新型協働ロボット、アシストスーツ、消毒ロボットや遠隔接客 新型コロナ禍の「第5回ロボデックス」レポート

「第5回ロボデックス ロボット開発・活用展」が2021年1月20-22日の日程で、東京ビッグサイト青海展示棟にて開催された。新型コロナ禍による非常事態宣言中の開催となり、出展側・来場者側共に数を減らしての開催だったものの、青海展示棟の会場内はそこそこの来場者が歩いていた。動画を中心にざっとご紹介したい。なお、先にお断りしておくが、展示の全てをご紹介するわけではない。


カワダロボティクス 双腕協働ロボット「NEXTAGE」

カワダロボティクスは双腕の協働ロボットNEXTAGEを使ったデモを二つ出展。一つ目はネジ締めである。人が使う道具を使って、ネジ締めを行うことができる。

■ 動画

もう一つはコンベアトラッキングである。頭部と手先のカメラを使って、コンベア上を流れる物体のピック&プレイスを行うことができる。こちらは実装したばかりの新機能で、現在顧客への提案中とのことだ。

■ 動画


Doog 追従搬送ロボットサウザー

Doog(ドーグ)は人に追従する搬送ロボット「サウザー」の標準モデルのほか、45cm四方程度の小型モデル「サウザーミニ」、農業向けクローラーロボットの「メカロン」を参考出品。「サウザーミニ」は2021年内の発売を、「メカロン」は貸与・テスト販売を2021年上期から始める予定。

サウザーミニ

メカロン


住友商事マシネックス DOOSAN Robotics

住友商事マシネックスは2019年11月から販売代理店となっている韓国DOOSAN Roboticsの協働ロボットを使ったパレタイジングシステムをデモ。

■ 動画


豆蔵 軽量協働ロボット「Beanus2」

豆蔵は10kg可搬の7軸協働ロボット「Beanus2」を今回初お披露目。三井化学、日本電産シンポと共同で開発してきたロボットで、設計コンセプトは「軽さ」と「柔らかさ」。三井化学の樹脂成型技術でフレームの大部分に樹脂を使って、金属と比べると最大1/2まで軽量化。金属との接合が必要な部分には金属樹脂一体成型技術を使用しており剛性を確保した。そして日本電産シンポによる摩擦の小さい高バックドライバビリティ減速機を用いることでモーター電流値から高精度に外力を推定。トルクセンサーレスでロボットアームを柔らかく制御することに成功した。

豆蔵は直接ロボットを販売するのではなく、今回の開発を通じて得た新たな協働ロボットの設計手法をメーカーに提案し、開発支援を行う。また、工場の作業工程自動化支援、ロボット導入支援ビジネスも行なっているとのこと。

■ 動画


シリウスジャパン ピッキング用AMR

シリウスジャパンは物流倉庫向けのAMRとして同社が開発・販売している、協働型ピッキング補助ロボット「FlexComet」と、ペイロード50kgの軽量モデル「FlexSwift」をデモ。FlexCometは2020年8月から株式会社関通の楽天向け倉庫で30台が使われている。RaaSで提供されており、最速2時間で設置できるという。オリコンとの組み合わせも様々なタイプがあるとのこと。ロボット全体はマネジメントシステム「FlexGallaxy」によって管理される。WMSやMESとの連携も「FlexGallaxy」が行う。

■ 動画

シリウスジャパン AMR「FlexSwift」


NTT東日本 「ロボコネクト」

NTT東日本は、ヴイストンの「Sota」を使った、ロボットによるブース案内や検温ソリューションを出展。クラウド型ロボットプラットフォーム「ロボコネクト」を使って多言語案内やチャットが可能。また、Sotaを基盤として開発コストを下げつつオリジナルデザインのキャラクターを用いることもできる「オリジナルロボットソリューション」もアピールしていた。音声はNTTメディアインテリジェンス研究所によるディープニューラルネットワークを活用した音声合成技術「FutureVoice Crayon」を使うことで人間の声と遜色ない声を合成できるという。製作に必要な最短期間は約三ヶ月。

NTT東日本「オリジナルロボットソリューション」。これは「井上社長ロボット」


タカハタプレシジョン 射出成形にロボティクスをプラス

金型製造や高精度射出成形技術による精密成形部品を手がけるタカハタプレシジョンは、その技術を活用したロボットを複数展示した。HiBotの点検ロボット「SQUID」、Magik Eye inc.の高速で計算が軽い3Dセンサーを搭載したロボット、エレファンテックとの共同開発による樹脂製品と電子回路を一体化させることでロボットに触覚機能などを持たせることができる「IMPC (In-Mold Printed Circuit)」技術だ。エレファンテックの技術は他社の手法と比較すると工程がシンプルでリードタイムが少なく、環境負荷も少ない。

Magik Eye inc.の3Dセンサーを搭載したロボット

樹脂・電子回路一体成型技術「IMPC」。ロボットの筐体に用いることでタッチセンサーやインジケーターにできる

HiBotの点検ロボット「SQUID」。従来はできなかった配管の肉厚連続測定が可能になったという


三明 移動型人協働ロボットAGBOT

FAインテグレータの三明は生産現場で複数ロボットを効率運用する技術「AGWORKS」、それによって制御される「移動型人協働ロボットAGBOT」と他のロボット(外観検査ロボットけんた君、ばら積みピッキングロボットの双腕MUJIN ピッキングロボット)が連動して動く様子をデモンストレーションした。

2020年1月から販売している「AGBOT」は、安川電機の6軸協働ロボットを自律台車上に乗せたモバイルマニピュレータで、単なる搬送だけでなく、移動先でそれぞれ異なる作業を行わせることができる。ロボットによって工程間を繋ぐイメージだ。

搬送台車の下部には収納棚を搭載。ワークを格納したりハンドリングできる。最大積載重量は50kg。給電はワイヤレスで行う。台車の停止精度の問題に対してはセンシングとロボットの補正で対応する。「AGWORKS」は最大60台のAGBOTの配車スケジュール・作業内容・稼働状況を管理できる。

■ 動画


イノフィス 「腕上げ作業用アシストスーツ」

人工筋肉を用いた149,600 円(税込)の中腰作業用アシストスーツ「マッスルスーツEvery」を展開中のイノフィスは、腕をサポートする「腕上げ作業用アシストスーツ」を初出展。点検や果樹収穫など、主に肩を上にあげる作業を補助する。試着も可能だった。2021年春に発売予定とのこと。

イノフィス「腕上げ作業用アシストスーツ」


ダイドー 上向き作業用アシストスーツ「TASK AR 3.0」

ガススプリングを使った上向き作業用アシストスーツ「TASK AR」を展開しているダイドーは、より簡易なモデル「TASK AR 3.0」を参考出展。ゴム(ショックコード)を用いた簡易なモデルで、本体重量は1.7kg。こちらも建築作業や土木作業、農作業を対象としている。2021年春に発売予定だ。このほか、バネとラッチ機構を使って前腕をアシストするデバイスも2021年春に発売予定だとのこと。



アセントロボティクス「Ascent Pick」

アセントロボティクスは製造現場向けのピックアンドプレイス用ソフトウェア「Ascent Pick」をデモしていた。2020年12月から販売しているシステムで、機械学習を用いることで安価なカメラを使ったピッキングを可能にする。照明の変化など外乱に強く、ワーク同士の干渉を自動で避ける。AI学習のためのデータも人によるラベルづけは不要だという。

■ 動画


山形大学ソフトマターロボティクスコンソーシアム

ソフトロボティクスの研究開発を行う山形大学ソフトマターロボティクスコンソーシアムは、配管点検を想定した繊毛振動推進ロボットや、ハイドロゲルクラゲ、やわらかいハチ公ロボット「ゲルハチロイド」などを出展していた。ゲルハチロイドは涙を流すこともできる。

ただ、出展物以上に気になったのが遠隔からの来場者対応だった。遠隔サービスロボットの企画・開発を行なっているEnkacの遠隔接客システムを活用したもので、対話のほか、首振りもできる。時間によって対応者は異なり、筆者がブースを訪問したときは多田隈理一郎准教授が対応してくれた。

山形大学ソフトマターロボティクスコンソーシアムはEnkacの遠隔接客システムを活用して出展


くうかん 業務用清掃ロボット

くうかんは国内販売総代理店として契約しているADLATUS Robotics社の業務用床洗浄ロボットや、Gaussian Roboticsの「ECOBOT」を出展した。機能の一部は国内向けにカスタマイズしているとのこと。作成スケジュールどおりに清掃し、清掃作業に人の介入を必要としないことをコンセプトとしている。対象は店舗、病院、モール、オフィスなど。吸引タイプとスクラバータイプがある。

■ 動画


カンタムウシカタ UVD Robots

カンタムウシカタは同社が国内販売代理店となっているデンマークのロボット「UVD Robots」をデモ。新型コロナ禍で中国が2000台購入したことでも話題になったUV-C照射ロボットだ。SLAMを行い、任意の場所で照射させることができる。主に夜間の運用を想定しているが上部には人感センサーがあり、動くものを検知した場合は勝者が止まる。照射にかかる時間は25平米で約10分。

台車部分はMiR社のもので中央部に駆動輪があり、意外と小回りが効く。操作はタブレットで行い、そのタブレットの自動充電も台車部分で行うことができる。搭載されている除菌ランプはシグニファイの254nm UV-Cランプ。ボストン大学との共同研究により、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)に対して乾燥条件、湿式条件いずれにおいても失活することが実証されているという。ネックは価格とのこと。病院のほか学校や空港、工場などで用いられている。

■ 動画


協栄産業、ギークプラス、三菱電機システムサービス

協栄産業、ギークプラス、三菱電機システムサービスの三社は「ロボデックス」併催の「スマート工場EXPO」に共同出展。搬送ロボットのほか、ソーティングロボットは今回が初出展とのこと。

またDoogの台車ロボット「サウザー」を複数台連携させて遠隔操作できるようにする「Thouzer Links」というシステムも合わせて提案されていた。「サウザー」は人の後ろを追従するロボットだが、それだけでは無人化できないので、遠隔操作できるようにするためのソリューションだ。現在提案中とのこと。

■ 動画


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森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

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