NECがカゴメと連携し、本格的にAIを活用したスマート農業に乗り出す。
カゴメ株式会社と日本電気株式会社(NEC)は、AIを活用して”加工用トマト”の営農支援を行う合弁会社「DXAS Agricultural Technology(ディクサス アグリカルチュラル テクノロジー)」をポルトガルで設立することを発表した。DXASは、デジタルトランスフォーメーションの「DX」、アグリカルチャーの「A」、サステナブルの「S」を繋げたもの。発表に伴い、報道関係者向けの発表会をオンラインで開催した。
カゴメとNECは2015年より、IoTとAIを活用した営農アドバイスの技術開発や事業検証に着手し、ポルトガルやスペインなどで実証実験を行なってきた。その結果、センシングやAIによるスマート農業サービス「CropScope(クロップスコープ)」の成果が得られるようになってきたので、新会社の設立とともにこのサービスを本格普及することになった。
新会社はポルトガルで本年7月に設立予定。カゴメのアグロノミーと NECのテクノロジーの融合によって農業革新を起こし、環境に優しく収益性の高い営農を促進することを目指す。
所在地 ポルトガル、リスボン
会社名 DXAS Agricultural Technology
(ディクサス アグリカルチュラル テクノロジー)
事業開始時期 2022年7月(予定)
代表者CEO 中田 健吾氏(現 カゴメ スマートアグリ事業部長)
事業内容 AI を活用した営農アドバイスサービス・圃場可視化サービスの販売、マーケティング、プロモーション、顧客開拓、サービス企画
資本金(株主比率) 3億円相当ユーロ (カゴメ:66.6%、NEC:33.4%)
農業でデジタルツインのシミュレーションを実現
加工用トマトの生産は新興国を中心とした人口増加や経済成長に伴い、今後も拡大が見込まれる。一方で、持続可能なトマト栽培には、生産者減少への対応や環境負荷低減など様々な課題に取り組む必要がある。
カゴメとNECは2015年より、IoTとAIを活用した営農アドバイスの技術開発や事業検証に着手し、ポルトガル、スペイン、オーストラリア、アメリカで実証試験を重ね、現在では7か国で事業展開をしている。2020年4月には、両社は戦略的パートナーシップ契約を締結し、カゴメ内に新設されたトップ直轄組織「スマートアグリ事業部」を中心に、NECの農業ICTプラットフォーム「CropScope」の精度向上をつとめてきた。
「CropScope」の特徴
「CropScope」の特徴は、センシング技術で畑の状態を見える化することに加えて、その現状を診断して改善する営農アドバイスを、NECが培ってきた天気予報やAI解析を用いて提供していくところにある。収穫を増やすだけでなく、水や肥料を節約した効果的な育成を行うことができるという。NECの執行役員常務 兼 CFOの藤川修氏は「世界中で消費される水の約7割は農業用水。このソリューションはその水を大きく節減できる可能性を持つ技術」と語った(環境保全とサステナブル)。
新会社の意義
そして、営農支援事業における技術開発のさらなる加速や営業活動の強化を目的に新会社による事業を開始することとした。カゴメのトマト営農に関する知見と、NECのAIを用いた分析・予測技術を一層融合させ、主に欧州、米州、オーストラリアの加工用トマト市場における営農支援を加速していく考えだ。そして、将来的にはその知見を日本での事業展開にも活かして行きたいと語った。
■ NEC「CropScope」pronat社取り組み紹介【日本語字幕】
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。