動く対象物をセンシングして把持部を自動追従「近接覚センサー」、協働ロボット用ハンドに搭載「考える手」 大阪大発スタートアップ Thinker

大阪大学基礎工学研究科システム創成専攻の小山佳祐助教は、「近接覚センサー」を開発、それを活用したソリューション提案や開発支援、プロダクト開発・販売などを行う株式会社Thinker(シンカー)を大阪で設立した。

Thinkerの近接覚センサーは、対象物との距離と傾きを同時に計測することができる技術。これを用いることで、瞬時にモノの大きさや形状を把握できるだけでなく、ビジュアル情報としては捉えづらい死角部分や透明物質、鏡面を計測、「ロボティクスの最後の砦」とされてきた「ロボットマニピュレーションに革新的な進歩をもたらすことが可能」としている。そのセンシングの様子は動画で公開している。

鏡面や透明なものも検知して自動追従できる (下記の動画より)


Thinkerは、まずはロボットハンドへの近接覚センサーの搭載を提案。独自のAI技術との組み合わせにより、バラ積みされていたり、形が不揃いだったりするモノを、みずから感知して、考えて、ピックアップできる協働ロボットとすることで、現場への導入・普及に取り組む考えだ。

■動く対象物をセンシングすることで把持部が追従する動画


近接覚センサーの概要

「近接覚」は、視覚とも触覚とも異なるモノの認知方法で、見たり、触ったりせずに認知することから「人間にはない感覚」とされている。Thinkerの近接覚センサーは、大阪大学基礎工学研究科システム創成専攻小山佳祐助教の技術シーズを基にしている。
対象物との距離と傾きを同時に計測可能。独自の高速・高精度AI技術と組み合わせることで、従来の産業用ロボットでは難しいとされていた現場に応じた臨機応変なピックアップやティーチング負担の軽減を可能にするという。



経営陣プロフィール

代表取締役 藤本弘道氏(ふじもとひろみち)
1970年、大阪生まれ、奈良育ち。大阪大学大学院工学研究科原子力工学科修了。松下電器産業(現在のパナソニック)に入社後、社内ベンチャー制度を利用して株式会社ATOUNを創業。19年にわたってアシストスーツの開発および販売にたずさわったのち、 2022年5月に株式会社 SHIN-JIGEN を創業。 同年8月、大阪大学基礎工学研究科の小山佳祐助教らと株式会社Thinkerを設立。ロボティクスの力を用いてより広い領域で人びとを助け、可能性をひらくべく、さまざまな事業に取り組んでいる。奈良女子大学客員教授、大阪工業大学客員教授。
Twitter:https://twitter.com/fujimo777


取締役 小山佳祐氏(こやまけいすけ)
1989年、和歌山生まれ、和歌山育ち。和歌山工業高等専門学校機械工学科を卒業後に、電気通信大学電気通信学部知能機械工学科に編入学。同大学院情報理工学研究科知能機械工学専攻の修士課程修了、同専攻にて博士(工学)を取得。2017年から2019年の間、東京大学大学院情報理工学系研究科特任助教。2019年10月から大阪大学大学院基礎工学研究科助教、現在に至る。自身の学術研究の更なる“深化”と、現場のロボットの“進化”の両立を実現するために、株式会社Thinkerを藤本氏らと共同で設立。研究分野は、センサ、アクチュエータ、ロボットハンドなどのハードウェア開発から、高速ロボット制御、機械学習、パラメータ最適化など多岐に渡る。

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