スマイルロボティクスの配膳・下膳ロボットをPCR検査に活用 非対面・非接触で自動搬送「Tokyo Robot Collection」

スマイルロボティクスが開発したアーム付き自律搬送ロボット「ACUR-C」が、PCR検査の検体と書類の自動搬送業務を担当した。「ACUR-C」はもともと、飲食店の配膳・下膳を全自動で行えるように開発された機体だが、アーム付きと自動搬送という特徴を活かしてPCR検査への活用が「Tokyo Robot Collection」で試された。(動画はこの記事の末尾に掲載)


物流サービス等の社会の安定の維持に不可欠なサービスや、資格・検定の試験会場等、様々なサービスにおいて重要な役割を担っている受付案内業務は、昨今の新型コロナウイルス感染症の流行より、従来の受付案内業務は人と人との接触を減らし、感染リスクを低減しつつ安心・安全に実施することが求められている。
更に、交通移動やスポーツ大会の実施等様々な活動を継続するため、PCR検査のニーズが増えたことから、新たに安全に行う必要のある受付案内業務として検体等の受け取り業務が生じている。しかし、これらの業務は正確性が求められることから、現状では人の手で行うことが基本となっており、いかに正確性を確保しつつ、接触機会を減らして実施することが課題である。

この問題を解決すべく、東京都が主催する「Tokyo Robot Collection」は2021年2月28日と3月1日の2日間に渡って竹芝客船ターミナル(東京都港区)で「PCR検体等の受け取り・受付業務や受け取り後の搬送を、模擬的にロボットにより行う」という実証を実施。竹芝客船ターミナルでは伊豆大島や八丈島等を繋ぐ客船が運航されている。

東京大学情報システム工学研究室(JSK)出身の技術者が集まり、2019年に創業したロボット開発企業、スマイルロボティクス株式会社が同実証に採択され、「新しい日常における受付・案内に関わるサービス事業等の安全な実施に向けた実証」を行った。同社の開発したアーム付き搬送ロボットACUR-Cが、PCR検体および書類の搬送を担当した。

ACUR-C_Tokyo Robot Collection by スマイルロボティクス
【Tokyo Robot Collectionとは】
同事業は、東京の課題解決に向けた新しい社会実装モデルを形成するとともに、ロボット分野等の先端テクノロジーのPRを行うことを目的としており、都内の様々なフィールドにおいて、移動支援(自動車の自動運転システムを除く)・警備・清掃・接客等の多様な用途に関し、サービス事業等の場において、人間と共存しつつサービスを提供するロボットの実証を実施している。




ACUR-Cと今回の活用方法

ACUR-C(アキュラシー)は、飲食店の配膳・下膳を全自動で行えるよう、同社が開発中のアーム付き自動搬送ロボットだ。最大の特徴は、物や人を傷付けない低出力モーターを使いながらも重いものを持つことが出来るロボットアームアームハンド(特許出願中)にある。このアームハンドにより、荷物の積み下ろしを無人で安全に行うことが出来る同ロボットは、安全で役に立つ、次世代の非接触な自動搬送を実現する。また、高度な3次元空間の認識技術により、SLAM(自己位置推定と環境地図作成を同時に行う技術)を用いて人や障害物を認識・回避しながら自律移動を行う。

ACUR-CがTokyo Robot CollectionでPCR検体を搬送2 by スマイルロボティクス

同ロボットは、これまでは主に飲食店や宿泊施設を対象に、利用者も店員もお皿の乗せ換えをする必要のない「配膳・下膳の無人化」のために、その活用法を提案してきたが、コロナ禍において、飲食店のみならず他の業種やシーンにおける活用の相談も増えたことより、新たな活用用途の1つとして、同実証実験では「PCR検査における検体の運搬」を担当。事故やトラブルもなくその任務を無事に遂行した。今回は東京都による実証ではあったが、同社は今後も引き続き「非接触での搬送」や「人が触れたくない物の搬送」など、アーム付き⾃動搬送ロボットによるサービス提供の検討および追加開発を積極的に進めていくと述べている。なお、同実証は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業にて開発した「モバイルマニピュレーター型自動下膳ロボット」の成果を活用して行うものだ。


実証風景

受付で受領した書類などの回収地点に移動

アームを書類などの回収地点に移動

積み込みのために伸ばしたアームで、書類や検体の乗ったトレイを掴む

トレイごとロボットに積み込み

回収用の新しいと例を設置

箱詰め作業を行う地点に移動し、積み下ろす




Tokyo Robot Collectionの同実証について

同実証では、一部の島しょへ向かう船の乗船客等に試行的にPCR検査を実施している客船ターミナルを実証フィールドとして、PCR検体等の受け取り・受付業務や受け取り後の搬送を、模擬的にロボットにより行った。非対面・非接触・遠隔で実施することで、対応スタッフや利用者の負担軽減、感染リスクを低減することを目指して実施。また、同実証を通じて、物流サービスや試験会場等の従来の受付案内業務を伴う事業者の課題解決にも応用可能な、発展的な実証も目指す。なお、今回は実際に実施しているPCR検査の受付は行わず、模擬的に受付業務を実証として実施した。


同実証の概要
実証フィールド 竹芝客船ターミナル(東京都港区)
フィールド提供者 東京都港湾局
実証時期 2021年2月28日・3月1日
実証結果 物資の積み込み・積み下ろし機能を持った搬送ロボットにより、複数の受付で受領した書類や物資を、 人手が介在することなく一か所に集めることができた。



■【動画】Self-driving transfer robot ACUR-C at “Tokyo Robot Collection” hosted by Tokyo prefecture

■【動画】Tokyo Robot Collection 2020_受付・案内に関わるサービス_03.ACUR-C/スマイルロボティクス株式会社

Tokyo Robot Collection 公式Youtubeチャンネル
詳細情報(Tokyo Robot Collection公式ページ内):
http://www.tokyo-robottech.tokyo/report/page27.html
Tokyo Robot Collection:http://www.tokyo-robottech.tokyo/

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ロボスタ編集部

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