損害保険ジャパン株式会社、株式会社ティアフォー、アイサンテクノロジー株式会社は、国立大学法人東京大学 大学院情報理工学系研究科の加藤 真平准教授の研究室とともに、自動運転システムにより自律走行するレベル4以上に対応した「自動運転システム提供者専用保険」を開発したことを発表した。なお、自動運転導入事業者が事業に活用する自動運転車に対して、自動運転システム提供者が保険を付保する契約方式は国内初となる(損保ジャパン調べ)。
自動運転を導入する事業者に安心・安全を提供
「自動運転システム提供者専用保険」はティアフォーなど自動運転システム提供者を記名被保険者として、自動車保険における対人賠償・対物賠償・人身傷害・車両保険・ロードアシスタンスなどの補償を組み込み、サブスクリプション型で自動運転サービスの一つとして提供する新たな保険。自動運転を導入する事業者は保険手配の負担から解放されるとともに、万が一事故が発生した場合でも、サービスに組み込まれた保険により、幅広い補償を受けることができる。これにより、安心して自動運転サービスを導入することができる。
同保険はまず自動運転システム「Autoware」の開発を主導するティアフォーへ提供し、ヤマハ発動機株式会社とティアフォーとの合弁会社である株式会社eve autonomyが展開する自動搬送サービス「eve auto」に適用する。当面の間、2社による自動運転サービスの実装とともに、レベル4自動運転向けの保険・サービスの検証を行い、その後、多方面への展開を目指す。
「自動運転システム提供者専用保険」の背景・経緯
経済産業省と国土交通省が主催する「自動走行ビジネス検討会」では、2022年度を目途に限定エリアにおいてレベル4自動運転サービスを実現し、2025年度までに全国40カ所以上にサービスを広げる目標を掲げている。また、工場等敷地内ではすでに無人自動運転サービスの導入に向けた検討が進められている。
損保ジャパンは2017年5月から東京大学とレベル4以上の自動運転技術に対応する保険商品の開発に向けた共同研究を行なってきた。また2019年2月には、ティアフォーおよびアイサンテクノロジーとともに、インシュアテックソリューション「Level Ⅳ Discovery」の共同開発に向けた業務提携を行い、自動運転の安心・安全な社会実装を支えるソリューションの開発を進めている。これらの取り組みと、ティアフォーの創業者でもある東京大学大学院情報理工学系研究科准教授の加藤真平氏が研究代表者を務める文科省JST CREST事業の研究課題「完全自動運転における危険と異常の予測」の研究成果を活用し、「自動運転システム提供者専用保険」を開発した。
保険以外のインシュアテックソリューション
1.自動運転専用24時間365日対応の「事故トラブルサポート窓口」を新設
損保ジャパンは2018年9月に自動運転車の事故トラブル対応サービス研究拠点「コネクテッドサポートセンター」をSOMPOグループの株式会社プライムアシスタンスの東京センター内に開設し、これまで数多くの実証実験への参画を通じて、自動運転時代のサポートについて研究を進めてきた。今回、「自動運転システム提供者専用保険」が付帯される自動運転サービスの導入事業者に向けた、事故トラブルサポートの実務対応を行う専用窓口を秋田センター内に新設。平日昼夜に加え、休日夜間も稼働するコールセンターとして、さまざまな関係者が連携して提供する自動運転サービスの事故トラブル時の対応起点としての役割を担う。まずは電話での受付対応から始め、将来的には各種データと連携した対応窓口へと発展させ、サポート内容も拡充させていく計画。
2.自動運転システムの不具合予測および解析にAI技術を導入
レベル4の自動運転では運行設計領域(ODD:Operational Design Domain)を定義することによって、限りなく100%に近い精度で危険と異常を予測し、想定外の事態が起こる可能性がある場合に、そこから最小限の移動量によって緊急停止させるといった安全対策を講じることができる。損保ジャパンは文科省JST CRESTの支援を受けながら東京大学とともに想定されるODDの範囲で自動運転システムの不具合が発生する確率を数値化して自動運転保険の設計に適用する技術、並びに不具合が発生した場合にその原因を推測して事後のシミュレーションにより特定する技術に関する研究を進めてきた。現在の課題はレベル4の自動運転の対象となるODDが極めて限定的であることであり、今後、一般市街地のような広域環境において多種多様な天候や交通流への対応も進めていく、としている。
3.自動運転リスクアセスメントを高度化
リスクアセスメントは自動運転車の安全な走行・運用を支援するソリューション。走行ルートの調査に加え、事故に関するビッグデータの活用や、自動運転サービスを導入する事業者への安全教育なども提供する。現在、自動運転普及期を見据え、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の支援も受けながら名古屋大学および株式会社 Human Dataware Lab.とともに「AI技術を取り込んだ自動運転向けデジタルリスクアセスメント」の研究開発を進めている。
今後について
損保ジャパンは事故に関するビッグデータやリスクコンサルティングに関するノウハウ、産官学連携によるテクノロジーと研究成果を融合したソリューション開発を進めていく。またティアフォー、アイサンテクノロジーと連携し、自治体への自動運転導入支援を含め、引き続き安心・安全な自動運転社会の実装に貢献していく、としている。
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山田 航也横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。