NTTデータが海そうのCO2吸収量を算定する実証事業 天草のアマモ場で「ブルーカーボン」ドローン空撮画像で分析

株式会社NTTデータは熊本県上天草市と共同で、海そうの1種であるアマモのCO2吸収量を測定する実証事業を2022年2月~3月に実施した。

近年、海洋生態系が吸収する炭素である「ブルーカーボン」をCO2削減に有効活用できないか、世界的な注目が集まっている。その一方で、ブルーカーボンの定量的な測定は進んでおらず、活用に向けた課題になっており、同実証ではNTTデータがドローンの空撮画像を分析し、NTTデータ経営研究所がアマモのCO2吸収量を定量的に算定・評価。分析の結果、アマモのCO2吸収量とともに実測の重要性が明らかになった。

【ブルーカーボン】
「ブルーカーボン」は海洋生態系の活動によって大気中から吸収・蓄積された炭素だ。森林が吸収・蓄積する「グリーンカーボン」と並んでカーボンニュートラルに向けた貴重なCO2吸収源であり、近年世界的に注目されている。一方でブルーカーボンは検討や定量的データの蓄積が不十分で、現在の温室効果ガスインベントリ(Greenhouse Gas Inventory:一国が一年間に排出・吸収する温室効果ガスの量を取りまとめたデータ)では「任意算定」であり、日本でもブルーカーボンは算定対象になっていない。




同実証事業実地の背景

昨今では国土交通省が中心となってブルーカーボンを温室効果ガスインベントリの算定対象とする検討を進めているほか、横浜市や福岡県といった自治体も独自にブルーカーボン・クレジット制度を実施する取り組みを進めている。そのなかで、海そうの種類や海域の違いを踏まえた精緻なCO2吸収量の把握が困難であることが取り組みの障壁になっているという課題が明らかになってきたため、今回、こうした課題認識を持つ熊本県上天草市とともに、その解決のためアマモのCO2吸収量を測定する実証事業を行った。


▼ 実証事業の概要

目的 ブルーカーボンが温室効果ガスインベントリの算定対象となっていく世界的な潮流の中、その推進に役立てる
内容 アマモのCO2吸収量の文献値と実測値を比較、検証
期間 2022年2月15日〜3月23日
役割 ■ 上天草市:現地調整および実証フィールドの提供
■ NTTデータ:アマモ場の面積算定(ドローンによる空撮)
■ NTTデータ経営研究所:アマモ湿重量測定、アマモのCO2吸収量算定/プロジェクト全体統括管理




実証事業のポイント

アマモの年間CO2吸収量を実測値から算定し、文献値から算定した場合と比較して、結果に差があるか検証。文献値と実測値で、使用するアマモには以下の差があった。


文献と今回の実証事業の算定条件の違い
比較ポイント アマモ採取時期
文献の算定条件 5〜6月頃(繁忙期)
今回の実証事業の条件 2月
比較ポイント アマモ採取場所
文献の算定条件 九州地方以外の全国各地
今回の実証事業の条件 上天草市(九州地方)

実証事業の進め方




実証結果について

アマモの年間CO2吸収量は、文献値を使った場合で41.29 kg-CO2/年、実測値を使った場合で31.75 kg-CO2/年と算定。実測値を使う場合と文献値を使う場合では約20%の差分があり、ブルーカーボンを精緻に把握するためには、土地ごとの特性、算定時期を考慮に入れる必要があることが分かった。

【アマモのCO2吸収量の算定は以下の式】
年間CO2  (kg-CO2/年)
=面積  ×  吸収係数
吸収係数=湿重量×(1-含水率)×炭素含有量×炭素固定係数×44/12)
(44/12:炭素量を二酸化炭素量へ換算する係数)

なお、今回分析に使ったドローンの空撮画像では、波や太陽光反射とった気候条件によって海そうの種別や密度(被度)の特定が困難なケースもあり、水中でのドローン活用なども含めて、複数のモニタリング手法を確立する必要も明らかになった。

実測で使用した値




今後の取り組み

NTTデータは同実証で得られた成果を基に、今後国が推進していくブルーカーボン生態系の活用等によるCO2吸収源対策への取り組み、持続可能なコストでの実用化に寄与するとし、具体的には、海そうの現存量をより精緻に観測するためのデジタルを活用した画像分析による海そう種の判別方法の検討や、アマモ場等の藻場造成活動による環境への影響調査に取り組み、モニタリング手法の確立やブルーカーボン活動の推進の一助となることを目指すと述べている。


【NTT Green Innovation toward 2040】

NTTグループでは2021年9月28日に環境ビジョン「NTT Green Innovation toward 2040」を策定し、2030年度までに温室効果ガス排出量の80%削減、2040年度までにカーボンニュートラルを実現することをめざしている。また、自らのカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを社会へ拡大し、日本政府がめざす2030年に2013年度比で温室効果ガスを46%削減するという目標、および2050年までのカーボンニュートラルの実現に貢献するとのことだ。

新たな環境エネルギービジョン「NTT Green Innovation toward 2040」:
https://group.ntt/jp/newsrelease/2021/09/28/210928a.html
関連サイト
株式会社NTTデータ

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