早稲田大学発スタートアップ「エキュメノポリス」が創業 メタバースを見据えた言語学習支援エージェントには量子技術も導入へ

会話AIエージェントサービスのプラットフォームを開発する株式会社エキュメノポリスが2022年5月2日に創業した。

同社は早稲田大学グリーン・コンピューティング・システム研究機構 知覚情報システム研究所の会話AIメディア研究グループの研究員らが中心となって設立した大学発スタートアップ。デジタル化が進む未来社会「Society 5.0」において、各産業の労働集約的な対面業務を支援・代行するための会話AIエージェントプラットフォームを開発し、人間とAIが協調して各事業者の生産性と品質の向上の実現を目指す。



会話AIエージェントプラットフォーム「LANGX」の主要機能

同社が開発している会話AIエージェントプラットフォーム「LANGX」(ラングエックス)は、ビデオ会議やメタバース環境など、様々な使用シーンでのAIエージェントとの会話体験サービスを実現するために以下のような主要機能を提供する。

・意図推定
音声・言語・顔画像、視線情報等を入力として特徴抽出し任意の抽象度の意図情報を認識する。

・インタラクション制御
ユーザーが発話を継続する意図があるのか発話を終了したのかを判定する機能や、発話の被りが発生した際に解決するような機能など、タイミング制御に関わる一連の機能群を提供する。

・発話動作生成
対話の状態に合わせて、談話的・統語的な情報から各種ジェスチャーの軌跡を生成したり、ユーザーが発話している際に同調的な表情や頷きの生成をするなどの言語・非言語動作を生成する。

・会話能力判定
ユーザの会話能力を判定する。語学学習支援アプリケーションにとどまらず、広くコミュニケーション能力判定に利用されることが期待されている。

・Human-in-the-Loop 機械学習
会話AIエージェントサービスを実現する上での各種のパターン認識(例:意図推定や能力判定)や、対話シナリオのデータ収集を不特定多数のクラウドワーカーにタスクとして依頼して高品質のデータを生産する。

・対話制御
上記サービス群をオーケストレーションする対話制御サービス。ユーザーはそれぞれのビジネスロジックに沿って対話シナリオを自動・半自動に記述し、ビデオ会議やXRのデバイスを通して会話インタラクションを実現することができる。

現在、LANGXによりサポートされる会話のパターンには、インタビューのようにユーザーの情報を適切に引き出せる質問を行うものやミュージアムガイドのようにユーザーの興味に応じて説明を展開するようなものがあり、今後、窓口業務や小売の現場などで人間とAIエージェントが共同意思決定を行えるような、各産業での活用シーンを見据えた多様な会話パターンがサポートされていく予定。また、ユーザーの興味や対話履歴に基づく会話のパーソナライゼーションには量子コンピューティング技術も活用されている。


LANGXを活用した言語学習支援エージェント「InteLLA」

LANGXをフル活用した最初のサービスとして、言語学習支援エージェント「InteLLA」(インテラ)の製品版リリースを2023年に予定し、2022年度中にベータ版による大規模な実証実験が行われる予定。


InteLLAは言語学習者の習熟度や理解度に合わせて会話を調整することで能力を最大限引き出し、言語運用能力を効果的に評価することを目的に開発された。ユーザーはウェブブラウザ上でビデオ会議のように手軽にInteLLAとの会話を始めることができ、人間のインタビュアー同様に自然な発話タイミングの制御や非言語的なやりとり、適応的な対話戦略を通して自然な会話を実現し、学習者の潜在的な会話能力を発揮させることを促す。


言語学習支援エージェント「InteLLA」は革新的な教育の取り組みを表彰する英国の世界最大級の教育コンテスト「QS-Wharton Reimagine Education Award 2021」におけるLearning Assessment Category(能力判定部門)にてBronze賞(銅賞)を受賞した。現在、早稲田大学の英会話授業での導入が予定されているほか、それ以外の主要大学や学習塾、英会話教室での導入が検討されている。


エキュメノポリスの創業チーム

創業チーム

代表取締役の松山氏は早稲田大学 基幹理工学研究科 情報理工学専攻で博士号を取得後、米国カーネギーメロン大学にてダボス会議公式バーチャルアシスタントの研究開発プロジェクトや米Google、Microsoft、Yahoo!などとの各種会話AI産学連携プロジェクトを主導し、帰国後の2019年度に早稲田大学 知覚情報システム研究所に主任研究員(研究院 准教授)として着任した。その他経営陣には国際経験豊かな技術経営コンサルティング出身の最高戦略責任者CSO、AI・ロボット分野の研究開発マネージャー出身の最高執行責任者COOの就任が決定している。

研究開発メンバーには音声対話システム、自然言語処理、機械学習の研究者、VR/AR技術者、応用言語学者、建築家、アーティストを擁し、その約半数以上は博士号取得者で構成されます。国籍も日本、米国、フランス、ポーランド、コロンビアなど多岐に渡り、今後も世界トップクラスの研究者・技術者の積極的な採用を予定している。

なお、早稲田大学の知覚情報システム研究所発スタートアップとしては、人間-AI協調フレームワーク開発を行う株式会社知能フレームワーク研究所も先行して創業されており、エキュメノポリスとシナジーを生み出していく。

社名「エキュメノポリス」について
社名「エキュメノポリス」は、1960年代に夢想された「あらゆる都市がネットワーク化され、ローカル性とグローバル性が両立する理想的な世界都市」という概念「Ecumenopolis」に由来する。冒頭の2文字「EQ -」には今後人間の共同活動者としてのAIが備えるべき「心の知能」が表現され、Equmenopolisは「共存する電脳世界都市」を意味する。新型コロナウイルス感染症の蔓延に端を発して出現した新しい社会の局面を前にして、人間とAIが豊かに共存し価値を創造できる社会モデルを提案していく。



第6回 AI・人工知能EXPO【春】に出展

2022年5月11日~13日には東京ビックサイトで開催予定の「AI・人工知能EXPO」の会場で、エキュメノポリスのブース展示を行う(入場無料)。InteLLAのデモ体験をはじめ、キュメノポリスのビジョンと最新の研究開発の成果の一端を紹介する。

AI・人工知能EXPO「エキュメノポリス」ブース

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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