電力会社では、送電鉄塔の塗装工事の際には、工具や塗料などの資機材を小型トラック等により運搬しているが、送電鉄塔の7割程度が山間部に立地していて、山間部の現場は車両の通行が難しいため、ほとんどのケースは、作業員自らが山道を複数回往復し資機材を運搬することになる。
送電鉄塔塗装工事で使用する塗料物量が年間で約100,000kgにもなる中電工業株式会社では、過酷な山間部の送電鉄塔工事での労働環境改善・安全性の向上に向けて、「空飛ぶクルマ」および「物流ドローン」を開発する株式会社SkyDriveと共に、中国電力ネットワーク株式会社が保有する送電鉄塔の塗装工事において、1.6トン(送電鉄塔3基分)の塗料をドローンで運搬する実証実験を実施。
同実験を経て、物流ドローン『SkyLift』の導入が開始された事を2022年8月30日に発表した。
■【動画】【SkyDrive】物流ドローン”SkyLift”|中電工業株式会社の送電鉄塔工事で1.6トンの塗料運搬 過酷な工事現場、ドローン導入で労働環境改善・担い手確保へ
『SkyLift』選定の理由
中電工業では、物流ドローン『SkyLift』を山地の送電設備メンテナンス工事に活用することで、作業員が重い荷物を背負って、道なき道を昇り降りするという過酷な労働環境の改善や、厳しい環境下での安全確保、運搬人工の削減などの効率化を実現できると考え、この度の導入に至ったが、中電工業の石井社長と工事本部(塗装)花田氏は、具体的な選定理由として以下の5つを述べている。
1. | 最大30kgの資機材を運搬可能である |
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2. | オリジナルのカーゴバッグは航空局から塗料やガソリン等の危険物輸送の飛行許可を取得している |
3. | 導入後に機体の不具合や故障といった問題が発生するリスクを想定されるが、サブスクリプションモデルのため、故障の際は機体の交換や最新型への変更が容易である |
4. | カスタマーサクセスの体制が万全である |
5. | フェールセーフ(製品やシステムに故障やエラーが発生しても常に安全に制御する仕組みにしておくこと)のもと開発が行われ、安全性にも十分配慮されている設計である |
実証実験の実施内容
これまで、現場で物流ドローン『SkyLift』を導入するべく、両社で飛行試験を重ねており、今回、下記の通り飛行試験を実施した。
日程 | 2022年7月26日(火)~8月10日(水)のうち5日間 |
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場所 | 中電工業の送電鉄塔塗装工事現場 |
運搬物 | 送電鉄塔塗装工事で使用する塗料(一斗缶) |
総フライト数 | 総フライト数:102フライト/総運搬重量:約1,600kg/日数:5日間 |
備考 | フライト数や運搬重量は、天候や飛行条件・環境によって変動する。 |
これまでの取組み
物流ドローン『SkyLift』の実用化を目指し、中電工業とSkyDriveで電磁波の影響試験・実証実験等を重ねている。(実証実験:4回実施/中国電力株式会社南原研修所1回、高梁有漢線2回、新広島幹線1回)
今後について
今後、中電工業は自社運搬を目指し、SkyDriveと協議の上、自社運搬に向けた課題(安全性、作業性、操作性、経済性、オペレーターの適性判断)の整理と解決、物流ドローンを操縦できるオペレーターの育成を図っていくと述べている。なお、両社が今後の課題解決のために、具体的に以下の内容に行う予定だ。
SkyDrive | • 中電工業の自社内のオペレーター育成のため、2022年10月を目途に難易度を上げた教育プログラムを実施予定。2022年12月を目途に当社の取り決めた必要スキルを習得し、2023年度に自社運搬を本格運用 • 1日あたりの運搬物量の向上 • 使用頻度の向上(可能な限り導入できるようにするための体制を構築) • トータルコストの低減(費用対効果を高める) |
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中電工業 | • 中電工業が塗装工事を施工している全国の電力会社向けに展開 • 将来的には他社送電工事に関係する運搬も担う • 火力、水力発電所および電力関係以外のインフラ塗装工事においても活用 • 自社の業務効率化だけでなく、この技術を生かした地域社会への貢献という視点で取り組みを展開 |
物流ドローン『SkyLift』について
物流ドローン『SkyLift』は、1回の飛行で30kgの重量物の運搬が可能で、30kgの荷物を運搬すると9分程度、往復1km程度の飛行が可能。また、着陸せずにどこでも荷下ろしできるホイスト機能があるため、山間部等の地形的に自動車やクレーン、ヘリコプターの活用が難しい場所や、災害時で道路が使用できない場合等、高低差運搬を中心とした場所やシーンで活用いただけるのが大きな特徴だ。
また、『SkyLift』のサイズは全⾧1.9m×全幅1.2m×全高1.0mとコンパクトのため、利用希望の場所までワンボックスカーで簡単に運搬が可能だ。操作に関しても、タッチパネルのシンプルな操作で行先を設定するだけで、自動運転で重量物を運搬できる。尚、国内ドローンメーカーとして、日本で初めて、航空・宇宙及び防衛分野の品質マネジメントシステム「JIS Q 9100:2016」認証を取得しており、安全で品質の高い機体を開発する環境で開発を行っている。また、オリジナルのカーゴバッグと組み合わせることにより、航空局から塗料やガソリン等の危険物輸送の飛行許可をもらった実績もある。
■【動画】【SkyDrive】物流ドローン”SkyLift”|ホイスト機能
■【動画】【SkyDrive】物流ドローン”SkyLift”|フライトプランの設定
■【動画】【SkyDrive】物流ドローン”SkyLift”|カーゴバッグ単体性能試験