スマートフォンで撮影したイチゴの生育画像をAIが解析 花数、果実熟度、葉面積の自動計測精度は90%以上 キヤノンITSが発表

キヤノンマーケティングジャパングループのキヤノンITソリューションズ株式会社(以下、キヤノンITS)は、2019年から2020年にかけて実施したスマート農業技術の開発・実証プロジェクト「阿蘇イチゴスマート農業実証コンソーシアム」の検証実験結果を発表した。


スマートフォンを活用した生育特徴量計測技術の検証

キヤノンITSは農林水産省「令和元年度スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」の公募において採択され、2019年から2021年にかけて「阿蘇イチゴスマート農業実証コンソーシアム」の実証グループに参画。同事業では促成イチゴ栽培におけるハウス内環境および作物生育情報を活用しながら、局所適時環境調節による省エネでの多収安定生産の実現と、自動選別パック詰めロボットを活用した出荷調整作業の省力化の検証を実施。その中でキヤノンITSは、イチゴ生育画像解析システムと遠隔業務支援サービス「VisualBrain」を活用し、スマートフォンと画像情報を用いたイチゴの花数、果実熟度、葉面積の生育特徴量計測技術の実証実験を行った。

1.イチゴ生育画像解析システム
映像情報から現在までのイチゴの生育状況を数値化し、また未来の収穫量を予測するシステム。

2.遠隔業務支援サービス「VisualBrain」
遠隔地で発生している事象をリアルタイムにオフィスと共有し、オフィス側からも状況に応じて適切な対応を行うことができる、双方向型の映像コミュニケーションサービス。

3.生育特徴量計測技術
イチゴの生育画像からAIが花の数や果実の⽣育ステージ等を自動判別し、生育状況の指標として定量化する技術。


スマートフォンのカメラで初期費用を抑えた生育解析が可能

熊本県阿蘇市は、イチゴの中・大規模栽培において、雇用労働力を有効活用することで高収益を維持しながら営農されており、全量共同選果による販売の実現と生産者の負担軽減を進めている先進産地。さらなるイチゴ生産拡大と収益力向上を図るため、スマート生産技術と共同選果施設を活用した、生産から出荷までの多収省力型一貫体系をめざしている。

実証実験では九州沖縄農業研究センター内のイチゴ品種「恋みのり」「さがほのか」の生育状況をスマートフォンにて一定期間にわたり撮影し、解析に適した高精細かつ定点の画像データを収集。キヤノンITSはイチゴ生育画像解析システムを使った画像解析で得られたデータを「VisualBrain」を通じてクラウドシステムに蓄積し、遠隔から現地の映像や解析結果を閲覧できる環境を構築した。スマートフォンでの簡易な生育解析として実証したところ、2品種の花数、果実熟度、葉面積の生育特徴量の自動計測精度は90%以上を達成。これにより「多くの人が普段から持っているスマートフォンのカメラ機能を使って、初期費用を抑えた生育解析が可能」「スマートフォンは高精細画像の撮影ができるため、高精度な生育解析が可能」の2点を確認した。


次回は遠隔指導や農作物のリモート審査の実証実験を行う

キヤノンITSは農林水産省委託事業「令和3年度スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」に応募し、採択された。次回のプロジェクトでは「阿蘇イチゴ輸出スマート農業実証コンソーシアム」に参画し、令和元年度スマート農業技術の開発・実証プロジェクトでの経験を生かしながら、イチゴ生育画像解析システムおよび「VisualBrain」を活用したスマートフォンによる生育計測から収量予測、農業熟練者による映像共有を活用した遠隔指導や農作物のリモート審査の実証実験を開始する。

キヤノンITSは2015年より農業分野においてカメラとAIを活用したスマート農業技術の研究開発に取り組んできた。具体的にはイチゴの栽培において、花や実の数、葉の大きさ、葉の色などの生育情報をICT技術を用いて数値化するAIを開発。さらに、この情報に温度や湿度などの環境データを組み合わせることで、マルチモーダルな情報をもとにした収穫量予測AIの開発に取り組んでいる。今後も、ICT技術を活用した持続可能な農業の推進と生産・サプライチェーンにおける食品ロスの削減に貢献できるよう、技術開発を進めていくとしている。

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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