学生たちが自律移動ロボットで自動運転とAIの技術を競う「AWSロボットデリバリーチャレンジ」開催!優勝は千葉工業大学

アマゾン ウェブ サービスジャパン(AWS)は、日本初となる学生向けロボットコンテスト「AWS Robot Delivery Challenge」を9月15日にオンラインで開催した(YouTubeライブ)。

「AWS Robot Delivery Challenge」の会場。オンライン開催のため、参加者も観客もオンラインでの参加。奥が司会と解説の席、手前にミニチュアの街の模型が見える

競技には自律移動できる小型デリバリーロボットを実際にミニチュアの街の中で走らせる。そのためハードウェアとしては共通のロボットを使うワンメーク。AIを使った自動運転のソフトウェア技術を駆使して、コース各所に点在する配送先ポイントに、ロボットが商品をいかに早く届けられるかを競う。

競技の舞台となる街のミニチュア模型。実際の名古屋駅周辺の道路を参考に作られた

競技に使われるのはRobotisの「TURTLEBOT3 Burger」(タートルボットスリー バーガー)。遠隔操作とAIよる自律動作に対応している。競技では自律動作が中心となり、遠隔操作もタイムペナルティとはなるものの可能となっている。

Robotisの「TURTLEBOT3 Burger」とその機能。公式ホームページより

AWSジャパンからは開発環境としてAWSの利用権がチームの人数によって与えられ、「AWS RoboMaker」やオープンのツールを使ったり、参加者が自作したアプリケーションを活用するソフトウェアの開発によるコンテストとなっている。

競技中の画面。左がミニチュアの街を走る運搬ロボット、右上がロボットからみたカメラ映像、右下が競技者のシステムが生成したマップと自車推定の位置

競技の募集に対して118チームから応募があった。9月15日の本戦には、シュミレータでの予選を勝ち抜いた12の学生チームが進出した。

解説者としてRobotisやAWSからシステム開発のプロたちが登場。技術的なポイントをやさしい言葉で解説し、MCとともにコンテストを盛り上げた。

本戦で12チームが競技を行なった結果、上位5チームに絞られて同日の決勝戦に進出した。本戦から決勝へは関西大学、慶應義塾大学、豊田工業高専、宮崎大学、千葉工業大学が進出。
1発勝負のタイムトライアルの決勝戦では、千葉工業大学の、池邉 龍宏さん / 渡部 蒼也さん / 高橋 秀太さん / 高見 俊介さん チームがみごと優勝に輝いた。

決勝戦の結果 1位 千葉工業大学、2位 関西大学、3位 豊田工業高専、4位 慶応義塾大学、5位 宮崎大学

リモートのため参加者は会場には不在だったが、表彰式はアマゾンウェブサービスジャパンの代表取締役社長 長崎忠雄氏が駆け付けて発表が行われた。

前列向かって左がアマゾンウェブサービスジャパンの長崎社長




競技の概要

今回のコースは前述のように、名古屋駅前の実際の道路を参考にしてミニチュアが作られた。
競技の具体的な内容は、4つの荷物を自律運搬ロボット(ROSのリファレンスロボット)に載せて、それぞれ指定された場所に運び、最後は再びスタート地点に戻るまでの所要時間を競うもの(ポイントに着いたらスタッフが手で荷物を降ろす)。

四角のマークがスタートであるゴール地点。全体の平面マップ。ロボットは黄色いライン、A~Dに停止して、スタッフが荷物を取り上げてくれるのを待つ。Aから回っても、Dから回っても構わない

簡単に言うと、スタート地点からコース上を走り、AからD、またはDからAを回り、各ポイントで停止して、いかに早くゴール地点(スタート地点と同じ)に戻れるか、という競技になる。これを基本的には自律走行で行う。

技術的なポイントは次の4つ。

1.スタート地点から直進できるか(上の画像の①)
2.コーナーを曲がれるか(上の画像の②)
3.引き返せるか(上の画像の③)
4.アルゴリズムに乗っ取って最適なコースを自律計算して走れるか(上の画像の④)

AからDポイントの黄色線周辺でロボットが停止していると、スタッフが荷物を降ろして、そのポイントへの配達をクリアしたとみなす




障害物や違法駐車車輛がある

「地図通りに走ればいいんじゃないか」と感じるかもしれないが、そもそも自律走行でロボットカーがコースを順調に回ることからして簡単なことではない。更に、難しくするポイントとして障害物と違法駐車車輛がある。障害物は電柱。当時になって数本の電柱が配置された。これはすべての競技者に対して同じ場所での障がいになる。

ロボットが左折すると電柱が目の前に現れたところ。電柱は当日になって敷設されたもの。ロボットはコース上の電柱を自律検知して障害物として回避して走行を続けなければならない

もうひとつが、違法駐車トラックが路肩に駐められていること。各競技者にとって駐車の場所はバラバラとなる(路駐のパターンが20通り用意され、くじでどこに駐車トラックが配置されるかが決まる)。

競技者ごとに異なる位置に路駐しているトラックが配置される。予定外に現れた障害物を避けて通行する技術が求められる。くじ運も、結果にやや左右するかもしれない

そしてなにより難しいのはロボットとしての実践力が試されること。予選では各競技者ともロボットとコースともにシュミレータ内で競技が行なわれてきた。いわばソフトウェア内の机上の理論値でロボットを正確に動作させることが競われた。一方で本戦は、街の模型の中をロボットの実機で走行することになる。シュミレータ上ではまっすぐ直進していても、リアルではロボットがやや曲がって走ったり、タイヤが空転するなどしてオドメトリに理論上のマップとのブレが生じる。これをどう補正するか、これをどのように吸収するかがポイントとなる。実はこれはロボット開発にとって、最も重要で難しいポイントのひとつだ。
実際、この大会でも予選上位だったチームが、リアルの本戦ではよい結果を出せなかったことがそれを物語っていると言えるかもしれない。ロボットはリアルであるが上に難しい。


オンラインの競技画面には街全体に設置された数か所の固定カメラからの映像(左)、ロボットに搭載されたカメラ映像、ロボットが認識している周囲の走行マップ画像が表示されている。ロボットの実際の位置と、ロボットがマップ上の自車の位置がずれてしまったり、コースの認識がうまくできていないと画面上でその状況を観衆も確認することができる。

また本戦では、時間内であれば「リトライ」ができるのも特徴のひとつだ。例えば、1チームの持ち時間は10分で、豊田工業高等専門学校の場合は初回は多少のトラブルで時間がかかってゴールしたが、制限時間がまだ余っているため、2回めのトライを行い2分7秒、3回めのトライではトラブルでタイムアップとなった。この場合、2回めのリトライの2分7秒が採用される。


その他、ペナルティは次の通り。例えば、ペナルティを上手に使うのも作戦のひとつだ。例えば手操作(遠隔操作)による操縦はペナルティになるが、電柱やコーナーの角にぶつかってロボットがスタックしてしまった場合などは遠隔操作で迅速に元のコースに戻るのも作戦のうちだろう。






本戦出場チームの結果

本戦では、将来のデベロッパーやサイエンティスト候補の学生たちによる、上位5チームを争う熱い戦いが繰り広げられた。本戦出場チームの結果は次のとおり

本戦は関西大学、慶應義塾大学、豊田工業高専が好成績で決勝戦に進出。豊田工業は播磨さんひとりで参加

本戦では唯一の高校生チーム海城高校は授業を終えた教室から競技に参加


本戦では5位通過だった千葉工業大学チームが、ぶっつけ本番、1回きりのアタックの決勝戦では奮起。みごと優勝の栄冠を勝ち取った。




優勝した千葉工業大学チーム

優勝した千葉工業大学チームの池邉 龍宏さん/渡部 蒼也さん/高橋 秀太さん/高見 俊介 は同じ研究室のメンバー。研究内容は自律ロボット専門。今回の大会は得意の分野だったと言えるだろう。大会が終了した後、池邉さんと渡部さんが報道関係者の取材に対応してくれた。

優勝した千葉工業大学チームの池邉 龍宏さんと渡部 蒼也さん(チームを代表して)

池邉さん/渡部さん

今回、自律移動ロボットを開発する上で初めてクラウド環境を使った点が難しかったです。また、シミュレータ上では起こらなかったことが本戦での実機では起こりました。早く走るためにコースをギリギリまでせめて走るとオドメトリにずれが生じたりしました。実機環境でのオドメトリの制御の難しさを痛感しました。

また、将来の進路や夢については同じ研究室ということもあって、ふたりとも次のような展望を語った。

池邉さん/渡部さん

公道を走るような自動運転関係の仕事に就きたいです。ほかには屋内でも高齢化社会に役立つような、警備・運搬などの自律移動ロボット系の研究と開発もやってみたいです。

今回の「AWS Robot Delivery Challenge」は、優勝したふたりにとって日頃の研究成果を試す場でになったのではないだろうか。
自律移動ロボットや自動運搬車は社会に役立つ実践的なテーマだ。「AWS Robot Delivery Challenge」はその点でも実務につながる開発コンテストとして、大きな意義を果たしたと感じている。これに触発されて多くの研究者・開発者を目指す学生達が、この分野に興味を持ってもらえたらうれしい。


今回は参加者の皆さんもリモートで

(順不同:一部)












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神崎 洋治
神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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