【速報】ファミリーマートが300店舗でAIロボット導入へ テレイグジスタンスが開発、2種類の「NVIDIA Jetson」を搭載 陳列作業を効率化

スタートアップ企業のテレイグジスタンス株式会社(Telexistence)が、国内のファミリーマート300店舗で、AIロボット「TX SCARA」を導入することを発表した。ロボットには「NVIDIA AI」が実装されている。飲料陳列棚の補充業務をロボットが担うことで、これまでバックヤード作業に多くの時間を費やしていた店舗スタッフが、顧客対応など付加価値の高い業務に集中できるようにする。


今後、テレイグジスタンスは他のコンビニチェーンや米国のコンビニチェーンへの導入も視野に入れて事業展開する。


Telexistence のロボットをファミリーマートに300店舗に導入

日本には約5万6,000店のコンビニエンス ストアがある。これは人口1人当たりの店舗数では世界第3位の密度。ファミリーマートはこのうちのおよそ1万6,000店を運営している。
今月より、ファミリーマートの300店舗で、Telexistence社が開発したAIロボット「TX SCARA」の展開を予定しており、さらに今後数年以内に、その他のファミリーマートの店舗や別の 2つの大手コンビニエンス ストア チェーンにこのロボットをを導入することを目指す。米国のコンビニエンスストアへの進出も計画している。

■【Telexistence】人工知能ロボット「TX SCARA」をファミリーマート300店舗導入開始


店舗スタッフを顧客への対応など、時間を有効に割り当て

Telexistenceの導入は、飲料陳列棚の補充といった反復作業をロボットに任せることで、店舗スタッフが顧客への対応など、より付加価値の高い業務に多くの時間を割けるようにする業務改革が狙いだ。

Telexistence の代表取締役CEOである富岡仁氏は、次のようにコメントしている。
「当社は、人々の日々の暮らしをサポートしている業界にロボットを展開させたいと思っています。それを行うために最初に着目したのがコンビニエンス ストアです。日々の暮らしを支えている巨大なネットワークであるにも関わらず、日本では労働力不足に悩まされています」


スタッフは店のバックヤードで多くの時間を費やし、店舗での顧客対応よりも棚の補充作業に追われているのが現状。この状況を「ロボティクス アズ サービス (Robotics-as-a-Service) によって、スタッフはより多くの時間を顧客対応にあたれるように改革していくのが富岡氏の考えだ。
米国のコンビニエンスストアへの進出も計画している。2017年に設立された同社の次の計画は、米国のコンビニエンスストア市場への進出。米国には全国に15万店舗あるコンビニエンスストアがあり、消費者の半分以上が少なくとも月に1度は訪れているとされている。


「TX SCARA」には2種類のJetsonを搭載

「TX SCARA」はエッジでのAI処理と、動画ストリーミングデータの伝送処理に「NVIDIA Jetson」を2種搭載している。また、「TX SCARA」に実装されている複数のAIモデルのトレーニングには「NVIDIA DGX Station」を活用し、98%の精度を実現している。

TX SCARAのAIシステム は、ロボットに搭載されている複数のカメラでスキャンされた飲料陳列棚データから、品薄になっている各飲料の検知と陳列のための最適なパスプランを生成することで、ロボットに陳列を指示する。この AIシステムは98%を越える精度で飲料を自動的に補充することができるという。

環境の変化などにより、まれにロボットによる陳列エラーが起きてしまった場合(例:陳列位置を間違える、飲料が倒れる等)も、店舗スタッフがそれまでの作業を中断して、ロボットを再起動させる必要はない。そのような場合、ロボットはTelexistence(遠隔操作)モードに切り替わり、リモート オペレーターによる、VR システムを通じた遠隔制御で迅速な復旧が可能となっている。このVRシステムでは、NVIDIA GPU を活用した動画のストリーミングが行われる。

Telexistence の調査によると、1日の販売量が多いコンビニエンス ストアでは1日に 1,000本以上の飲み物を補充する必要があるが、手動のオペレーターによる介入が必要とされるのは、そのうち20回未満という計算になるという。

TX SCARA のクラウド システムでは、商品名、日付、時間、ならびにロボットが作動中に陳列された商品の数をもとにした、販売のデータベースを保持している。これにより、ロボットは過去の時間帯別の売れ行きデータを加味した陳列の優先順を判断することができる。


「TX SCARA」に搭載されている複数のAIモデル

「TX SCARA」には複数の AIモデルが搭載されている。物体検出モデルは店舗内の飲料のタイプを識別し、どの商品がどの棚にあるのかを判断する。これと、ロボットのアームの動きを検知するためのモデルの組み合わせにより、ロボットは飲料を把持し、棚の上の別の商品のあいだに正確に陳列することができる。

3つめのモデルは異常検出で、これにより、棚で倒れている飲料、あるいは落下した飲料を認識する。最後の1つは、それぞれの陳列エリアで品薄の飲料を検知するモデルとなっている。

NVIDIAが公開している情報によれば、Telexistence の製品開発チームは、カスタムメイドのトレーニング済みニューラルネットワークをベースモデルとして使用。それに合成データとアノテーションされた現実世界データの組み合わせを追加することで、TX SCARAに最適なニューラル ネットワークとなるよう微調整したという。
シミュレーション環境で 8万以上の合成画像を作ることでデータセットを補強することができ、それによって、ロボットはあらゆる照明環境で、異なる質感と色の飲料商品を検知できるようになった。

AIモデルのトレーニングでは、チームは「NVIDIA DGX Station」を活用。ロボット自体には、エッジでの AI処理を行う「NVIDIA Jetson AGX Xavier」と、動画ストリーミングデータを伝送するための「NVIDIA Jetson TX2」モジュールという、2つの NVIDIA Jetson 組み込みモジュールが使われている。
ソフトウェア面では、チームは、エッジ AI 向けの「NVIDIA JetPack SDK」と高性能な推論用の「NVIDIA TensorRT SDK」を使用している。
また、Telexistence は、単精度の代わりに、半精度 (FP16) の浮動小数点フォーマット (FP32) を使って、AIモデルをさらに最適化しているという。

「TensorRT がなければ、当社のモデルは飲料商品を効率的に検知するのに十分なスピードで動かなかったでしょう」と Telexistence のチーフ ロボティクス オートメーション オフィサーのパベル サフキン (Pavel Savkin) 氏は語っている。




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関連サイト
NVIDIA GTC 公式サイト

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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