株式会社NTTドコモと日本電信電話株式会社(NTT)は、第6世代移動通信方式(6G)の2030年頃のサービス提供開始をめざし、国内外の主要ベンダーである富士通株式会社、日本電気株式会社(NEC)、Nokiaの3社と6Gに関する実証実験で協力することに合意したことを、2022年6月6日に発表した。
6Gのサービス提供に向けては、5Gで利用されている周波数帯に加えて、6GHzを超えるミリ波帯やサブテラヘルツ帯などの新たな周波数帯を含めた広帯域にわたる周波数帯を有効活用するための技術やAI技術を活用した無線伝送方法など、多くの移動通信技術を検証する必要がある。
今回合意した3社とは、新周波数帯での無線通信技術やAI技術の活用に焦点を当てて、実証実験を行い、今後、2022年度内には屋内の実証実験を開始し、2023年度以降に屋外の実証実験を開始予定だ。
また、実証実験の結果は、6Gに関する世界の研究団体での活動や国際会議、標準化活動などの中で、ドコモとNTTが提唱する6Gの技術コンセプトの検証結果として報告するとともに、より高度な技術の創出と確立に向けた検討においても活用していく。
6Gについて
6Gは、第5世代移動通信方式(5G)の高速・大容量、低遅延、多数接続の各性能をさらに高めるとともに、高速・大容量や低遅延などの各要求条件を同時に実現する「複数要求条件の同時実現」、100GHzを超えるサブテラヘルツ帯などの「新たな高周波数帯の開拓」、これまでの移動通信方式では十分なエリア化が難しかった「空・海・宇宙などへの通信エリアの拡大」、および「超低消費電力・低コストの通信実現」などに向けて研究開発が進められている次世代の移動通信方式だ。2030年の導入に向けた6Gに関する議論は、5Gと比較して3年ほど早く立ち上がり、すでに世界のさまざまな研究団体や国際会議などで活発化している。
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ドコモとNTTの6G実現に向けた取り組み
6Gの実現はNTTグループがめざすIOWN構想においても重要なプロジェクトの一つとなっており、「5G Evolution & 6G powered by IOWN」と称して6GとIOWNの技術の融合をめざし、密接に連携して6Gの実現に向けた研究開発に取り組んでいる。また、ドコモは2017年頃から世界の研究団体などにおいても主導的に活動をきており、今後も、ドコモとNTTは、今回合意した国内外の主要ベンダーとの実証実験を推進するとともに、幅広い移動通信技術の研究開発に向けて、その他の主要ベンダーとも各社の強みを活かしたさまざまな取り組みを推進する予定とのことだ。
▼NTTとドコモの取り組み
NTT | 研究開発を進める光・無線通信に関わる要素技術 |
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ドコモ | 実用化を見据えた応用研究や開発に活用 |
IOWN構想とは
IOWNとはInnovative Optical and Wireless Networkのことであり、IOWN Global Forumにて推進中の次世代コミュニケーション基盤の構想だ。これまでの情報通信システムを変革し、現状のICT技術の限界を超えた新たな情報通信基盤を実現すべく、2024年の仕様確定、2030年の実現をめざして、研究開発を始めている。
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同実証実験の概要
今回は、次の内容の実証実験を予定している。
同実験で検証する移動通信技術の内容
1. | 5Gで利用されている周波数帯に加えて、6GHzを超えるミリ波帯や100GHzを超えるサブテラヘルツ帯などの新たな周波数帯も含めた広帯域にわたる周波数を有効活用するための移動通信技術。 |
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2. | 複数のサブテラヘルツ帯の多素子アンテナを分散配置し、それぞれの多素子アンテナと端末とが同時に電波を送受信しあうことを可能にする分散MIMO技術((Multi-Input Multi-Output:エリア内に分散して配置した基地局のアンテナと、エリア内の移動局との間でMIMO伝送を行う技術)を用いることにより、直進性が高く障害物による遮蔽に弱い性質を持つ100GHzを超えるサブテラヘルツ帯での高速大容量伝送を実現するための移動通信技術。 |
3. | AI技術を活用して伝搬環境などによる信号波形への影響を学習させておくことで、さまざまな伝搬環境に応じた最適な信号波形を作り出し、通信品質を高めるための移動通信技術。 |
各社との主な共同実験の内容
富士通との実験 | サブテラヘルツ帯の中で大きく周波数の異なる複数の周波数帯を活用した分散MIMO技術について検証実験を行う予定であり、利用する周波数帯としては、100GHz帯および300GHz帯を想定している。 |
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NECとの実験 | 高い周波数帯の活用に向けた分散MIMO技術と空間多重により大容量化を実現するOAM多重伝送技術※3について検証実験を行う予定で、利用する周波数帯としては、分散MIMO技術の検証においてミッドバンドからサブテラヘルツ帯にわたるさまざまな周波数帯を想定している。 |
Nokiaとの実験 | AI技術の活用によりさまざまな伝搬環境に合わせた無線インターフェースやサブテラヘルツ帯の無線伝送技術の検証実験を行う予定だ。利用する周波数帯としては、サブテラヘルツ帯の無線伝送技術の検証においてベースは140GHz帯を想定している。 |
各社のコメント
同共同実験における各社のコメントは以下の通りだ。
株式会社NTTドコモ 常務執行役員 CTO 谷直樹 氏
ドコモは、2014年より富士通と連携して5Gの無線技術検証を進め、その知見をもとに2020年から商用サービスの提供に繋げてきました。今回の富士通との合意により、6Gコンセプトの実現に向けても連携できることを嬉しく思います。ドコモとNTTは、富士通と、6Gで利用が検討されるサブテラヘルツ帯において100GHz帯および300GHz帯の電波を用いた高速無線通信技術の技術検証を開始するとともに、今後様々な業界のパートナーの皆様と6Gの商用化に貢献していきます。
富士通株式会社 執行役員EVP 水野 晋吾 氏
このたび、ドコモおよびNTTと6Gの実現に向けた協力関係を構築できることを大変嬉しく思っています。富士通はネットワークテクノロジーをデジタルイノベーションによるビジネス変革と持続可能な社会の実現に不可欠な技術と位置づけており、6Gの研究開発を通じて社会課題の解決に貢献していきたいと思います。
日本電気株式会社 執行役員常務 河村 厚男 氏
5Gに続いて6G無線技術の開発においても、ドコモおよびNTTと協力を拡大することを嬉しく思います。6Gの世界では、無線技術の飛躍的な進化によりデジタルとリアルの融合が加速し、人間・空間・時間を超えて、あらゆるモノとコトが地球規模で繋がります。6Gはこのような新たな価値を社会に提供する重要な基盤であり、IOWNにもつながっていくと考えています。6Gの早期実現に向けて技術の研究開発を積極的に進め、6Gによる豊かな社会の実現をめざします。
ノキアベル研究所 コア研究部門 プレジデント ピーター・ベッター 氏
ノキアにとって、6Gの実現に向けた主要なテクノロジーをドコモおよびNTTと共同で定義し開発することは大変名誉なことです。ノキアはドコモと、長期にわたって初期段階の共同研究を行ってきており、ドコモは、これまで新世代の通信システムを最初に市場に投入してきました。6Gの実現に向けAIネイティブのエアインターフェースとサブテラヘルツ帯の概念実証を検証するために協業できることを心待ちにしています。
■【動画】5G Evolution &6G powered by IOWN