り組んでいくという。

高齢者など、従来のICT機器を、複雑な操作が必要だからと敬遠していた層は確実にいるだろう。
そういった今まで取りこぼしていた層を取り込むことができるボイスUIが、今後どれだけ浸透していくことができるかは、こういったデバイスの進化にかかっているかもしれない。
今後もこの安価で必須の機能を持つコミュニケーションデバイスの動向に注目していきたい。

■ 「ポケトークmimi」の製品概要

■製品名 「ポケトークmimi(ミミ)」
■製品内容 AIボイス筆談機
■企画・開発・販売 ソースネクスト株式会社
■価格 29,800円・税別
■製品情報 https://pocketalk.jp/mimi/
■同梱物 「ポケトークmimi」本体、スタートガイド、ユーザー登録カード、
使用許諾条件書、ハードウェア保証書、USB充電器、
充電用USBケーブル(本体側:USB Type-C 給電側:USB Type-A)、取扱説明書

本体サイズ 約幅 65mm/厚み 11mm/高さ 123mm 約128g
■ディスプレイ 3.97インチ( タッチパネル)
■スピーカー/マイク 3Wスピーカー/ ノイズキャンセリング機能搭載デュアルマイク
■CPU ARM Cortex53 Quad-Core 1.3GHz
■OS Android OS 8.1のカスタマイズOS
■メモリ ROM 8GB / RAM 1GB
■内蔵eSIM 国内通信 2 年付きeSIM(取り外し不可)
(SIMカードスロット : なし)
■通信規格 4G LTE(日本国内のKDDI 回線に接続)
■外部接続 <Wi-Fi>IEEE802.11a/b/g/n 2.4GHz:1~11ch 5GHz:5.2GHz(W52)、5.3GHz(W53)、5.6GHz(W56)
<Bluetooth®>4.2
■動作温度 0℃~40℃ 保存温度 -20℃~45℃(ともに結露がなきこと)

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梅田 正人

大手電機メーカーで生産技術系エンジニアとして勤務後、メディアアーティストのもとでアシスタントワークを続け、プロダクトデザイナーとして独立。その後、アビダルマ株式会社にてデザイナー、コミュニティマネージャー、コンサルタントとして勤務。 ソフトバンクロボティクスでのPepper事業立ち上げ時からコミュニティマネジメント業務のサポートに携わる。今後は活動の範囲をIoT分野にも広げていくにあたりロボットスタートの業務にも合流する。

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