セイコーエプソンは、独自技術により、さまざまなサイズや機能の工業部品を、汎用的な材料を使いながら精度と強度を高いレベルで生産できる、新しい産業用3Dプリンターを開発した。
開発した産業用3Dプリンターは、2022年3月に開催された「2022国際ロボット展」のエプソンブースで展示されていた。発売時期は未定。
汎用的な材料を使用できることで、最終製品向けの部品生産など3Dプリンターの対象用途を大幅に広げ、多品種生産に対応するマスカスタマイゼーションの推進に貢献していく考えだ。
3Dプリンターは、少量多品種を短納期で生産できる特徴がある。既に多くの企業がさまざまな産業用3Dプリンターの開発や市場投入を進めていて、今後も市場の急拡大が予想されている。プリンタ事業で知られるエプソンがこの分野に進出することで、新たな市場が開拓されることが期待できる。
フラットスクリュによる造形
エプソンによれば「従来の産業用3Dプリンターは、専用の特殊な造形材料を使用する必要があり、また精度と強度を両立させた造形物の生産が困難であったため、最終製品向けの工業部品への活用は限定的だった」とコメントしている。
そこで「今回、エプソンが開発した3Dプリンターは、エプソンの小型射出成形機に搭載されているフラットスクリュによる独自の材料押出方式を採用したことで、一般的に価格が安く入手しやすいペレット材(樹脂・金属)、環境に配慮したバイオマスペレット材、高い耐熱性を実現できるPEEK材など、さまざまな汎用的な材料を使用できることが特長となっている。
さらにヘッド内の圧力制御や造形速度と連動したバルブ調整により、材料の射出量を精密に制御する。さらに、部品の強度を出す際に課題となる造形面の温度制御も独自機構により繊細に管理することで、造形部品の精度と強度の両立を実現した。このように汎用材料で造形物の精度と強度を両立したことで、最終製品向けの工業部品への展開が実現しやすい仕様となり、顧客の個々のニーズにあわせた多品種部品をより高品質・短納期・低コストで生産するマスカスタマイゼーションの推進に貢献できる、としている。
今後、まずは同社内において商業・産業機器などの一部部品の量産に活用しつつ、プリンターの完成度を高め熟成させていく。その後に正式な商品化を目指す、という。