「第6回 全国小中学生プログラミング大会」優勝はUnityで開発した3D FPSゲーム、最年少は小学1年生、AI/AR/SDGs関連作品も登場

小中学生を対象としたプログラミングコンテスト「第6回 全国小中学生プログラミング大会」の最終審査が2月27日(日)にオンラインで開催された。
この大会は、PC・スマートフォン・タブレットで動作するソフトウェア、またはロボット・電子工作などのハードウェアで、自身によるオリジナル作品であれば、使用する言語や作品の形式は一切問わず、テーマの指定などもないため、自由な発想で創作できることで知られている。

ゲームやシュミレータ、防災アプリ、ロボットなど、自由な発想で参加できる。今回はコロナ禍の影響か、ソフトが多く最終選考に進出したロボットは1作品のみだった。(画像上段「配り係さん」、下段左「COVIDシミュレーター」、下段右「Reflection」)

今回は、コロナ禍、募集期間も短かったにもかかわらず200件を超す応募があり、一次審査、二次審査を経て、入選12作品が決定(エリアパートナー推薦からの作品1作品含む)。小学1年生から中学3年生までの作品が並んだ。

最終審査会は、これまでの二次の選考を勝ち上がった入選12作品を対象にオンラインで開催された。最年少は小学1年生。ソフトウェアが11作品、ハードウェア+ソフトウェアが1作品

1作品ずつ、予め動画で撮影した作品の紹介とプレゼンテーションを流した後、作品を開発した参加者が審査員からの質問に答えるカタチで、作品のコンセプトや苦労した点などを説明した。

審査員からの質問に回答する参加者(中学3年生の谷悠汰さん(画像の中央上))




グランプリはUnityで開発した「FPS_MonsterBattle」

グランプリは、笠見旭陽さん(小学6年生)の「FPS_MonsterBattle」が受賞した。「FPS_MonsterBattle」は、笠見さんの「3Dの楽しいFPSゲーム(一人称視点のシューティングゲーム)を作ってみたい」という思いから、初めてUnityに挑戦して作ったというゲーム作品。

「FPS_MonsterBattle」のゲーム画面。FPSとは、一人称視点のシューティングゲームのこと。爆発の描写も審査員から高い評価を受けた

アイテムや武器など、3Dモデルも統合環境アプリケーション「Blender」で自作モデリングした


準グランプリは「写真に入れる世界」

準グランプリには高橋桃子さん(小3)「写真に入れる世界」が受賞。小学生が上位2つの賞に輝いた。高橋さんは「コロナ禍でしばらくどこにも行けなかったので、富士山や友達の家、海の中の宮殿など、行きたい場所に行った気持ちになれるアプリを作った」と語った。

いろいろな世界に行ってゲームをプレイ




優秀賞の最年少は小学1年生

優秀賞は学年によって3つの賞(中学生/小学校高学年/小学校低学年部門)が贈られた。

優秀賞 中学生部門は、野崎陽斗さん(中2)「RUBIK’S CUBE MASTER」が受賞。ルービックキューブを揃える手順を、図や実際の解き方を示して、解りやすく教えてくれるアプリだ。現状のルービックキューブの各面の色の並びを指定すると、すべての面を揃える手順を教えてくれる。

ルービックキューブを持っていても持っていなくても楽しめる。ルービックキューブの色配列を入力すると短い手順で揃える方法を教えてくれる

開発した動機は「誰もやったことのないものを作りたかった」(野崎さん)

優秀賞 小学校高学年部門は、小長井聡介さん(小4) 「現実シリーズ 5.xx 駅乗降客シミュレーター」が受賞。世界一利用客が多いと言われる新宿駅、満員電車がホームに到着した時の人の乗降をリアルに再現したシミュレータ。車両の設計や人の流れ、乗降口の周りに人がいて邪魔になっている場合など、さまざまなケースで乗降時間や混雑状況にどのような差が出るか、リアルさにこだわって作ったアプリ。




優秀賞 小学校低学年部門は、三澤康太郎さん(小1) 「Cyber City YOKOHAMA」が受賞。算数の問題を解きながら、サイバー世界を旅してコロナ前の横浜を知ってもらうゲーム。小学1年生ながら、ハキハキとしたプレゼンテーションが印象に残った。

三澤さんはプログラミングを4歳の頃にはじめた、とのこと

小学生1年生の三澤康太郎さんのプレゼンに審査員からもひと際大きな拍手が送られた


審査員特別賞は「コロナをめぐるぼうけん」

そのほか、審査員特別賞に山本匡一郎さん(小5)の「コロナをめぐるぼうけん」が受賞した。コロナウィルスが生き物を乗っ取るという架空の世界で、お医者さんにコロナウイルスの特効薬の材料を届けるアクションRPGゲーム。
今回はコロナ禍を反映したアプリが多く見られた。

独特のドット絵が懐かしい。音楽も自作した





奨励賞6作品

更に奨励賞として、下記の6作品が選ばれた。

加藤諄之さん(小3) 君が10年後の世界を作る ~地球温暖化のない街づくり~
佐藤翔太さん(小4) うさぎとかめ
谷悠汰さん(中3) Reflection
口田道哉さん(小5) COVIDシミュレーター
中島莉衣奈さん(小4) ぼうさいサーチ
ロボットの学校 秋葉(濱渦康汰さん 小6、大浦苺夏さん 小5、若林英明さん 小5、濱渦策子さん 小4) 配り係さん




ロボスタが最も注目した作品は

受賞作品はどれも素晴らしいものばかりだった。
更にその上で、ロボスタの著者がとても気に入って、関心を持った作品を3つ紹介しておきたい。


温暖化対策を学ぶ「君が10年後の世界を作る ~地球温暖化のない街づくり~」

最も関心を持った作品は「君が10年後の世界を作る ~地球温暖化のない街づくり~」だ。SDGsに向き合った加藤諄之さん(小3)の作品。加藤さんは「小学生に地球温暖化の影響と原因、対策を、どうやったら広く学んでもらえるか、を考えた」と語った。シミュレーション&アクションゲームの構成となっているが、シミュレーターはいわばSDGs版シムシティのような感じ。

第1ステージで温暖化とは何か、何が原因で起こるのかなどを学習し、温暖化対策を考えるシミュレーションゲームへと入る

「温暖化を考えると街中にたくさんのソーラーパネルを設置すれば有効だと思いますが、住む場所や食べ物を作る畑などがないとそれも困ってしまうので、”幸せ度”を表示することでバランスよい社会を考える設定にしました」(加藤さん)は語った。

街づくりをイメージできるアプリ画面。ソーラーパネル、木々の公園、住居、畑など、バランスの良い街づくりを工夫してみよう

世界的な社会問題となっている「温暖化」だが、温暖化ばかりを考えず、食べ物や住む場所などの課題もバランス良く考えるきっかけになって欲しいと願ったようだ。また、ゲーム性を持たせることで、楽しみながら温暖化のしくみや対策、解決を考える内容を目指した。
SDGsに無頓着な企業や社員はまだまだ多い。しかし、教育現場でSDGsや環境問題をガッチリ学んでくる今の子ども達がやがて社会を支える一員になる。そんなときにSDGsに無頓着な社員や経営者は果たしてどう見られるだろうか?


あなたの街を舞台にARで災害を体験「ぼうさいサーチ」

2つめの作品は、中島莉衣奈(小4)さんの作品「ぼうさいサーチ」だ。
「手軽で解りやすい防災体験」をコンセプトに、ユーザー達が実際に街に出かけて危険な場所を登録して情報を共有したり、実際の街でAIとARを使って災害や危険な場所を疑似体験できるアプリ。

アイコンを含めてイラストもすべて自作した。AIが判断してARで災害を疑似体験できる


小学生ながら防災マップの情報を住民みんなが共同で作ったり、地震などでブロック塀や自販機が倒れてくる恐れをARで疑似体験するという発想には感心した。



AIが縄跳びをアドバイス「うさぎとかめ」

そして3つめは、佐藤翔太さん(小4)の「うさぎとかめ」。
AIが縄跳びの姿勢を機械学習し、実際に縄跳びを行う姿をカメラで撮影して飛んだ回数をカウントしたり、正しい飛び方をアドバイスするアプリ。なんというかロボスタやロボスタ読者にぴったりの作品だ。既に小学生からAIや機械学習は使って当然のものになってきている。


しかも、苦労した点が「AIの学習の邪魔になっているものをみつけるのに苦労しました。AIが学習できない原因が背景でした。スッキリした背景で縄跳びする画像を使うと学習が進みました。AIの学習させるために合計1,000回くらい飛びました」と、まさにAI開発者のタマゴ、ここに誕生といった感じだ。


更には「縄跳びの授業中、先生が多くの生徒を見て回っている様子を見てこのアプリを発想し、先生の大変さを少しでも解消できたら・・というから、佐藤さんは、課題にICTをソリューションとして活用しようという、もはやツボを押さえているようにも感じた。

参加者の皆さん、本当に素晴らしい作品を見せて頂き、ありがとうございました。


【全国小中学生プログラミング大会】
●実行委員長
 稲見昌彦(東京大学教授) /
●審査員
 川田十夢(AR三兄弟)/ 審査員長
 石戸奈々子(NPO法人CANVAS 理事長)
 安達真(株式会社グルコース代表取締役社長)
 千代田まどか(ITエンジニア兼マンガ家)
 岩佐琢磨(株式会社Shiftall代表取締役CEO)
 ※敬称略
●トークイベント(座談会)
 「15才以下のプログラミング ~学校・塾・家庭はどうする?~」
 登壇者 青木俊介(ユカイ工学)
     折原ダビデ竜(N予備校プログラミング講師)
     福岡俊弘(LINEみらい財団)
     野口雅乃(リセマム編集長)
 (敬称略)
●大会公式ページURL
 http://jjpc.jp/
※ロボスタは「第6回 全国小中学生プログラミング大会」のメディアスポンサーです。

ABOUT THE AUTHOR / 

神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

PR

連載・コラム