「エモテク」というワードをご存じだろうか。
ロボットやバーチャルアシスタントなどの「エージェント」が、人と心を通わせる技術やノウハウを「エモテク」と呼ぶ。「エージェント」と言うと、AmazonのAlexaや、AppleのSiri、AndroidのGoogleアシスタントやスマートスピーカーなどを連想するが、それに留まらず、コミュニケーションロボット、ゲームやメタバースに登場するバーチャルエージェント、チャットボット、ボットエンジンも含まれる。
もっと言えば、「Qoobo」や「LOVOT」「aibo」など、ノンバーバルなパートナーロボットも含めてエージェントの位置づけや進化、将来を議論するべき、という潮流が生まれている。「エモテク」、人の心を動かすエモーショナルなテクノロジーについて、一度立ち止まって考えてみよう。
既に、エージェントとのインタラクションやコミュニケーションについて研究・開発を進めている企業も次々と登場してきて、「エモテク」に関する情報交換や技術連携といった活動を行う「エモテクJAPAN」に注目だ。
「エモテクJAPAN」とは
「エモテクJAPAN」は、博報堂が”人とエージェントの心を通わせる技術「エモテク」の発展と市場の拡大を目指す業界横断プロジェクトチーム”として発足したもので、2021年11月に関連技術を有する下記の9社が参画してスタートした。
「エモテクJAPAN」はその目的として、コミュニティ&メディア「エモテクひろば」の運営、エージェントおよびエモテクの研究とその共有、エモテク領域の人材の発掘・交流、共同実証実験、を掲げている。
なお、エモテクJAPANでは「HAI(Human-Agent Interaction)」というキーワードも頻繁に活用されている。
株式会社エーアイ
株式会社emotivE
GROOVE X株式会社
コエステ株式会社
株式会社Smash
株式会社博報堂
株式会社フュートレック
ユカイ工学株式会社
LINE株式会社AIカンパニー(LINE CLOVA)
rinna株式会社
「エモテクJAPANサミット」を開催
「エモテクJAPAN」は、3月18日に「エモテクJAPANサミット」を開催した。
「エモテクJAPANサミット」では「エージェント」に関する有識者や研究者などを招いて、下記の6つのセッションが行われ、「エモテク」についての理解を深めたり、エージェント普及における課題やその可能性を議論した。
SESSION 1 エモテクJAPANについて
SESSION 2 HAIの現在地と可能性
SESSION 3 エージェント市場の可能性
SESSION 4 SFにみるエモテクの未来
SESSION 5 ロボット オーナー座談会(プチクーボ/aibo/らぼっと)
SESSION 6 エモテクがメタバースを面白くする
エモテクJAPAN https://emo-tech.jp/
「エモテク」のひとつ国内の対話AIビジネスは順調に伸張しており、2025年に7000億円の市場になるというシードプランニングの予測を紹介した。
一方で、スマートスピーカーやコミュニケーションロボットがそれほど伸びていない実感があることもあげ、AIエージェントが「幻滅期」に入っている状況であるのではないか、とも語った。表はGartnerの出典のもので、有名な「ハイプ・サイクル」(先進テクノロジーのハイプ・サイクル)を表したもの。新しいテクノロジーは、黎明期から過度な期待の時期(盛り上がる時期)を超え、一旦、幻滅期が訪れてから、啓蒙、安定期へと繋がって市場が形成されていく流れとなる。
エージェントの進化には「スマートな創造性」に加えて「エモーショナルな創造性」も必須
「幻滅期」を本当の普及機に入る前夜と捉え、その上で「エージェント」の未来、社会的存在となるためのデザインがどうあるべきかを捉えていくことが必要ではないか、と投げかけた。
会話技術の精度を高めることは求められるのが前提として、「エージェント」は人とのコミュニケーションを行う技術であればこそ、会話の技術的な進歩だけでなく「エモーショナル」な要素も大切であり、人間側がエージェントに対してどう感じるのか、どのような感情を抱くのか、という仮題を乗り越え、進化していくことが重要、という仮設を紹介した。
エモテクJAPAN 公式サイト
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。