プリファードロボティクス、家庭用自律移動ロボットを開発中 試作品は社員自宅で試用中、好奇心旺盛な「行司」のようなPMを募集中

Preferred Robotics、家庭用ロボット開発のプロダクトマネージャーを募集中

深層学習技術で知られるスタートアップ・株式会社Preferred Network(プリファードネットワークス、PFN)の子会社、株式会社Preferred Robotics(プリファードロボティクス)が、家庭用ロボット開発の「プロダクトマネージャー」を5月25日から募集している(https://www.pfrobotics.jp/career/Dtw6K-LQ)。

Preferred Roboticsは、PFNが2021年11月に会社分割で設立した会社だ。PFNは2018年のCEATECで披露した「お片付けロボット」で強い印象を与えたように、もともとミッションの一つに「すべての人にロボットを」を掲げて、ロボティクスの様々な研究開発を行なっている。そのなかでPreferred Roboticsは自律移動ロボットの研究、開発、製造、販売を専業として行うことで、ロボット事業の早期立ち上げを狙っている。

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Preferred Roboticsが開発中の家庭用ロボットは「これまで市場に出ているロボットとは全く異なる機能・価値を有しており、世界中の人々に新たなライフスタイルを提供できるポテンシャルを有しています」とされているものの、具体的に何を開発しているのかは公開されていないため、全くわからない。

ただ、ある程度のヒントはある。PFNは2021年3月に鹿島建設と共同開発した建築現場用の清掃ロボットを公開している。その開発コアメンバーはPreferred Roboticsに移籍しているという。そしてPreferred Roboticsは設立した2021年11月に勤怠管理や駐車場システム、清掃事業等を手掛けるアマノ株式会社から20億円を調達している。業務用清掃ロボットの開発が続いていることは容易に想像できる。

Preferred Networks のプレスリリース
建築現場用ロボット向けにAI技術を搭載した自律移動システムを開発
https://www.preferred.jp/ja/news/pr20210304/

そして2022年3月には旭化成ホームズと三井住友銀行から合計6億円の資金調達を実施している。こちらのリリース時には親会社であるPFNと旭化成ホームズが実施していた実証研究を引き継いで「今後、PFRoboticsと旭化成ホームズで家庭向けの自律移動ロボットの共同開発を行う予定」とされていた。また三井住友銀行とは「自律移動ロボットの決済機能や金融サービス提供機能などの共同開発を目指す」、そして三井住友のネットワークを活用して「顧客ニーズに基づく新たなロボットを多様な事業者等と共創」していくとされている。

そして6月2日にリニューアルされた Preferred Roboticsのウェブサイト には、「業務用清掃ロボット」と「家庭用自律移動ロボット」の開発を進めているとされている。家庭用ロボットについては「ソフトウェア・ハードウェア両方のエンジニアが常に協業しながら一気通貫で開発を進めているため、価格優位性も担保した製品開発ができる」という。

彼らが何を開発しているかはまだ公開されていない。だが「プロダクトマネージャー」としてどんな人材を求めているのかについては、 Preferred Robotics CEOの礒部達氏に話を伺うことができた。募集人材については6月中旬現在では、まだ決まっておらず、選考が進んでいる段階だという。以下、一問一答形式でお伝えする。




求めているのは「行司のような人」

Preferred Robotics CEO 礒部達氏

- まず、プロダクトマネージャー募集の件ですが、実は既に決まっていたり、あるいはヘッドハントをかけているのだろうと思っている人も多いかと思います。あるいはまだオープンに募集している段階なのか、その辺りはどうでしょうか?

礒部氏

まだ決まってない状態です。すでに何名かに応募いただいており、書類選考を進めているところです。



- 実際に求めている人はどんな方ですか?

礒部氏

やはり近い分野の方を探していますが、ロボット分野で本当に近い物は少ないと思います。そこで、IoT 機器やハードウェア機器に携わっていて、ゼロイチに近いところで事業やプロダクトの立ち上げに携わった経験のある方を探しています。例えばスマホから操作できる機器やスマートスピーカー等もそういうものに近いと思います。もちろんゼロイチの程度の差は色々あると思いますが、そういったコンシューマー向け製品の経験があることが非常に望ましいと思っています。



- 技術やビジネスも理解していて、ユーザー目線も持ちつつ、プロジェクト全体をコントロールして成功に導ける人ということですね。

礒部氏

そうです。どちらかというと技術を自分で作れるとかではなくて、「行司」のような人ですね。自分で相撲はとれなくてもいいから行司ができることが大事だと思います。他の技術や世の中に出ている技術を幅広く見ながら、数年後どれぐらいのことができるか考えられる人。そういうところをシビアに見ていける人、あるいはそういったことを勉強していける人、といったところがポイントになると思っています。
例えばプロトタイプや実証実験をできるとして、実際にそれを1万台、10万台と作った時にどれぐらいお客さんが納得できるレベルに持っていけるのか、ということを、色んな他の事例から類推するとか、そういったところをエンジニアと議論をしていく過程と能力はすごく大事です。
そういうときに、技術ではなくUXやUIで対応するケースもありますし、幅広い視点、総合的なスキルが必要であると考えています。




技術、UX、ビジネスの3領域に通じ、多変数の同時最適化ができる人を募集中



- なるほど。家庭用のロボットとなるとユーザーインターフェースなども含めて業務用とはまた違う難しさがありますね。募集要項のなかにも「マーケティング部門とも共同で進めていける人」とありました。かなり難しいスキルが要求されているように見えます。

礒部氏

そうですね。プロダクトマネージャーはビジネスも分かってないといけませんし、技術にも詳しい方が良いです。ユーザー目線やデザイン的なところもよく分かっているほうがいい。 3 つの領域が重なった部分について、それぞれ能力を発揮できる人が良いです。
いっぽうで、バックグラウンドは何でもいい。マーケティングでも、エンジニアリングでも、デザイナーでもいい。色々な領域に対して好奇心を持っていて、それぞれの領域に突っ込んでいって仮説を元にちゃんとコミュニケーションできる。そのスキルは高いレベルで必要です。
ただ、要件は軽くしてあります。ロボットやハードウェア開発の経験は外しています。むしろユーザーの要求と現在の我々の持っている技術の接点をちゃんと探していけることが重要です。ユーザー視点だけでもダメだし、技術視点だけでもダメです。そういうところのバランスを上手く取って多変数の同時最適化ができる人、それを粘り強くできる人。そんなイメージです。



- 技術畑でなくてもいいと?

礒部氏

全然構わないです。ただ、世の中でどういうものが実用化できて、できないのか。そこからちゃんと想像してユーザニーズと技術の接点を見つけられる。そういうところは結構大事だと思っています。



- ということはアプリケーションを模索する段階からということですか?

礒部氏

いま、ハードウェアとしてプロトタイプは既に存在しています。当然、コアとなるアプリケーションも想定しています。ただ、それでもかなり色々な変数があります。
例えばプライシングの問題もあります。クラウドに繋がって機能もアップデートしていきます。どういう方針で、そのロードマップを描いていくかも重要です。
あと、ロードマップの各地点でターゲットをどこに置くのか。それによって必要な機能や実装の優先順位も大きく変わってきます。そういったところをエンジニアと一緒に回していける人、といったところがイメージです。



- すると、ある程度、ターゲット・アプリケーションは既に絞り込んではいて、そこへのゴールを目指せる人と。だけど一方、それだけに縛られないような発想も持てる人、ということでしょうか。

礒部氏

はい。




現在の一般家庭でも使えるロボットを開発中



- 開発されているロボットは、御社が公開している情報だと、家庭用の自律移動可能なロボットで、従来のロボットとは全く異なる機能価値を持っているものだと。いわゆるペットロボットやコンパニオンロボットとは違うということでしょうか。

礒部氏

そうです。「人の役に立つもの」というところは外さずに開発しています。具体的なアプリケーションは現時点では申し上げることはできません。



- でも移動するものだと。

礒部氏

そうです。



- 建築には「スケルトン(構造躯体)」と「インフィル(内装や設備)」という考え方があって、そのインフィル部分をセンサー等でスマート化しようという考え方は結構前からありますね。最近だと「スマートホーム」と言われる話ですが、そういうものとは違うということでしょうか? つまり何が伺いたいかというと、現在の家にそのまま導入可能なものなのか、それとも家側にも大幅な改造をしないといけないようなロボットなのか、どうでしょうか?

礒部氏

現在の家にもそのまま導入して使えるものです。今後さらに家のリフォーム等でロボットのパフォーマンスを向上させることは可能でしょうが、様々な可能性を探っていきたいと思っていますし、実際にそういう取り組みを色々やっているところです。




お金持ちしか買えないロボットではない



- どのくらいの家庭で使えるものが想定されているのでしょうか? つまり、かなり特別な、お金がある家にしか入れられないのか、それとも「中の上」くらいなら何とかなるのか、そのあたりは如何でしょうか? 教えていただけることはありますか?

礒部氏

そうですね。なるべく幅広い方々をターゲットにできるように考えています。動くロボットなので、もちろん広いスペースがあるに越したことはありません。ですが特に広さに制限は設けないようにしています。狭ければ狭いなりに、極端な話、ワンルームでもロボットとしてのベネフィットは出るようなものとして開発しています。ただ、ワンルームがど真ん中のターゲットというわけではありません。やっぱり多少ゆとりのある間取りの方が効果は発揮できると思います。



- 様々なことを既にいろいろ検討されたかと思いますが、家庭のなかでロボットが価値を発揮できるタスクを発見することはかなり難しいですよね。つまり、ロボットに限らず機械が一番効果を発揮できるのは連続した作業が発生するようなものだと思いますが、そういうタスクは家庭内にはあまり存在していないように思うんです。

礒部氏

そうですね。そこは「ご期待いただければ」というところです。申し訳ないですがアプリケーションなどの詳細は今のところお話できません。



- はい、なぜこんなことを伺っているかというと、今回御社が募集されている「プロダクトマネージャー」の方が、どういう発想の人を期待されているのかというあたりが、ある程度は浮き彫りになるかと思いまして。焦点をぎゅっと絞って、一気にプロダクトを上市するところまで漕ぎ着けるような方なのか、それとも、今ある家庭の中の課題をオープンな発想で捉え直せるような人なのか…?

礒部氏

どちらかといえば前者です。




2023年には発売を目指して量産計画を進める一方、試作品を自宅で使って日々改良中

試作品は礒部氏の自宅でも「毎日使っている」という

- 家庭用自律移動ロボットは、何年後に発表、発売でしょうか?

礒部氏

2022年内に何らかの発表をして、翌2023年に発売予定です。既に現時点のプロトタイプは何人かの社員の家で試験しています。いま多くのメンバーが家で開発を進めていて、実際に複数のメンバーが自分で使いながら、少しでも性能を上げる努力を続けています。特にユーザー目線、顧客目線で考えて開発していくというところは、すごく頑張っています。



- 礒部さんのご自宅でも使われているのですか?

礒部氏

はい。いま、私の家にもあります。毎日使っています。やっぱり、本当に家で使えるレベルのものでないといけませんので。最初は段ボール・モックアップで試したりするところから始めて、今の仕様に落ちついてきています。



- 2023年中には発売ということであれば、もう量産体制を考えてらっしゃる? 今回募集されているプロダクトマネージャーも、そのあたりの舵取りができる人ということでしょうか?

礒部氏

量産に関してはどちらかと言うと、ハードウェアのチームが面倒を見ていくと思います。プロダクトマネージャーの関わり方としては、生産計画だけでなく、仕様・機能・価格をセットで考えていくような、もうちょっと上位のところに携わっていただく形ですね。



- より、可能性を一緒に考えられるような人でしょうか?

礒部氏

そうですね。確かに量産計画は進んでいます。ですが、この機能の優先順位を下げてもいいんじゃないか、ターゲットはここが考えられるんじゃないかとか、本当にまだまだ自由度は高い状態なんですね。
具体的なお話ができないのでなかなか分かりづらいとは思いますが、本当に初めての製品で、他に似たようなものがありません。その中で、如何にスムーズに立ち上げるかというところに関して色々な工夫ができると思いますし、必要なことを自ら探し出して本当に全部やっていかないといけないんです。我々メンバーも全員そういうメンタリティで仕事しています。そういった必要なことを、壁を作らずに、どんなことでもチャレンジできるようなメンタリティは絶対に必要です。




複数のプロジェクトを同時に進めることで強みを出す



- いまPFRoboticsさんの社員数は何人ですか?ホームページに掲載されている方は17人ですが…

礒部氏

パートタイムの方その他もいらっしゃいますので、17人以上だと思ってください。



- 錚々たるメンバーですよね。そこに加えて、新たにプロダクトマネージャーそのほかの方を雇うと。

礒部氏

社内ではBtoB、BtoCの様々なプロジェクトが存在しています。プロダクトマネージャーは現状、私がやっているポジションではあるのですが、そこに、よりフルコミットできる人材を探しています。



- プロジェクト数をもっと絞ってしまうわけにはいかないんですか? Preferred Roboticsを立ち上げられた理由の一つが、高速にロボット製品を市場に出すことだったと思うので、いっそのこと特定のプロジェクトにフォーカスしてしまい製品まで完成させて市場に出し、そこでしっかりお金を取るという戦略もあるかなと思うのですが如何でしょうか?

礒部氏

もちろん 1 つのアプリケーションに絞るという考え方もあると思うんですけど、これはパソコンなんかと同じで、BtoB、BtoCの両方をやることで確実に強みも出ると思っています。複数のプロジェクトをなるべく共通化したソフトウェア、ハードウェアで対応していくというのが基本戦略です。



- 開発環境は?

礒部氏

ROSベースです。独自に作っている部分もありますし、既存のアセットも活用しています。コアとなる部分は自律移動です。同じ要素技術やソフトウェア、センサーなどは共通している部分がありますので、会社として強みが持てるようにと考えています。ただしユースケースは全く別です。
共通した要素技術で様々なプロジェクトがカバーできるようにということは、かなり気をつけてやっています。程度問題ではありますが、コンポーネントを流用することで、少ない人数でも複数のプロジェクトにリーチできるというところは重視しています。



- プロダクトマネージャー以外も募集されてますね。

礒部氏

はい。ソフトウェア、電気系の設計者も募集しています。ロボット開発においては、SLAMに強いエンジニアやクラウド系に強い方を常に募集しています。エンジニアについては家庭用限定とか、そういったかたちではありません。



- スキルはもちろんですが、キャラクターとしてこんな人がいいとか、そういった点は何かありますか?

礒部氏

明確な基準については、言語化は難しいですが、やっぱり好奇心旺盛で、顧客視点を持てることは大事だと思います。開発における自由度も広い中で判断をする時に、最終的にお客さんのベネフィットや嬉しさをベースに物事を判断することが非常に大事になると思っています。




ロボットでないとできない仕事を行うもの



- 抽象的な質問になりますが、このプロダクトで、どんな幸せを家庭なり社会なりにもたらしたいですか?

礒部氏

やっぱり毎日の暮らしを本当に便利にしたい、というシンプルなところかなと思いますね。何て言うんでしょう、私自身がものすごく、ものぐさなタイプなので、なるべく雑務はしたくないんです。自分が大学のときに初めて「ロボットをやろう」と思った原点でもありますが、少しでも自分がやりたいことや面白いことに集中できるようにしたい。これがベースにあります。



- この募集を最初に見た時、率直にいうと違和感もありました。ロボットというのは基本的には手段ですよね。「家庭用ロボット」というと、手段が目的化してしまっているのではないかと。

礒部氏

今回、ロボットに限定しているのは、既にある程度プロトタイピングが進んでいることと、我々にも仮説があり、そこにロボットを使っているからです。少しでも今の技術で暮らしが便利にできるのであれば、別にロボットという形を取らなくても良いのではないか、と個人的には思っています。



- 実際に見ると、「あー、これならロボットしかないね」と納得できるものでしょうか。

礒部氏

当然、「ロボットではなくてもできること」をロボットでやるとなると、コストが高くなりますので、「ロボットじゃないとできないこと」がメインのソリューションです。もちろん他にも様々な機能をつけることはできるので、「それはロボットじゃなくてもできるよね」ということはあるかもしれないですが、主な機能は「ロボットでこそできる」ところに設定しています。



- なるほど。ともかく、何かしらベネフィットがあるものだと。

礒部氏

もちろんです。「役に立つ」というところにフォーカスして、そこはしっかり外さずに考えています。できる限り完成度は高めたいと思っています。



- コンシューマー向けだとマニュアルも重要ですね。もうその辺りも、ある程度形になっているんでしょうか?

礒部氏

今はまだです。そうですね、お客様向けマニュアルのようなものは、まだない状態です。工場で立ち上げるとか、特定のベータテスト用、先行したお客様向けの本当にシンプルなものしかないような状態です。



- わかりました。無事に発売されることを一ロボットファンとしても期待しています。お忙しいところ、どうもありがとうございました。


関連サイト
Preferred Robotics

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森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

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