経産省と産総研「ロボットサービスの安全運用に関する国際規格案」の審議開始 日本が議長職 ISO/TC299(ロボティクス)で作業グループを設立

少子高齢化による労働力不足は、あらゆる産業において大きな課題になっている。加えて新たな感染症のまん延により、サービス業におけるソーシャルディスタンスの確保が課題となる中、その解決策のひとつとして期待されるのが、ロボスタ読者にはお馴染みの「サービスロボット」と呼ばれるロボットの導入だ。

ここ最近、案内ロボットや搬送ロボット、介護ロボット、アシストロボットなど様々なロボットが駅や空港、商業施設、介護施設など、一般の人と共存する場で用いられ始めている。その際、ロボットが人に危害を与えない安全性の確保が必須となることを見据え、「ロボットサービスプロバイダがロボットを安全に運用するための規格案」を、国際標準化機構(ISO)に提案。
同提案より、ロボットの安全に関する技術委員会ISO/TC299(ロボティクス)における日本を議長職とした新しい作業グループ(WG7)の設立と審議開始が決定したことを、経済産業省と国立研究開発法人 産業技術総合研究所(AIST)が2020年9月2日に同時発表した。(冒頭の画像:人と共存するサービスロボットの例【東日本旅客鉄道株式会社 提供】)



現在の運用課題について

これまでにサービスロボットの国際安全規格ISO 13482が日本主導で2014年に策定され、規格の普及が進んできた。しかし、現状では、一般の人や生活空間を対象に動作する同ロボットについて、これを運用するロボットサービスプロバイダーが実施すべき安全管理・マネジメントの体系化、標準化は国内規格の規定のみで際標準化されていない。そのため、日本で開発したロボットを海外で運用する場合や、海外で製造されたロボットを国内で運用する場合に共通したルールがないという課題があった。

産業用ロボットとサービスロボットの安全に関する規格や規則




同企画案の内容

これまでの産業用ロボットは、特定の稼働エリア内や専門の従業員による利用であったのに対し、今回の規格案が対象とするサービスロボットは、一般の人、もしくは一般の人が近くにいる場所で動作する。そのため、駅や空港、商業施設や介護施設などのさまざまな利用環境で、高齢者や子供、障害者など多様な人々に対して、安全をどう確保するかが重要となる。


国際規格案の適用範囲

産総研では、これまで様々なプロジェクトを通じて行った開発や実証実験などの成果として、リスクアセスメントなどの安全性評価やリスク低減方法の知見を蓄積してきた。その結果、ロボットの設計、製造段階で製造業者が意図した使用の範囲にとどまるような基本形態以外に、例えば異なる製造業者による複数のロボットを同じ場所で同じ時刻に運用してサービスを提供するなどの場合では、使用範囲が広がるため製造時には想定していなかったリスクに対処する必要があることがわかった。

ロボット製造業者が意図した使用の範囲と運用内容(基本形態)

複数のロボットを運用する際の製造業者が意図した使用の範囲と運用内容(統合形態)

今回の規格案では、複数のロボットのサービス提供時においても安全を確保できるよう、ロボットサービスを提供しロボットを運用する同プロバイダーが、一般の受益者や周囲の第三者の安全を確保するために独自に行うべきリスクアセスメントやリスク低減方策などの安全管理とマネジメントについて規定している。


安全マネジメント

サービスロボットの安全規格ISO13482などで示されるロボット自体の安全性は確保されていることを前提として、同プロバイダーがそれぞれに行う個別のロボットサービス特有の安全上の課題や問題について、リスクアセスメントによって明らかにし、安全管理などで運用時のリスクを低減するものとなっている。またその他の品質マネジメント規格ISO9001や労働安全マネジメント規格ISO45001と同様の、トップマネジメントや体制構築、教育などの安全管理活動の継続的な実施と改善を求めている。





今後の予定と期待される効果

今回提案する国際規格案では、公共の場所等で、一般の人を対象にしたロボットサービスを提供する際の安全性の確保や、周囲の第三者への影響を考慮する必要がある場合を想定し、同プロバイダが実施すべきリスクアセスメントや安全管理、教育、運用体制、マネジメントシステムなどについて規定する。今後は日本発のロボットが世界中で活躍できるよう、早期の国際標準化にむけて議長として国際委員会での審議を進める予定だ。
同規格案が国際標準化されることにより、日本のみならず諸外国での安全・安心なロボットサービスの普及につながるとともに、市場の創出・拡大による産業競争力の強化に寄与することが期待される。

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ロボスタ編集部

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